第9話 ラック様の握手会っきゅ!僕も女の子の手にぎりたいっきゅ!
「あれは。シダー先生?!」
こういった浮かれた行事など、真っ先に問題視しそうなシダー先生が、サングラスにマスクで変装して列にならんでいた。あたりをキョロキョロしつつも、興奮でぴょんぴょんしている姿は、彼女の身長もあり、悪目立ちしていた。
「おや、ずいぶんなトールサイズのガールがいたもんだぜ。僕と一緒に喫茶店のストローを全部一緒にへし折らないかい?」
ついにシダー先生の握手の番になり、ラック様が手を握りながら言う。だが、シダー先生の様子は今までの女性たちとは違い、少し首をかしげていた。
「それは、その、よくありませんね」
「・・・」
ラックは今までの女性たちとの反応の違いに一瞬笑顔がひきつるのを感じた。が、すぐに握手した手を引き、顔をよせる。シダー教授のエメラルド色の瞳をじっと見つめて彼はささやいた。
「さぁ、君の瞳を見せて」
そして、ラックとシダーの眼があった瞬間、
「はぁぁん♡」
シダー先生は、膝から崩れ落ちてしまった。
「ははは、困った子猫ちゃんだ。どうやら貧血を起こしてしまったようだ。ヘイ!警備員さんこの麗しい女性を休ませてあげて」
「はっ」
シダー先生は両脇を抱えられてずるずると警備員に連れ去られていった。
そんな様子を見ていたサキは嫌な予感をひしひしと感じていた。魔力の流れから貧血なんかじゃないことがすぐに分かった。シダー先生ほどの実力者が何かの催眠にかかってしまった。眼を見るのはヤバい。先輩たちを逃がさないと。
「…先輩なんか、ヤバいですって。帰りませんか」
先輩たちの袖を引いて、誘導を試みる。
「なんで?あと数人じゃん」
「さき~もしかして、怖気付いちゃった?」
そうじゃないんだって。怖気づくなんてそんな低レベルな話をしている場合じゃない。先輩たちだって破魔中学校に通っているなら、今の攻撃的な魔力を感じられたはずなのに。
「いや、さっきの先生の様子先輩たちも見たでしょ?」
「イケメンに囁かれたら、そりゃあ腰砕けにもなるよ」
「そう、そう、だから、さき大丈夫だって」
先輩が私の手を取り、微笑む。
「…あなたも、仲間になろ?」
「先ぱ!?痛っ!」
握られた手に万力の力が込められる。先輩たちの眼はうつろになり、口からはよだれがぽたぽたと落ちていた。さきも魔法少女をして一年たっている分、軽い護身術は身に着けているのだが、技も杖も出す暇なく、組み抑えられてしまった。
さきは抵抗虚しくラックの元に連れていかれる。2人の先輩の表情は虚ろだったが、はっきりと言った。
「「ラック様魔法少女を捕獲しました」」
ラックは両腕を引っ張られ、必死に逃れようとするさきの髪を掴み、ひっぱりあげる。
「上出来!上出来!さぁ、僕の目を見て」
優しく語りかけるが、力は緩むことなく、強くなっていく。さきは必死に目を瞑り、抵抗する。
「仕方ないなぁ。シダー?彼女の目を開かせてあげなさい」
さきほど連れていかれたはずの虚ろな目をした先生がさきに近づく。
「ッ先生!」
シダー教授は、さきの口に小瓶に入った液体を流し込む。さきの力が緩み、シダーはさきの目を無理やり開かせてラックの前に差し出す。
「さぁ、…俺の目を見ろ」
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