第7話 味噌汁は日本人のこころッキュね!ま、僕はナマンチュ汁の方が肌にあうっきゅ
「はっ!」
目を覚ますと、お味噌汁のいい香りがする。やっぱり日本人は味噌汁だよね。味噌汁に始まり、味噌汁に終わる。プロポーズの言葉が毎日私のお味噌汁を食べたいだったらどうしよう。あぁいつか私の白馬の王子様がお味噌汁に乗って、やってこないかな。いやいや。昨今は女性が料理するなんて古い考えだ。今からは家事は分担する時代だ。おそらく私の王子様はお味噌汁をお玉でかき混ぜながら出現するだろう。君が落としたのは煮干しのイヤリング?それとも鰹節のヘアピン?きゃああああ!!!!
「ほのかぁごはんができるよ~」
なんで、私、寮にいるんだ。見慣れた天井を見て思い返す。さきちゃんの手際のよい、包丁の音が部屋に響く。とんとんトン!!うん、お嫁さんはさきちゃんだな。今から、子どもの名前を考えよう。そうしよう。さきちゃんとほのかで…ほさきとかどうだろう。うん。いい名前だ!おそらく、農業で世の中を変える女の子になるだろう。
「おいおきたかい?ほのか?ほのか昨日の爆発現場にいたんだって?まだ犯人捕まってないらしいよ」
はんにん?ああ!半人前とかの?いやいや私ってば魔法少女やってもう1年たつんだって。そろそろ一人前として認めてくれてもよくないかな?
「さちよさんに助けて貰ってよかったね」
台所からさきちゃんの声が飛んでくる。
さちよさん?昨日?スマホを見ると日付が変わり土曜日の朝8時だった。
さちよさんとは?なんぞよ。
「いやいや困っている人見るとほっておけなくてな。こっちこそ、部屋貸してくれてありがとうな!いやぁ爆発の時に、持ち物ぜーんぶ吹っ飛んじまって。ガッハッハッ!よ!ほのか!昨日は災難だったな!」
わたしのベッドの片隅に昨日の占い師がいた。
ん、なんか記憶と違うような。助けてもらった?私が巻き込まれたじゃなくて?その事を言いかけると遮るようにさちよさんが話し出す。
「可愛い趣味してるじゃねぇか」
赤髪のさちよというこの女は椅子のうえで胡座をかきながら、キョロキョロと部屋を見渡す。緑を基調とした部屋。勉強机の上には仲間たちの写真。タンスの棚には、テレビとたくさんのぬいぐるみが置かれていた。彼女の目がひとつのぬいぐるみで止まる。
「ん、このぬいぐるみ…」
たぬきかクマかリスかなんだかよく分からない緑色のぬいぐるみ。さちよさんはほかのぬいぐるみたちではなく、彼に興味をしめした。
「おいこのぬいぐるみどこで手に入れたんだ?」
「どこって」
ミッキュを見つけたのは、破魔神社だ。もともと御神体としてまつわれていた彼を事の成り行きで、とってきてしまったのだが、そんなことを初対面の人に言ってもしかたがない。
「ミッキュって言うぬいぐるみなんだよねーほのかっ。おばあちゃんにもらったんだと」
さきちゃんがフライパンと皿を持って入ってくる。目玉焼きとベーコンの焼ける音が聞こえる。さきちゃあああああああああああああん。ナイス助け舟。こっそり私にウィンクしてくる。なんてキューティくる!!愛してるぜ!親友!!
さちよさんはミッキュを手に取ると調べ始める。
「いたみが激しいな。まるで日常的にボコられているような。綺麗にしてやろうか?」
ドキッとして、冷や汗がながれる。まずい。ミッキュが生きているのがばれてしまう。
「そ、ソンナコトナイヨ、ヌイグルミにあたるなんてソンナヒドイコトスルわけないじゃないですか。で、どうするんですか?」
「え?洗うだけだけど」
彼女はフードの中から、ずるりと洗濯板をとりだしてにこやかに言う。洗濯板がぎらりと光る。
「一宿一飯の恩義ってやつさ!ピッカピカにしてやるぞ!!」
あ、ミッキュがめっちゃ目で訴えかけてくる。
(死ぬっきゅううううううううううううううう!!あんなのにからだを現れてしまったら、死んじゃうっきゅううううう!!!とめてくれっきゅううううううううう!!!)
合掌。心まできれいになることを祈ろう。さらばゲスコットきれいになって出直してきやがれ。
突然さきちゃんのスマホが鳴り出す。最近はやりのラック音頭。らしい。このあたまがキンキンするような甲高いメロディはセンスなさすぎだろ。
「やば、ほのか、ごめん!今日はラック様の撮影会兼握手会があって、部活の練習終わったら、先輩たちと見に行くことになってるんだ」
えっ。嘘だろ。さきちゃん。この怪しげな豪快赤毛女と二人きりにするつもり。
「まってさきちゃん!私を1人にしないで!」
さきちゃんは私にこっそり耳打ちをする。
「ほのかも私たち以外の友達作るチャンスだよ。がんば」
「いまじゃない!今じゃないよ!その親心!!」
ウィンクをして、さきちゃんは無情にもさっさとごはんを食べて部活に行ってしまった。カムバックううううううううううう!!さきちゃあああああああああん!!!
「さちよさん!ほんっとにいいから!」
「いやぁ、今日は洗濯日和だなぁ!ガッハッハッ!」
彼女はミッキュを脇に抱えて、ぐいぐい山道を進んでいく。心無しかミッキュが震えているような気がしてならない。
「洗濯機があるから!!私、普段そこでぐるぐる回しているから」
「いや、でもよぅ!ほのか、しらないのか?洗濯機で回すと痛みが早くて、すぐにおしゃかになっちまうんだぞ。がッはッは!!さちよさんが手ずから洗っていやるって言っているんだ。大船に乗ったつもりでいろ!!がっはっは!!!」
いや、泥船なんです。その船。船底に大穴が開いてるんですうう!!!
「んー、このあたりに川あったはずなんだがな。消し飛んだか?」
寮を出てから山の方に突き進んでいたさちよさんは首を傾げていた。
消し飛ぶっていう表現が変だが、昔このあたりに住んでいたのだろうか。
「はぁ、はぁ、川って何十年前の話をしてるんすか」
「何十年?お前何言って…」
さちよさんは一瞬虚をつかれたような顔をして、止まった。一瞬の表情から、少し表情が暗くなったような気がしたが、気を持ち直して、
「ん?あぁ…すまない。勘違いだったようだぜ!がっはっは」
豪快に笑うのであった。いつの間にか山の中腹まで来たのだった。さちよさんとともに振り返る。山から見える破魔町を見て、さちよさんは私に向かって問いかける。
「なぁ、ほのか、この町は好きか?」
「好きですよ!みんな優しいですし」
「そうか」
「わたしも、いろいろな世界を見て回ったが、この町ほど、魔法族と人間がたくさんすんでいる場所は見たことがない」
「そうですよね。なんか学校で習いましたけど、こんな風に共存できている町は世界でも数えるほどしかないって」
魔法国と私たちの世界は、大きな隔たりがある。普通には歩いてはいけない場所だ。
だが、魔法が広く認知されるようになった結果、各国が、魔法国へと侵入。また、魔法国側も報復を行う形で、大きな戦いがあった。その後、双方の痛み分けの形で戦争は終結した。魔法国は固く道を閉ざし、いくつかの町だけの交流となったのだ。破魔町はその中で、数少ない成功例としてしられている。
「魔法少女の仕事はどうだ」
「楽しいですよ」
?あれ?私さちよさんの前で私が魔法少女って言ったっけ
「そうか。私はそうでもなかったよ」
2人の間に静かに風がながれる。さちよさんはローブから水晶玉をとりだして、私に向ける。脇に挟んでいたミッキュは地面に転がるのだった。
「わたしは占い師だ。何でも見通す。ほのか。お前は魔法少女なんだろ。こんなふうに簡単に力の源を奪われるな」
さきほどまでの雰囲気が消え、厳しく鋭く私に言うのだった。
彼女は冷たい目でミッキュを見下ろし、踏みつけにする。
「ミッキュ!!!」
さちよの持っていた水晶玉が、紅色に輝き、燃える。
「…がっはっは。反応が遅い。思慮が足りない。間抜け。致命的な警戒心のなさ。これが現代の魔法少女か。弱すぎる。弱すぎて涙がでるぜ」
「
とっさに杖を出して、魔法を唱えるが、杖はピクリとも動かなかった。
本来なら、敵を追撃して気絶させるくらいの威力がある。この魔法はうんともすんともいうことはなかった。
「
杖はやはりなにも反応しない。
「がっはっは…。記憶の魔法か…。魔法少女対戦の時は、あんなにも苦戦した相手だっていうのに、この体たらく。悲しくなるぜ。アタシの強さが」
「だったら、カレンちゃんやさきちゃんの魔法で!!
そんな様子をさちよは静かにながめていた。
「しらねぇのか?魔法少女は、破魔町の中でしか魔法を使うことができない。制約の一つだ。そして、御神木もしくは、御神木の分身たる魔法生物が近くにいないと魔法を使うことはできない。両方の条件がないお前はどうやって戦う?」
彼女は意地悪な笑みを浮かべ笑うのだった。
「がっはっは!がっはっは!!…魔法少女ほのか!!お前は弱いんだよ!!調子に乗っているようだから教えてやるよ!先輩の魔法少女の強さってやつを」
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