第9話 友よ


自分で「ぐうたら」と書くくらい、私は面倒臭がりである。

食事を作るのも食べるのも面倒な時は、

「食事代わりの錠剤でもあればいいのに…」などと夢想してしまうし、

緊急事態宣言からこっち、掃除は手抜きし放題で、

ホコリがケセランパサランみたいに家中にふわふわと溜まっているし、

マスクのおかげで化粧にも一層力が入らなくなっている。

ついでに言えば、この夏、サロペットなるものを買ってしまったがために、

下着の手も抜き放題(女子なら意味するところが分かりますよね?男性諸氏には、えーっと……分からなくてもイイですゴメンナサイ)なんである。


そんな私だから、当然のようにSNSなんてやらない。

カクヨムをガチでやってらっしゃる方によくお見受けするTwitterやFacebookなんて

どこの世界の話だか、ってな感じだし、

インスタはかろうじて見るだけのアカウントを割と最近、作っただけだし、

そもそもスマホだって持つのを渋っていたくらいで、

カクヨム登録のアドレスも面倒だからスマホには紐付けしていない。

パソコンオンリーのアドレスだ。

だからパソコンを開くまではカクヨムからの通知も届かない。


正直、なんでカクヨムを始めたんだか、今でもよく分からない。

本当に、物の弾みというか、勢いというか、魔が差したというか……、

どちらにしろ計画的に何か考えてのことでは全くない。

そんな私が曲がりなりにもここで書き始めて100日が過ぎた。


「ぐうたら」を自認する私が、なんで続けられたのか?

書きやすくて使いやすいというのはもちろんだ。

うろうろと探検しがいのある作品が並んでいるというのもある。

でも、それ以上に、ひととの出会いに恵まれたから、

これに尽きる。



読んだことはないけれど、

「ひとは見かけが九割」とか言うタイトルの本があったと記憶する。

それで言うなら、ここ、カクヨムでのお付き合いは、その九割が全くない。

「本を出してます」とか「〇〇賞、最終選考突破」とか、肩書のようなものを書いていらっしゃる方もいるにはいるけれど、ほとんどの方はささやかな自己紹介だけ。

だから、書かれた作品と、レビュー、応援コメント、

どんな方どんな作品をフォローしているか、ということだけが、

その人となりを判断するよすがとなる。


そんな言葉だけのお付き合いが、

ここまで深くつながる仲になるだなんて考えたこともなかった。

容姿も服も持ち物も見えない知らないひとたちと、

お互いが書いたものを読み合い、励まし合い、笑い合い、支え合う。

それがどれだけ強い絆を結ぶのか、この年になるまで全く知らなかった。


新しいこの場での出会いが、突然降りかかってきた苦難をも支えてくれた。

心の中で思いっきり泣いていた私に静かに寄り添ってもらった。

あの時の私にこの場がなかったらと思うと本当にゾッとする。


人見知りではないつもりだ。

おしゃべりだし、話すのも好きだ。

寂しがりだとも思うし、人に会うのも嫌いじゃない。

でも、基本的にはひとりを好む。

皆がワイワイやってる端っこの方で、ひっそりと、

というのが性に合っているように思う。


そんな人間に、この年で、こんな出会いが待っていたなんて。



街ですれ違っても、電車で向かいのシートに座っても、

レストランで隣の席になっても、落としたスマホを拾って渡したとしても、

それがあなただとは分からない。

あなたも私のことだと分からない。

一度パソコンを閉じてしまえば、目の前から消えてしまう、あなた。



それでも、声を大にして言いたい。

友よ、と。


イヤだと言っても呼んでやろうじゃないか。

友よ、と。


イヤならまたいつものように顔を出して、

「困りますよ」とでも何とでも言ってくるといい。


その日まで、友たちと待っているから。


友よ、元気で。

健闘を祈る。

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