第30話 お風呂回は湯気が邪魔


 カポーーン


「ほえー」


 店の中を二階に上がると、生活スペースのようだった。中央がリビングになっていて、扉がいくつか。親方の部屋、弟子の部屋、風呂場、キッチン、トイレ、資材置場、作業所などなど。てか、外見からはわからないくらい中が広い。さっそく、お風呂に入ることに。風呂場は豪華檜風呂。でかい!広い!まるで銭湯だ。てか、銭湯だ!どうなってるの?


「空間魔法さまさまだな。」


 ボン☆キュ☆ボン☆な、かおりちゃんがタオルを肩にかけて入ってきた。引き締まった身体に出るところがしっかり出てる。


「ナ、ナイスボディッキュ」

「まったくだよ。けしからん!ん?」

 2鼻血がぼたぼた。


「・・・何を、入って、きとるんじゃああああ」

 ミッキュ を鷲掴み、振りがぶって、床に叩きつける。


「きゅ、それに比べて、ぷっ。ほのかのは、ストーン★ぷにん★ちま★っきゅ」


 叩きつけられながらも言うことはしっかり言ってくるのが、腹が立つ。


「しっしっし、ほのか、言われてるな」


「先輩。ちょっと向こう。向いててもらえます?」

「お、おう」


 たわしを掴み、愚かなぬいぐるみに近づく。

 ゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッ


「キュッ!やめ!ごめ!ダメ!すま!ギュエ!」


「わた!し!だって!いつ!かは!巨乳!」


「…こぇぇよ。しっしっし。てか、あの姉ちゃんは何者だ?はじめて会った気がしないんだが」

「知らない」

「話せば長くなるっきゅ…。あれは僕がまだ若き…」

「んなことより、かおりちゃん!杖職人さんとの馴れ初めを教えてよ」

「まずお前は血をふけ」

 え?なんのことぉ?





 ほのか達がキャッキャウフフしてるその横の親方の部屋。机と窓だけのシンプルな部屋。さちよと親方が対峙していた。親方は頭頂部が禿げ、ひょろりとした風体をしていた。彼は入りざまにさちよに殴られた頬から血が流れていた。

「…ガッハッハッ!齋藤。お前老けたな」

「…凶川…どうして」


 掛けていたメガネに手をかけ、言葉につまる。


「『どうして生きてるのか』か?『どうしてあの頃のまま』か?」


 親方は押し黙る

「…」


「偉くなったもんだな。お前が今やカウンターズとは。一は最強の暗殺者、二は最悪の魂使い、三は最大の魔力保持者、四は最高の運持ち、五は最期の魔法少女、六は最上の杖職人、七は最多の魔法術式研究者、八は最古の霊術師、九は最速の魔法騎士ってな」


「…おれじゃない」

「あの坊ちゃんか」

「…そうだ」


「お前がここにいるとなると、通報装置が作動しているはずだ。魔法騎士隊が今にくるぞ」


「だろうな。何…すぐに帰るさ。聞くことを聞いたらな」


 つかつかと歩いていき、親方の胸ぐらを掴む。


「あたしの杖はどこだ」


「知らないっ…」

「じゃあ、聞き方を変えるか。の黒幕は誰だ」

 凄んでいた親方の顔がとたんに陰る。


「あれは…事故だ!私は関係ない…関係ない…」


が用意した杖を使って起こったことだ。製作者に何の落ち度はないはずがあるか!」


 さちよが怒鳴り込む


「ひぃ…!知らないんだ。私は杖を渡しただけだ。作ったのは私でも、師匠でもない」


「ち、じゃあ、お前に渡せと言ったのは、誰だ」

「言えない」

「…なんだと」

 さちよは1歩下がると、魔力を練り上げ始めた。ローブの中から水晶玉が浮かび上がる。


「言葉に気をつけろよ。お前らのおかげで苦労したからな、今や杖なしでも十分戦えるんだぜ」



「…息子の無事は保証できんぞ。呪いぶっかけても、腕を叩き折ってもいいんだ」


「やめろ!!あの子に手を出すことはゆるさん」


「どのくちが言ってんだ!三流が!」


「…あぁ。私は三流だ。だが、あの子は天才だ。あの子の腕は今後魔法国を大いに発展させる。女王様万歳だ!!あの子に手を出すな!」


「…?」


「すぐに出ていけ…」


「…ガッハッハッ。あ、そだ杖をもらってくぞ」


 親方の横を通り過ぎ、机に置いてある杖をとる。


「…今更何をしようって言うんだ。」


「…へへ、秘密だ。杖の礼って訳じゃないが、昔馴染みだ。さっきの1発でチャラにしてやらぁ。最後に1つだけいいか」


「…なんだっ」


 窓枠に手をかけながら言う。


「ほのか達を助けてやってくれ。ガッハッハッ。将来有望だ。何せ私に似ている」


「それは…危険だな」


「ちげぇよ。伸び代があって、将来有望だ」



 そのまま窓から飛び立つ。杖の一振で背中に羽が生えて、空に舞い上がる。


「ガッハッハッ。齋藤め、らしくないこといいやがって。ヒント出しすぎだぞ」


 そう、さちよは呟き、眼下を見る。魔法騎士隊がこちらに気づき、ホウキに乗って飛んでくる。


「…さて、20人の魔法騎士隊と杖を持った私か。たしか魔法騎士隊は破魔町の住人の中から魔力の持ち主達が抜擢されて、厳しい訓練を積んでいるらしいな。カウンターズ候補者も毎回排出してる。破魔町の防衛の要。はは、どうしたもんかね」


 杖を抜き、彼らに向ける


「…負ける気がしねぇな♡ガッハッハッ!」

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