第5話 赤毛の占い師 ぐへへ新キャラ投入っきゅ!

商店街での買い物が一通り終わり、帰路につこうとしていたら、


「おーいあんた!おい、あんただよポニーテールの」


 不意に呼びかけられた。声のほうに振り向くと店と店の間に細い路地道があった。そこにはかわいいテーブルの上に水晶玉を置いたフードかぶった女がいた。赤毛がちらりと見えるが表情は伺えない。


「いっちょ、あたしに占われてみないかい」


 また占いか。正直もう占いはお腹いっぱいだ。聞こえないふりをしていいだろう。そうだそれがいい。


「今日の夕飯はなっにかなぁ🎶カレーかなぁ?ハンバーグかなぁ?いやいや今日はかっらあっげだぁ♪」



 ド下手な歌を歌いながら、通り過ぎる。そうだ忘れよう。変なのには関わらないのが1番。占いなんてものは統計学と誘導尋問によってなんとなーく当たるようになってるんだよ。


「デザートには、プリン!ぷるぷるプリン♪プププププププリン♪ぐへ」


 上機嫌で歌を歌っていると不意に背中を衝撃が襲う。ごとんと言う音がして、足元を見てみると大きな水晶玉が転がっていた。


「無視するんじゃねーよ子娘が」


 投げ終わった後の姿勢で鼻息荒く先程の占い師が言い放った。私と同じ年頃のはずなのに小娘とは心外である。足元に転がった水晶玉を拾い、つーかこれめちゃくちゃ重たいな。腹が立ったので思いっきり投げ返した。


 私の目には水晶玉がゆっくりスローモーションで映っていた。運動がそこまで得意ではない私にしては、華麗なフォームで投げたように思う。


 占い師は目を見開き、横に思いっきり飛び逃れる。そんなめちゃくちゃビビるようなものを私に投げつけたのか。と、私はまた腹が立った。


 だがそれは私の思い違いであった。


 投げつけた水晶玉は狙いを外れ、路地裏に吸い込まれていった。直後爆風と爆音がメインストリートを駆け抜けていった。


「ふぇ?」


 悲鳴が飛び交う。間一髪直撃を免れた占い師はフードを外して、その真っ赤な髪を揺らしながら近づいてきた。私の胸ぐらを掴んで引き寄せる。目と目が合った。その瞳は右と左で違う色をしていた。


「バカヤロー。こんな街中で魔力を込めてぶっ放すバカがいるか」


 魔力何を言ってるのこいつは?


「だが…、気に入ったぜ。がっはっはっは!豪快なのは、大好きだ!!出会いがしらに、初対面の相手をぶっ殺そうとする頭のいかれっぷりがたまんねぇな。」


謎の女はにんまりと笑う。


「お前をあたしの弟子にしてやる!」


「お、お断りします!」


冗談なのは恰好だけにしてくれ。わたしは余計な騒動に関わりたくないのに。


「いかのおすし…!いかのおすし…!」


「は?いかのおすし?腹減ってんのか?」


「『知らない人についてない』『車にらない』『お声を出す』『ぐ逃げる』『すぐらせる』たすけてさきちゃあああん」


「え?イカした、のうさつ、おねえさん、スーパー、しんじられなーい?!誰がイカしたおねえさんだよ!おめぇ、サインやろうか?」


どんな耳してんだよ。都合が良すぎるだろ!


「私はポジティブだぜ!」


こころを読まれた?!


「遠慮してんのか?ん?超ウルトラギガンティック最強魔法少女さちよさんの弟子になれるなんて、光栄すぎて、涙ちょちょぎれてしまいます!だと!ガッハッハッ!喜んで舞い踊んなよ?」


「違います!断っているんです!!」


ん?魔法少女?いま魔法少女っていった?うそ!魔法少女の姿を見られた?消さないと!こんなヤバい奴、記憶も存在も消さないと!


「まずは、杖の振り方だな!基本がなっちゃいねぇー。今朝のジャンプなんて、見れたもんじゃねぇよ。ありゃあ師匠は誰だ?」


「いや、本格的に考え始めないで!え?今朝?」


思案顔で、腕組みをして、考えを巡らしている。そういえば、一瞬占い師が見えたような。でも、どうやって。


「ん?お前もあたしに気がついていただろうが、隠れんぼ《ハイドアンドシーク》をかなり強めに掛けていたのによぉ?あれに気づけるやつはそうそういねぇぞ?」


メインストリートが騒がしくなってきた。スマホをとりだして撮影する者、助けを呼ぶ者。北区のほうからマントを羽織った魔法使いたちが箒に乗って次々にやってきて、火を消していく。


「我々は魔法騎士第3小隊だ!こちらで2級魔法放火が行われた可能性がある。けが人はいるか!いたらこちらに!」


 魔法騎士隊は警察のような組織だ。魔法関連の事件には彼らが出てくる。町の均衡を保つとかなんとかで、警察と町を協力して守ってくれている。うん。実際は魔法少女や警察とものすごく仲が悪い。だから、結果として、早もん勝ちのルールが暗黙になっている。今日は魔法騎士隊にまかせよう。いつものように文句たらたら、嫌味だらだらだとたまったもんじゃない。


「…ちっ。今はまだ女王とやり合うつもりはないんだがな。水晶玉は取り返さねぇと」


 そういうと彼女は魔法騎士に近づいていく。なんだかくねくねと変な歩き方をしながら。


「うっふん。そこのミラクルキューティなおじ様?あたしのだーいじなっ水晶玉があそこにあるんですぅ」


 色仕掛けのつもりなのかな。あ、やっぱり隊員も困惑している、


「取りに行ってもいいですか?あっっっっっはん!!」


 不思議なポーズをかます少女に警戒しつつも、哀れみを持った優しい声で隊員は話しかける。


「?あ、ごめんね。お嬢ちゃん。病院を紹介してあげるからね。」


 あ、帰ってきた。


「ぐすっ…ひぐっ…」


 指を指しながら無言で涙目で訴えかける。いや、なんでいけると思ったんだよ。


「いや、まぁ、…どんまい?」


「…る」


「え?なんて?」


「…やる…滅ぼしてやる」



 そういうと彼女はぶつぶつと呪文を唱え始めた。空気が変わり、明らかに邪悪な魔力が地面から漏れだしてきた。


「そ!そこまでしなくてもいいんじゃないかなー!って!」


「…滅ぼしてやる…」


「とっっっても魅力的だったなぁ!」


「…」


「きっとあの隊員さんも忙しくなかったらメロメロだっただろうなぁ!」


「…ほんと?」


「ほんと!ほんと!」


「そうだ…そうだよな!ガッハッハッ!」


「わたしが水晶玉とって来てあげるから、ちょっと待っていて」


 足元のはゆっくりとひっこんでいった。なんだこの爆弾娘。はやく距離をおかねば。


「じゃあ、わたしは用事があるから」

「おう!」

 

彼女に水晶玉をおしつけて、そそくさと帰ろうとした。だが、彼女はピッタリとわたしのうしろについてきた。

 いや、なんでついてくるの。


「ん?」

「オマエは、実家暮らしなのか?」

「え、いや、寮だけど…はっ!いや!違」

「ふーん」

やばい。眼が輝いている。

「いやいやいやいや」

「あたし今日宿ないんだ」

「え、」

「だから泊めて」

格別な笑顔とともに、彼女の右手が消える。

 へ?!腹部にズドンという衝撃とともにわたしの意識は闇へ誘われた。

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