第3章 1話 破魔町区長会議

「馬鹿な!せっかく女王が力を貸してくれると言ってるのデスよ?!」


破魔町区長会議は月に1度行われる定例会と、緊急時に開かれる臨時会の2つ。今開かれているのは、臨時会である。1人の歳は30代半ばだろうか、白いスーツを着た男が熱っぽく語る。


「現在、破魔町も含めて近隣の町でも、魔法が原因と見られる犯罪が増加傾向にあるのデス。我々の社会の力では対応するには、さらなる魔法少女が必要デス」


「し、しかしですなぁ、南区長、市民の安全を他国の者にまかせるとなると、色々と問題がですなぁ」


禿げた頭の汗を拭きながら、でっぷりとした男がモゾモゾと口ごもる。そんな頼りない様子の西区長の彼を見て、ため息をついた。元々破魔町の町長だった彼とはどうも反りが合わない。やれ責任が、やれ安全がと、つまらない答えばかりだ。


「落ち着いてくださいにゃ。南区長」

北区区長の名札を下げた猫耳少女が言う。初めはなんの冗談かと思ったが、魔法国のカウンターズとやらの重役である。破魔町の魔法学校の学園長も兼任し、この町の結界をも、張っているらしい。


「学園長!落ち着いてデスって!馬鹿なことを!魔法少女が増えるかもしれないってのに!落ち着いていられマスか!」


「女王が言ったのはカウンターズの追加派遣であって、魔法少女の追加ではないにゃ」


淡々と語る。彼女の口調は穏やかだったが、目線は鋭かった。カウンターズの追加派遣。現在破魔町にいるとされるカウンターズは3人。魔法剣士にして魔法少女の9番破魔魔法学園の学園長にして、魔術研究の第一人者の7番、最高の杖職人の弟子6番だが、それ以外の人物もいるという噂もある。協定などあるにしてないようなものである。魔法国と人間社会の戦力は同等でなければならない。表向きはこのように提案はされているが、実際のところはわからない。南区長の叫びで我に返った。


「ガっっっっデム!!!!」


膝から崩れ落ちた南区区長に深く低い声がかけられる。


「…落ち着け」


1人の男が入ってきた。ワックスでかっちり固めた髪は白髪が混じり、鷲を思わせる鋭い眼光が白スーツに注がれる。威圧感のあるその視線は見るものをたじろがせる。


「…我が社の看板も背負っているんだぞ。貴様は」


「社っ社長?!ど、どうして、ここに」


「…我が社の重大な投資案件に顔を出すのは当然だろ」


「は…はいデス。白鳥社長」


白鳥財閥のトップである彼は、少し目を細めた。

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