第11話 おいしいたぬき鍋を作ろう!やめてっきゅ!目が怖いっきゅ!

 ミッキュを見捨てて、…じゃなかった。涙ながらにお別れして、破魔町に入り、杖を取り出す。ミッキュがいないと、魔法少女になれない。破魔町において、魔法少女だけが、北区以外でも魔法を使っても良い特例がある。今私が魔法を使えば、処罰の対象になる。深く深呼吸をする。


「いま、記憶メモリーしてる魔法は、げ、さっきの不発分も使用回数に入ってるのか」


ほのかの魔法は1度見た魔法をストックしておける魔法だ。但し、容量は決められており、魔法の威力によって、使用量は異なる。


「えっと、…ジャンプが2回、スティールが1回、魔弾が10回、マッスルが5回、創造が2回…。悪の組織との一件でだいぶ容量増えたけど、まだしのびないよな。これで、ミッキュを助けられるかな?」


 そっと胸に手をあて、今までのミッキュとの思い出を振り返る。


「カジキマグロをくわえたそこのきみ魔法少女にならないかッキュ?」

「いくっきゅ、ほのか!街の平和を守るッキュ」

「ぶふっ!ひんそうなおむねきゅ!」

「これがいんたーねっと!みらいだっきゅ!」

「ちっ、魔法少女にするなら、あっちのビッグボインにすればよかったッキュ」

「ぽちっとすれば、商品が届くっきゅ!すげーっきゅ!せいきゅうしょ?よく分からないけどほのかあてにしたッキュ」

「ぐへへ、この姿だといい位置に視点があるッキュ。ほのかもさきみたくもう少し色気あるパンツは履くっきゅ!どえろなカレンみたいなンでもかまわないっきゅ」


 うん、殴ろう。胸に当てた手を握りしめる。いやぁ、おもいいかえしてみるとあの陰獣くずだなぁ。わたしのことをただのウルトラセクシーキュートダイナミック魔法少女としか思っていないモンなぁ。助ける価値はないよなぁ。セクハラはするし、文句は多いし、息は臭いし、足も臭い。あれ、パパかな。わたしにパパはいないのだけれど。


「…のか…」


 か細いミッキュの声が山の方から聞こえてくる。はぁとは言っても今までの一年間キレることはあったけど、楽しいこともいっぱいあったし、まぁ寝つきが悪くなるのも嫌だしな。


「…あの、ばか!」


 あのさちよって子が、魔法使いなのはわかったけど、魔法少女であるかは確定してない。破魔町は魔法国と現代社会との融合都市とはいっても、まだまだ様々な燻りがあるのだ。

 町のヒーローたる魔法少女や魔力の塊である魔法生物は魔法国の最重要事項なのである。変身者や、魔法生物の存在は世間に知られる訳にはいかない。なんとかして、記憶を消さないと。うん、殴ろう。力一杯。


「ほのかのばかぁ…助けろっきゅううう…ほのかの…プリン……イソフラ…キュッボン…」

 

 頭の中で、ワードが連鎖的につながり、顔が赤面するのを感じた。

 あ、やめだ。殺そう。


「フフフフ、…今日は…たぬき鍋じゃあ!!」

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