第16話 傍観者だっきゅ!女の子は30超えてからだっきゅ

 箒に立ち下界の様子を覗く魔女がいた。ほのかが様々な魔法を紙一重でかわしまくる姿を高みの見物である。2

「おぉ!やってるやってる!ガッハッハッ!ほのかの野郎苦戦してるな」


「あ、あなたは!」


 同じように下の様子を見ていた魔女が突然あらわれた声の主におどろく。


「ガッハッハッ!久しぶりだな!委員長!いや、シダー教授?」

 豪快に笑う彼女に対して、

「あなた、何年も連絡を寄越さないで!それにその姿はいったい」



「ん?あぁ、まぁ私がヘマっただけさ。そんなことより、教え子のためにサポートとは泣かせるね~。鬼の委員長の志田さんよ。そんな面倒見よかったか?」


 シダー先生は咳払いをする。


「今は時代が違うのです。魔力持ちは貴重。何か虫の知らせでもあったのでしょう。あなたの魔法を思い出して。そしたら、今度は本当にあなたがくるなんて。この歳になってあなたの魔法の恐ろしさが分かりましたよ。学生時代には、考えられませんでしたが」


「今も昔もあたしの魔法はこいつさ。変えられないし、変える気もないさ。魔法のなんちゃら原則だろ『魔法は個性。真似は出来るがオリジナルには及ばない』」


「はぁ、魔法個性論です。魔法は、個人の強い想いが形を成したことで生まれるもので、誰かが真似をすることはできない、ですね」


「そうそれ!地上のあのイケメンくんのオリジナルではないな」


「まったく、なんであなたのようないい加減ななるなんて」


「ガッハッハッ!んな、褒めんなって照れる照れる。んで、首尾は?」


 こともなげに聞いてきた。数十年ぶりに会ったというのに、つい昨日別れたかのような気軽さで話しかけられ、戸惑いが隠せなかったがついつい口が軽くなる。


「まるで全てお見通しなんですね。きちんと私の分身体は龍崎さきに助運薬リトルラックを飲ませました。宮内ほのかを連れてきたのは、計算外でしたが」


助運薬リトルラックはあくまで、の幸運だからな。実力では選ばれないさ」


「実力…」


「ん?どうした?暗い顔して」


 シダー先生は無言でローブから厳重に封じられた禍々しい色の小瓶を取り出した。瓶には何枚もの呪符が貼られていた。


「なんだ?毒か?」


「毒ではありません。宮内ほのかの作った助運薬リトルラックです」


「ガッハッハッ!年取って冗談言うようになったんだな!委員長!これは傑作だ!助運薬リトルラックは無色透明だぞ。ガッハッハッ」


「さちよ。自分で確認しなさい」

 そういうとさちよの方に放って投げる。


「っとっと…っ!」


 反射的に受け取ってしまったが、すぐに後悔した。あっという間に呪符が腐り果て、中身をぶちまけた。その様子を平然と見ながらシダー先生は呟いた。


「言い忘れていましたが、私あなたにおさげブス眼鏡と呼ばれていたこと根に持っていました」


 ずるりと、さちよは足を滑らせ、落下していった。


「こんのっおさげブス眼鏡ぇ!目がぁあああああ!鼻がああああああもげるぅううう!」


 フェードアウトする彼女の声を聞きながら、ハンカチを取り出す。


「…生きててよかった。さちよ…」


 彼女の目には一筋の光が。存外シダー教授もめちゃくちゃである。

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