第19話 ラックの記憶と宮内ほのかっきゅ!登場したいっきゅ
あ、私、この色知ってる…。
彼の瞳を見た際に既視感を覚えた。
うすぼんやりとする意識の中で、彼の高笑いする声がする。
「はーはっはっは!僕にかかれば魔法少女も手の内さ!あんたは恩人だが、邪魔になりそうだ。どうやら、この娘を手に入れれば、色んな魔法を使えるようだね。」
違う。あなたは、本当は優しい人。誰がこんなことを。
自分の意思とは関係なく、手が動く。
「さぁ、魔法少女!あの人を蹴散らせ」
「…
本来なら、私の記憶が脳内で再生されそこから使う魔法が選ばれるはずだったのだが、様子がおかしい。
私とは違う誰かの記憶が逆流する。
「あら~ラックちゃん凄いじゃない?またまた仕事の依頼よ?改名したかいがあったんじゃない?え?破魔町で撮影したい?構わないけど?なんでそんな顔してるの?」
「好評だったわよ。こないだの仕事。ローカルテレビの占いコーナーでの仕事が来たわ。占いなんてできない?ばかね!原稿読んで決めポーズ決めるだけよん。」
「仕事が決まったわ!初仕事よ!初仕事!地方のスーパーのモデルだけど。愛想良くするのよ!!」
「
「誰?あんた?うちはちっちゃな芸能事務所よ。飛び込みに対応できるような資金力なんて、皆無!冷やかしなら帰って帰って!…手紙?…赤字でさち…よ!は、早く入りなさい!くわばらくわばら」
突然映像が途切れ途切れになる。
「憎め…憎め…憎め…」
「…魔力…吸う…女王…計画…」
「御神木…成長を…続けて…」
「無制限…魔力…破魔町…」
「…お前魔法少女って…知ってるか?」
「…ほどよい染まり具合だな…呪いが…」
「…記憶の魔法少女…お前に見せるものは…ない。」
黒い蝶が舞う。
視界がクリアになる。
「ち、まぁいいや。お前今すぐこの町を出ろ。んで、ここに行け。さちよからの紹介だと言えば食うところや寝るところには苦労しねえはずだ。ガッハッハッ!」
赤髪の占い師が高らかに笑う。さぁ見なよ。
「さぁほのか、目覚ませよ」
静かな風がながれ。
木々の香りが鼻を撫でる。
少年と少女が木に寄り添い昼寝をしている。
少女の頭を撫でて優しく名前を呼ぶ。
「ほのか…目を覚まして」
「はっ!」
飛び起きて周囲を見渡すとすぐ横でさちよさんとカレンが組み合っている。
「ちょ!いいとこに起きたぜ!ガッハッハッ!ほのか!こんの変態に事情を説明してくれ!」
「誰がHENTAIデスか!妹を愛でるのは姉の義務デーす!それより、ほのかちゃんに何をしてるデスか?この露出魔!」
「あ?魔力を感じやすいから全裸になりたい所を布を付けてやってるんだぞ!感謝されるんならわかるが、露出魔呼ばわりされる義理はねぇぞ!」
ほのかがあわあわしてるところに、助け舟が入る。
「やめんかふたりとも!」
さきちゃんのグーパンは的確に2人の顎を捉えて、地面に沈めた。
「さきちゃん!」
「ほのかごめん!迷惑をかけちゃった!」
手を合わせ、謝るさきちゃんに抱きつく。
「元に戻ったんだね!よかったぁ!」
「あぁ、シダー先生のおかげだな。どうやら、ラックさまは気絶したらしいな」
少し離れたところにラックが倒れていた。街の人たちも正気を取り戻しつつあるようだ。
「よかったぁ、みんな無事なようだね。あ、シダー先生と言えば!さきちゃんコレ見て!」
スマホを取り出して、シダー先生のセクシーダンスシーンを見せようとする。
「…私が何か?」
底冷えのする声だった。
「しししししだ〜先生!!ご機嫌麗しゅう…」
学校で見かけるいつもの服装だ。あれは幻覚だったかも。
「ご機嫌よう。宮内ほのか。私がどうですって?」
「い、いえ!なんでもありません!!今日も眼鏡が素敵ですね!あの…そういえば…ラックさんは何があったんですか?」
「あなたに魔法をかけた途端、2人して倒れてしまいました。これから魔法騎士隊に引き渡します。なにかうわ言のように、あなたの名前を呼んでいましたが、お知り合いですか?」
彼の横顔を見る。静かな寝顔だ。
「いえ…はっきりは覚えてないですが…。どこかで見かけた気がします。芸能人だから、CMとかで見たかも?ははっ」
「…そうですか。今日は早く休みなさい。他の方々も、早く。さち…赤髪のあなたは…寮の一室を貸し与えましょう。宮内ほのか、404号室にご客人を案内なさい」
「ガッハッハッ!お呼ばれされるぜ?ほのか!」
「あなたには、町に来た経緯もろもろ明日きっちりと話を聞かせて頂きます」
さちよさんはビクって身体を震わせた。そんなさちよさんの頭に飛び乗って、みっきゅはシダー先生に話しかける。
「シダー教諭。みっきゅっきゅ。彼の聴取について行きたいっきゅ!」
「あなたは、…わかりました。宮内ほのか。今日はあなたの魔法生物をあずかります。あ、大丈夫です。心配しなくても、失言はホルマリン漬けで勘弁してあげますので」
「いや、眼鏡っ娘って萌えだっきゅ!ってちょっとまつっきゅ!いまのはノーカンッキュ!助けてっきゅ!」
ラックとみっきゅを連れてシダー先生は闇夜に消えていった。
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