第37話 初恋リミットブレイク
「カウンターズの中で、特に
ということで私は戦力外通告になった。カウンターズに関しては、カレンが担当することになった。ほのかと私は、バックアップとして待っていてほしいと言われたが、特にやることはなかった。自然と足がまた姉の道場へ向かう。
今日は1日様々なことが起こりすぎだ。私もキャパオーバー。頭がパンクしそうだ。
「おーいさきちゃん、さきちゃんってば」
魔法生物が見えなくなったり、お姉ちゃんの知り合いが出てきたり、ほのかが処刑されるかもしれないと言うことだったり、何が何やらわからない。
「さきちゃんってば、女の子がこんな時間に不用心じゃないか」
顔上げるとそこには蝶野さんがいた。
姉と同じデザインのライダースーツに身を包み、ニカっと笑う。
「何かお悩みかいっ」
耳元で勾玉のイヤリングが揺れる。自然と涙がこぼれてしまった。蝶野さんに姉の面影を重ねてしまい、その場で泣き崩れてしまった
蝶野さんは何も言わずただ頭を撫でてくれた。出会って間もない人だけれども、他人と思えずただただ涙が後から後から流れていた。姉と私は昔から仲が良かったわけではない。神社の跡取りとして見られているのは姉だった。私はあくまで姉の予備でしかなかった。何をやらせてもうまくやる姉に対して、私はすこし運動ができるだけの凡人だった。そんな姉を疎ましく思っていた。あんな姉がいて、こんな私。比較してくる目がただただ重荷だった。1年前姉の力が暴走して、図らずも私と力を半分にした。それは傍目に、自分が姉の力を奪ってしまったと言う感情から、自分が姉よりも優れていると錯覚するようになった。でもそんな自分を自己嫌悪するくらい毎日を過ごしていた。魔法を使うにつれて、別の何者かになっていくような不思議な感覚に襲われるようになった。気がつけば、いつの間にか自分の知らない間に古代魔法少女に体を乗っ取られるようになってしまった。不安や恐怖を感じる一方で古代の優秀な魔法使いたちが自分の体の中にうごめく感覚に酔いしれてしまった。気づいたときには、姉は消え、破壊された街の中に自分ではない者の笑みを浮かべて、立っていた。ボロボロになったほのかたちを嘲笑い、弄び、圧倒的優位の立場から優越に浸っていた。
そんな私の目を覚ましてくれたのが姉の残した魔法だった。
魔法はその人の人なりだ。
魔法少女が使う魔法には、必ず意味がある。性質だったり、渇望だったり、さまざまだが、必ず意味があるのだ。
私の
姉の「水」の力は、ころころと表情を変え、全身で感情を表し、その才能のように、ありとあらゆるものになりうるという姉の存在そのものだと思っていた。
しかし姉は言うのだ。水は水でしかないんだよ。例え、魚が棲めないくらいの清さがあろうと、様々なものが蠢く汚水であろうと、水は水なのさ。私は私でしかない。だからーーーー
目を覚ませ
「ん?どうしたんだい」
蝶野さんが言った。蝶野さんと会うようになって、気づいたら、数日が経っていた。学校終わりに姉の道場の前で。何を話していたか、覚えていないが、とても心地よい時間だったと思う。
「ごめんなさい、今日は帰ります」
「ん、そっか、また明日」
特に引き止められることはなかったが、蝶野さんがいつまでも見つめているような奇妙な感覚が家に着くまで続いた。
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