第12話 こ、ころされるっきゅ!悪魔大明神ほのかにころされるっきゅ

 街と森のギリギリの境界線まで進み、ミッキュの魔力を探る。町を出てしまえばこっちのものだ。この町に来たばかりならなお知れず、いまのわたしだったら、簡単な魔法だったら、自前の魔力でなんとかなる。それに魔法というものは、感情の高ぶりである程度補正がかかるものだ。あの、緑たぬき!叩き潰してつくねにでもしてやろうか。すりつぶして、豚の餌にしてやろうか!よりにもよって、あの秘密を!!!


「乙女の秘密をバラしたやつには、天誅をくだしてやるわ!どこかな…どこかなぁ…ふふふ…あの、あたりだな…!!」


 杖を振るい渾身の魔力と憎しみとちょっとした恨み(呪い)をこめて、山の斜面の地面を抉りとり、ぶん投げる。簡単な物質移動魔法。この町では幼稚園の子供でもできる魔法である。こんな魔法を披露したところで、笑われてしまうのが、オチかもしれないが、現在頭に血が上ったほのかちゃんには、関係ない。潰れてしまえ!デリカシーなしのこの性悪まりも!!


「肉塊にぃ…してくれるわっ!くたばれぇぇ!!」


(注:彼女は主人公です)


 次々に飛んでくる岩を山の中腹で、1人と1匹は間一髪で避けまくる。飛んでくるのは、岩、岩、きゅうり、岩、岩、カーブミラー、大根、カバン、岩、岩、岩、トマト。


「ヒィいいいいいいいいいい!!さちよ!盾!盾の魔法っきゅ!」


ふりそそぐ、いろいろなものを躱しながら、必死に叫ぶぬいぐるみ。


「おまえがこの状況をつくりだしたんだろうが、たくっ!だから、私はまだ、女王に見つかる訳にはいかないん…」


みっきゅとさちよが岩が飛んできた方を見ると。


「ミイツウケエタア…クタアバレえええええマリモおおおおおおおお」


地獄の底から這い上がってきたかのような低い声に心底びびる。髪を振り乱し、眼は激しく釣り上がり、おどろおどろしいオーラを放っていた。


「来たッキュゥ!!こわいっきゅ!!!!!!」


ほのかがくりぬいたであろう一段と大きな岩が2人目掛けて、飛んで来た。


「「ぎゃあああ!」」


 ヘッドスライディングする形で、必死に躱す。

先ほどまで2人が立っていた場所には身の丈を越すような岩盤が立ち塞がっていた。


「こ、殺す気か!あのバカ!」


「なんで、さっきみたいに魔法使わないッキュか!」


「ガッハッハッ!んなもん、ほのかがいたからに決まってんだろ!破魔町の周りの警備は、せいぜい魔力感知のみで、特定はされないんだよ。今、魔法を使ったら一発でわたしだってバレてしまうだろ?」


「あ、まさか!ほのかのせいにするつもりだったのかっ!きゅわっ!」


 次々に飛んでくる岩を必死に避けながら、訴える。赤髪の魔女も冷や汗を浮かべていたが、楽しそうに笑う。


「まだ、女王に見つかる訳にはいかないんでな。私の目的の手がかりもないんだからな。おわっ!」


「なんでっきゅ!昔はあんなに仲良かったっきゅのに!」


「うるせぇ!誰のせいでこうなったと思ってるんだ!!…ガッハッハッ。とはいえ、この状況はまずいな。しゃあねぇ!」


ローブにつなげた茶色い大袋にてを伸ばす。


「ここは水晶玉で、吹っ飛ばす!…あれ?ねぇ!」


大袋の中身は空っぽになっていた。


「なんだとっきゅ!!!」


1人と一匹はお互いを見つめ合い。上から降ってきた大岩に潰された。

 ぎゃあああああああああ



 10分後、水晶玉をぽんぽん投げながらやってきたほのかは阿修羅の顔をしていた。

「さて、泥棒スティールの魔法ってこんな遠距離でも発動するんだね」


 岩の下敷きになっている2人を見つけて、ほくそ笑む。


「お仕置た~いむ♡」

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