第36話 指折り数えて カウンターズカウンター
とある地下バーに来客が訪れる。薄暗いその店内にはカウンターのみが設置され、椅子には金の刺繍でローマ数字が書かれていた。椅子の数は10脚。バーテンダーの女性は静かに来客に会釈する。
入口から現れたのは
「まったく酷い目にあった…」
「おかえりなさいませNo.4」
「ほのかはいきなり魔法ぶっ放してきたサイコ野郎だったよ。流石に焦ったけどね。記憶で探ってきたけど、頭ん中ファイヤーウォールでプロテクトかけてたから、大丈夫さ・・・げっ」
「ガッハッハッ!久々だな。破魔町設立以来か?」
「ちょっとちょっと!なんでこいつがここにいるのさ!」
赤髪の魔女に指をさしながら訴える。
「…彼女も指折り《カウンターズ》でしたので」
「いやいやいや!だってこの人、指名手配犯じゃん!3番だって新しく決めたじゃん!」
「ガッハッハッ!カウンターズ5番以上は完全に実力主義だろ?三番以外いなかったから、のしたよ」
親指で店の隅を指す。ズタボロになった魔女が目を回していた。
「ちっ!」
乱暴に椅子に座り、バーテンダーの出したカクテルを一気に煽る。
「その見た目でアルコールは飲むなよ」
「お互い様だろうが」
ちらりとカウンターを見ると3番のテーブルには沢山のジョッキが並んでいた。
「まったくジジイとババアがうるさいにゃ」
「ちょ!」
6番の席には青年、7番の席には猫耳をつけた少女が座っていた。
「んだと?お前も化け猫だろうが。ガッハッハッ!おう…新入り。こないだぶりだな。代替わりか」
「まぁ、親方が強引に…。あなたがあの三千代さんだなんて」
「1番と2番はいないのか?」
「お二方とも任務です」
金髪のバーテンダーが静かに答える。
「…じゃあ。今この場で1番席次が若いのはあたしだな…さぁ盛大に飲み明かそうか」
ニヤリと笑う
「で、なんで、お前らが破魔町にいるんだ?」
さんざんと飲み散らかした後にさちよが、七禍に尋ねた。
「ぼくらよっへまへんよ」
「Zzz…」
まともに喋れるのは七禍だけだったからである。
「にゃっはっは。口を割るわけないにゃ」
ちらりとバーテンダーを見る。
「お嬢ちゃん、仕事の話をする。下がってくれないか」
「…」
彼女はぺこりと頭を下げて部屋を出ていった。それをたしかめると、懐から小瓶を取り出した。
「…上等なマタタビ酒だ。」
「…にゃにを言って」
「…まわりは酔いつぶれ、素面はいない。盗聴の類はない」
「…にゃにゃ!」
「…マタタビ酒は繊細で、時間がかかる上利益にならない、造り手はすくない。…さらにこのマタタビ酒は御神木の根の付近で生えていたマタタビだ…」
「……」
「今の指名手配中の私では再度作ることは出来ないだろうな~」
小瓶を揺らす。七禍の喉がなる。小声で答える。
「…何が知りたいにゃ?」
「…ガッハッハッ…そうこなくっちゃ」
「…2つ教えてくれ。魔法国の英雄様たちがなぜ破魔町に集結してるんだ?わたしの杖は誰が持ってるんだ?」
「…さちよさんのせいにゃ」
「…あたしの?」
「そうにゃ。さちよさんがこの前あばれた時に賞金が更新されたにゃ。賞金目当ての荒くれ共を狩るために、カウンターズの人数制限が解除されたにゃ」
「…女王の意思か」
「…しらないにゃ」
「ふ~ん…」
「言えない、か」
「…にゃ」
「わたしの杖を持ってるカウンターズは誰だ?」
「…それは」
「私だ」
声の出元はバーテンダーのお盆の上にあったスマートフォンだった。
「
「久しぶりだな、さちよ」
「相変わらず女のシリを追っかけてるのか」
「そういう貴様もまだ独り身だろ」
空気がピリつく
「…。ふぅ、で、」
「少し借りてる」
「少しねぇ?10数年を少しというのかねぇ」
「大いなる計画のためだ。すぐに分かる」
「大いなる計画?。ガッハッハ私も悪の組織作ったときわかったけどそういうの流行らないぜ」
「所詮貴様のは、魔法少女制度を維持するための口訳に過ぎないお遊びだろう?」
「はん。だが、ほのかたちによってその計画もパーだ。意外にやるぜあいつら」
「伝統を破った貴様責任を取らせようとも思ったが、お前の出現で、ずいぶん仕事がやりやすくなった。」
「どういうことにゃ。一さん」
「破魔町は魔法国と日本との共同で設立された町だ。どちらの勢力も均衡を保つようにしてある。だから魔法騎士団なんていう中途半端な組織や日本国出身で魔力のある少女がなる魔法少女なんてもんがあった。だが、そこの女が暴れ回ったおかげで、あちらさんの警察が武装強化。それを女王は察知して
「ガッハッハ全員とは、大奮発だな。女王はまだこっちの世界を狙っているのか?」
「さてな。重要なのはこっちに転移してしまった御神木のほうさ。国土拡大はそのついでだろうよ」
「ほのかたちが黙っていないだろうさ」
「ずいぶん高く買っているようだな。最強の魔法少女」
「よせよせ。私が最強だったのは数十年前の話だぜ。なぁ最強の魔道士様よ。私にそんなことをペラペラ喋っていいのか」
「構わないさ。お前はな」
バーテンダーの少女がスマートフォンを持ち元4番の魔女の方に向ける。反対の手で杖を抜きスマートフォンから呪文が聞こえる。
「魔法を司る少女を生贄に我の力を高めよ」
少女は声に合わせて杖をふるい魔女に杖を向け、そしてスマートフォンに杖を向ける。
「
スマートフォンからオーラが漏れ出し、巨大な口を形作る。凶悪な禍々しい気を放ち、ぽっかりとあけられた空間は、底知れない混沌を思わせた。
「んっ〜〜〜〜!!!!」
鎖で縛られた魔女は、身動きが取れず、ずるんと、そのまま喰われてしまった。もぐもぐと口を動かす。
「・・・所詮混ざり物か。若くはあったが、まだ青すぎた、酸味があるが、雑味でしかない。やはり、あの娘でないとな。・・・さちよ、今日はゆっくりしていけ」
さて始めようか。スマートフォンは黒い蝶に姿を変え飛び去っていった。
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