魔法少女ほのか 2年生編

お花畑ラブ子

第1章 ドキドキ☆イケメン占い師!私の胸はツルペタ!っきゅ!← ミッキュ?水晶玉に見立ててにぎりつぶされたいの?

第1話 ラスボス倒すついでに、メインキャスト紹介するッキュ!

 

 魔法少女として戦ってきて、約一年。ついに悪の組織との闘いは佳境に。

 いままでほんといろいろあったよ。


 ほのかは杖を握りしめて思うのだった。


 中学1年生の春、ポストに投函されていた。真っ赤な封筒に入った『寮の費用ただ!三食つき!ドリンクバーでタピオカ飲み放題!!和洋中全てが揃った学食!!』という豪華特典の勧誘文書によって、私の運命は大きく変わった。


 引っ越してきて30分で、馬の頭の変態的なゴリマッチョの怪物に襲われて、私、ほのかの新生活が始まったのだった。


 私のお気に入りの髪型がポニーテールなんだけどさ。

 マジの馬に追いかけられるなんてね。

 ははっ!マジ笑えないっす。


この時の話もいつかは話せたらいいなぁってぼんやり思っているんだけど取り合えず、ざっくりと説明しておこう。私の新生活は、馬とパンツと鬼コーチによってあっという間に魔法少女生活へと転落していった。ざっくりしすぎてわからない?いやいや私も自分で言っていて正直どうかと思うけど。まぁ気にしたら負けよ。


 魔法少女っていうのは、まぁ、せいぜい幼稚園児や保育園児くらいの子が見るアニメの世界の住人で、中学生の私からしたら当然ありえない存在なわけ。最近はコスプレイヤーなんてのもある程度社会に認知されてきているとは言っても、もう中学生になったら、そんなことよりも恋!に、おしゃれに!、おいしいごはんにしか興味がないわけよ。でも、まぁちょっぴし、心の奥底では、わくわくしていたのも自白しよう。


 けど、まぁいろいろな実際、魔法少女はやってみると大変で、初めのうちは


「いやいやいや、服が、服が、爆散したんだけど!!聞いてないっ、私聞いてないって!!ちょっ、せめて草陰でぇ!」


 と、恥じらいをもった純情な乙女な私だったけども、月日や慣れというのは残酷で


「何さきちゃん恥ずかしがってんの!!はい、すっぽんぽんだよ!すっぽんぽん!!」

「あんた、恥じらいを覚えなさいよ!」


 という始末。昔は恥ずかしかった変身シーンや名乗りも


「えっ、ほんとに言うの?かおりちゃん?こんな人通りで?馬鹿なの?死ぬの?社会的に死ぬの私」


 から


「きゃ☆正義の魔法が火を噴くぜ!魔法少女ほのかっ!悪の組織の怪人どもめ、消し炭にしてくれるわ!ひゃっはー!」


 堂々と名乗りをできるようになっちまった。慣れって…怖いね☆ 

 でも、名乗りがスパッと決まるとこれが超気持ちいいんだわ。びしっと決まれば、それは、もうカ・イ・カ・ンって感じで、こないだ自分のカッコよさによだれが噴き出していたわ。町のみんなはそんな私の姿を見て、黄色い悲鳴を上げていたわ。

 

 まぁ回想していてもしかたない。一年近く戦ってきた悪の組織の親玉が目の前にいる。いやぁでかい。なんで、こういう敵って、でっかいんだろう。エネルギー効率考えたことある?でかい=強いの時代は終わったの今頃は省エネ思考が必要なわけよ。無駄にでかい筋肉。無駄にでかいマント。無駄に低音な笑い声。テンプレすぎるんだような。



 破魔市の上空で、光がまばゆく輝く。

 眼下の町は私の住む町、人知れずや真ん中に作られた町。魔を破るって書いて破魔町。魔法使いが多く住む町なのに、ネーミングセンスがあるのかないのかよくわからない。でも、私の大切な人たちが住む町。


「しっしっし、ほのか!最後はお前が決めるんだ!」

「ボケっと、あほ面晒してる場合じゅないッキュ」


 赤みがかった髪色の少女が二カッと笑いながら言う。サイズの合っていないぶかぶかの古い山高帽子をかぶって、青く透き通ったきれいな杖を持つ。彼女の周りには氷でできた動物たちが次々と生まれ、雑魚を蹴散らしている。私の一つ上の先輩。

 かおり先輩あんたのおかげで純粋なほのかちゃんは記憶のかなたに消えていってしまったよ。

 魔法を目覚めさせるためとは言え、私を上空10000mから落下させたことは絶対に忘れない。まじ忘れない。おニューのスカートは空高く飛び去り、私はパンツを公衆の面前、公衆の上空で披露することになった。もうすぐあの日から一年か、感慨深いぜ。まったく。いつか!呪いを!かけてやる!!!

 でも、鍛えてくれてありがとう。


「ほのかちゃん、ごめん、傷は応急処置しかできなかった、でも、あなたの魔力少しは回復できたから」

「体力ゴリラのほのかには回復魔法なんてもったいないッキュ!」



 ふわふわとした髪質の穏やかな子が申し訳なさそうに言う。さくらちゃんめっちゃ優しい見た目なのに、刀を握ると一変するんだよ。こわかったよ。刀に杖があたったときにはさや当てと勘違いされて殺されかけたっけ。この人の魔法は壊すことと治すことの両極端な炎の使い手。ある魔法集団の幹部だったんだけど、なんやかんやあって仲間に加わったの。いやあまさかあの時私の命を狙っていた刺客が私の傷の心配をしてくれるだなんてマジで驚きだよ。いつか呪いをかけてやる。

でも、ありがとう。



「大丈夫っすよ。先輩!ほのかは、ほのかはやってくれます」

「ぐへへっきゅ、サキはかわいいッキュ!」


 巨大な敵から放たれる光弾を弾きながら、短髪の女の子が叫ぶ。巫女服だ!かわいいな。幼なじみのさきちゃんがライバルの魔法少女として現れた時はほんとどうしようかと思ったけど、今では一緒にラーメン屋にいける仲になった。またマシマシの店に行こう!彼女は町の由緒正しい神社の娘のさきちゃん。ボーイッシュな見た目だけど、出るところはこっそり出ている。隠れ巨乳の女の子。よし!乳をもごう。いやいや違う。違う。てへ!いけない!心の声が駄々洩れだったわ。いつか乳がもげる呪いをかけよう。


「そうだヨ、ほのかは負けナイ!」

「カレンの胸にはいつも負けてるッキュ!」


 金髪のスタイルのいい魔法少女が雑魚を蹴散らす。外国からの転校生カレンちゃんだ。ナイスバディで正直うらやましい。ああ私の成長期は終わってしまったのか。いや希望を捨ててはいけない。揉めばでかくなる。腕立ても毎日している。豆乳だって毎日飲んでいる。彼氏がいないからセルフで揉みしだいているのに、まったく乳が大きくならないのはなぜ?WHY?OHMYGO!!!さきちゃんには負けたくない。絶対。いや、マジ。最近ブラのサイズが大きくなってきたとか言ってたのは聞こえない聞こえない。


 いやいや脱線している場合じゃない。別に登場人物紹介がめんどくさかったから一気に凝縮したわけではないのである。私ってこんな時でもいろいろ覚えているでしょ?後々に判明する私の魔法のための伏線なのだよ。っと含みを持たせて言ってみる。


 わたしが何で魔法少女をやっているのかと不思議になるくらいの一般人出身。使える魔法もかぎられる。でも引っ越してきて一年間この仲間たちや破魔市のみんなとふれあってきて、この町を人を守りたいなって本気で思ったんだよ。


「ぐるがああああああ」


 理性を失い暴走する悪の組織のボスに対して、杖を向ける。魔法国の神木から削り出したこの杖もボロボロになったなぁ。いや、べつにミッキュのケツから出てきた木の棒をそのまま使っているなんて言いたくないじゃん。ミッキュは御神木の分身だから、木。奴は木。ミッキュのおしりからずるりと引き抜いた魔法の杖とか言うよりも御神木から削りだした杖って言った方がかっこいいじゃん。その方がよくない?


「ほのか、やるッキュよ!!」


 相棒の魔法生物通称ミッキュが魔力を私に注ぎ込む。ちょいちょい失礼な口を挟んでる、憎めないやつ。緑のリスのような見た目をしているこいつのせいで、私のプライベートはめちゃくちゃに。かわいらしい男の子の声をしている割には、発現はおっさんのようなセクハラばかり、まぁ当然こちとら、女だもんで。その手のセクハラ発言には、武力をもってして返してやっている。


「貧乳の意地を見せてやるっきゅ!」


 この一年間苦楽を共にした、とてもとても大切な相棒だ。


「きゅ?!ぎゅぺ!ちょ、思ってることとやってる事違うくないっかッキュ!爪が顔面にくい込みゅ!」


 暴走を止めるためにはをどこか違う場所に飛ばすしかない。ありったけのにくしみ…魔力を込めよう。ミッキュを悪の組織のボスの方に投げつける。


「待ってっきゅ!いま?らって言ったきゅ?!敵は1人ッキュ!待って!待っ」

「ふっっっっ飛べぇぇえええ!!!!!!」


 杖を静かに振るう。優しく、激しく、強く、儚く…。目を閉じて集中する。

 魔法陣が杖から次々と生まれ、浮かび上がり、ほのかの周りを不規則に回っていく。


「超特大魔法砲ほのかスペシャル!!!」


 光が収束していき、魔法陣が縦に並ぶ。目を開け、狙いを定める。ミッキュとボスが1列に重なった!!


「でゃああああああああああああーっ!!!!」


「ぐるがるぐるる《え?ワシの出番これだ…》ぎゃああああああ」

「ちょまっ!ごめんきゅ!ごめっミギュあああああぁぁぁ」


 一筋の光が空を貫いた。




 同時刻、破魔町の隣町ではひっそりと占いが行なわれていた。シャッターのしまった商店街に簡素な台が置かれ、その上には水晶玉が。深くフードを被った怪しげな赤毛の女は豪快に笑う。水晶玉を覗き込みながらささやく。

「ガッハッハッ!お前は不運の星の元に生まれているね」

「はい…」

 そう力なく答えた彼は、身なりはお世辞にも綺麗だとは言えず、顔もやつれていた。


「ガッハッハッ!こんなダイヤモンドの原石をほっとくなんて勿体ないな!」


「ダイヤモンド?ははっ…僕には、縁遠い言葉だ。父は夜逃げし、母は蒸発。残ったのは多額の借金ばかり。金も学もない俺はどうすれば…いっそ死ぬかと…」


 突然、女は立ち上がり、男を殴り飛ばす。フードから除くのは勝気な顔をした少女だった。


「ばっきゃろう!世の中には、もいるんだぞ!生命を粗末にすんな!」


 呆然と地面に尻もちをついたままだった男の襟元を少女は掴みあげる。

「いいか!お前には魔力がある!その魔力を使えば、人生大逆転だ!」


「魔力?ははっ、おちょくらないでくださいよ」


「魔法は自分のためにあるんだ。破魔町の隣町に住んでいるってだけで、こうも不幸になるかね」


 彼女は深く溜息をついて言った。


「破魔町?最近できた。実験都市のことですか。なんの関係が」


「ち、まぁいいや。お前今すぐこの町を出ろ。んで、ここに行け。さちよからの紹介だと言えば食うところや寝るところには苦労しねえはずだ。ガッハッハッ!」


1枚の紙を手渡す。


「そんな急に。しかも、魔法だなんて」


「まだ疑ってんのか。仕方ねえな。大魔法少女様の魔法見せてやるよ。一筋の流れ星がながれたら、お前の運命が動き出す。空見ていろよはぁあああああぁぁぁ」


 彼女は水晶玉を撫で回す。うつろな目をした少年は夜空を駆ける一筋の光を見た。

 みぎゃあああああああああああああああああああああ

何か変な声も聞こえた気もするけど、気のせいだろう。それよりも、こんなことって。



「流れ星!流れ星だ!!ほんとに魔法はあるんだ!」


「おい待て!私は何もまだ」


 占い師が空を見上げると空を貫く一筋の光があった。


 ひとつの物語が終わり、新たな物語が幕をあげる。

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