第17話 最強の魔女の規格外な最弱魔法だっきゃ!

「ぬうぉおおおお!」

恥も外聞も可愛さの欠けらも無い叫びが魔法少女となったほのかから発せられていた。みんな可愛い声で必殺技とか無理だから!アニメや漫画の世界の話だから!


「右ッキュ!左ッキュ!あ、こんどは背後ッキュ!」

 中央広場の混戦が続いていた。

 次々に飛んでくる魔法や魔術を交わし続ける。ラックは椅子に座り水晶玉片手に優雅に紅茶を飲んでやがる。ただ、その目はギラギラとほのかを見据えていた。


「どりゃああああ!氷縛アイスチェイン氷縛アイスチェイン氷縛アイスチェイン!、ってもう弾切れ!」

「早く!記憶するっきゅ!」


 ほのかの魔法『記憶』は見た魔法や魔術を一定量使用できるという魔法だ。魔力量が少ないため、ストックできる数は限られる。持ち前の運動神経を魔術で底上げし、隙あれば反撃しつつ、ギリギリ回避し続けている状態だ。


「せい!!記憶メモリー!!火焰槍!雷爆!誘惑舞踏セクシーダンス!うっふん♡!って誰じゃい!こんな魔法使ってるのは!!」


 くっそ!誰だよ!こんな変な魔法使ったやつ!!あたりを見渡すと、背の高い魔女が体をくねらせていた。


「あっはん!!!」

「おぇぇだっきゅ」


 あんたかいっ!!シダー先生!!学校じゃ絶対見られない姿。『鉄壁アイアン・大真面眼鏡メイデン』は、プライベートでは、お茶目なのかもしれない。写メ、写メ。いつか何かで使えそう。


「んぎゃあああ」

 あ、なんか空から雷落ちてきて、シダー先生が黒焦げに!


「先生っ!っぶな!」

 魔法を躱したほのかの目線の先には、先生の影も形もなくなっていた。辺りに黒焦げになった先生がいないとこを見ると、無事逃げられたのかな。だったらいいけど。


「…ぁぁああああ」


 ん、なんか聞こえる?段々大きくなる悲鳴に首を傾げる。てか、近づいてる?


「ぎゃあああああああああああ、あん!」



 ちゅどーん


「…っはぁ、はぁ、あの眼鏡アタシじゃなきゃ死んでるぞ…。毎日いちご牛乳飲んでてよかったぜ、がはっガッハッハッ…。つぅ…まじいてぇ」


「って、さちよさん?!」

「さちよっきゅ!助けてっきゅ!」


「お!おっす!ほのか!ミッキュ!ガッハッハッ!だいぶ奮闘してるようだな。」


にこやかに手を振って近づいてくる。ほのかが気づいた時点で10階くらいの高さから落ちてるぞ。どんな身体してんのよ。


「あ、」


「あ?」


 喋りだしたさちよさんの頭部に、氷の槍がぶっ刺さる。ついでに、もろもろな魔法の流れ弾が次々に雨のごとくふりそそぐ。山高帽が弾かれて、灼熱のごとく紅蓮な長い三つ編みの髪が現れる。月明かりに照らされて、とても美しい。顔を上げたときには、怒りで顔が真っ赤になり、ローブを剥ぎ取り、地面に叩きつけた。中は、


「下着?!」


 ピンクのフリルのついた黒いブラに、黒いパンツ。半裸の姿があった。ってかデカイな!おい!見せつけるな!見るもの全てが振り返りそうなこの美人は髪色の如く烈火の怒りに燃えていた。


「ってぇな!ほのか!杖を貸せ!」


せっかくの美人が台無しである。


「は、はい!」

「ちょ、待つッキュ!ほのかの杖は!」

 ミッキュが制止するが、気圧されて、つい杖を渡してしまう。


「へへ、何年ぶりだろうな!杖を使っての魔法は…!さて、コホン。あ、あ~、あん♡あ、いけね。変な声出た。ガッハッハッ。すぅ…」


路地で感じた魔力よりはるかに膨大な魔力が杖にあつまる。杖がミシミシという音をたてて成長していく。


「赤き魔女の紅き血潮が燃えたぎる…。赫き魔法は世界を染める…『ダブル』」


 土煙が巻き上がり、赤い風が晴れたころ、さちよさんはそこに立っていた。別段変化は…?!


「おっぱいが1つ、おっぱいが2つ!おっぱいがいっぱいっきゅ!スイカ収穫祭っきゅ!」


ついに、ミッキュが壊れたかと思ったけど、彼は間違えた訳ではなかった。


「さちよさんが…いっぱい?!」


「「「ガッハッハッ!覚悟しな!こっからはウルトラスーパーハイパーキューティービューティーギガストリーム大✩魔法✩少女✩さちよさんの出番だぁ!ガッハッハッ!!」」」

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