二重スパイ

「スパイをしろというのか」


「ああ、二重スパイってやつだ」


「今この町は大きな転換期を迎えつつある。魔法国は女王が何か企んでいるし、カウンターズも一枚岩ではないようだしな」


苦し紛れに言葉を出す。


「…あんたの娘に聞けばいいじゃないか」


「彼女に協力を仰ぐのは無理だ」


「?」


「カレンは難しい立場にいるのだよ。だが、親として、彼女の負担を増やしたくない。それに、」


魔法中年の彼は真剣な表情をして、少年に耳うちをする。


「君には、まだ後ろにだれかいるだろう」






「パパはいつまで、話をしてるんデスかね」


カレンは、大きな扉の前でくるくると回る。


「セバス」


「はい、お嬢様」


「今回の女王様の指令についてどう思う」


「…私には、答えかねる問いですね」


セバスと呼ばれた執事はすました顔で答える。


「意地悪デスね~。女王様もパパのことを警戒しているけど。さきほどのやり取りを見てもそんなに脅威になるとは思えないデス。わざわざ、近隣の町の魔法使いを雇って、なおかつあの赤髪の魔女の髪の毛まで手に入れたっていうのに」


「旦那様は、この町を作った一人です。女王様も何かお考えがあるのでしょう」


「それが知りたいのに。あなたは答えないのですね」


「わたしには女王様の考えまで、読めません。それに私が各地に散らばらせている分身たちがいる前では、あまりお話はされません故」


「ふ~ん」


「お嬢さま。あまり危ない橋は渡らないほうがいいですよ。あなた自身のためにも」


「あら、珍しいデスね。あなたがわたしの心配など。あなたにとっては契約上私が危ない目に会ったほうがいいと思うのですが」


「お嬢さまの安全を守るのも執事の役目ですよ」







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