第15話 深夜鈍行・2号車/やだーな話


という訳で、今夜もまた、深夜を愛する全てののために愛と平和を祈る

満っつる”コータロー”フェイエノールトの【深夜鈍行】。


今回は、前回イレギュラーな事態が発生したため、話が前後します。

そのため【暗闇の車窓から】とのコラボレーション企画で、話をスイッチバックすることとなりました。


え? 暗闇でなんか何も見えないだろう、って?

あなた、それでもホンモノの”深夜愛好家”ですか?

暗闇にも色々あってですね、真夜中の漆黒はもちろん真っ黒に、夜になりたての暗闇はそれなりに暗闇に、視えるンです(CM提供/ホラーフィルム)。


漆黒の闇は今、京都御所辺りがアツいらしく(CM提供/勝手に満つる)、

その手前の時間帯は歌舞伎町の独壇場だそうですが(CM提供/「ホスト○葉集」)、コレは制限解除された割に意外な展開ですね。

内藤陳氏も草葉の陰から泣いているかもしれません。+1も出来ないのかよー!と。


……ああ、ここでも軌道修正が必要になりそうなので、そろそろ本題に戻しましょう……。




❖❖❖❖



さて。週明け。

市役所から依頼を受けて、害獣駆除業者さんがやってきました。


「早速ですが。柿の木はどちらですか?」

「あー、そこの車の後ろです」

「……なるほどぉ」

40代と思しきテキパキとした男性は、木を見て、家を一瞥した後、

「柿、食べてます?」

唐突に聞いてきました。

「……はい。食べてます」

「木、切る気はありますか?」

「や、それは……、」

「一番手っ取り早いのは、この場合、切っちゃうコトでしょうけどね」

朗らかに言いながら、トラックの荷台からパパッと捕獲檻を1台下ろしました。


「コレね、これが捕獲檻なんだけど。地上設置しかできないんですよ」

「ああ。はい。市役所の方から聞いてます」

「で、見るところ、木の根元に置くのが一番かなあ、と」

「……はい」

「家に棲み着いた場合、家の凹凸や樋なんかを使った侵入ルートが割と分かりやすいんで、ルート上に設置するとかかる確率、高いんです。一度かかった所に置き直すとまた捕獲できることもあるくらいなんですが。今回コレだと、ちょっと、ね」

サバサバとした笑顔で説明してくれます。


「……何度もかかる、って、うぅん……、棲み着かれるとどんな感じなんですか?」

「ああ。いや、ずっといると決まった訳でもないんですよ。行動範囲が広いんで、何日かいたかと思うと移動して何ヶ月も戻ってこないとかザラで。エサを求めて転々としていってまた戻ってくる、って感じですかね」

「どれくらいの穴で侵入されちゃうもんなんですか?」

「手の甲をすぼめたくらいなんですが、なにせ体がめちゃくちゃ柔らかいんで、角度的に無理だろうと思われる場所でも穴さえあれば入っちゃいますね」

こんな向きでもあんな向きでもイケちゃうんですよ、と業者さんは楽しそうに手の甲の向きを変えてみせます。

なんか手の体操みたいです……。


「それでね、エサをネットに入れて檻のここに吊るしてください。エサはリンゴとバナナ」

「え? 柿、食べに来てるんだから、柿、入れるんじゃないんですか?」

「好物なんですよ。リンゴとバナナ。ハクビシンとアライグマの」

「……分かりました」

「で、だいたい4日前後でバナナはダメになると思うんで、定期的に取り替えてください。ただし、土日は我々休みなんで、仮にかかっても回収に来られません。なので金曜の朝、かかってなかったら、エサを外して檻の入り口を閉めてください。万一週末にかかって中で死んじゃうと、ルール違反で面倒なことになりますんで、必ず守ってくださいね」

「面倒なこと、とは?」

「生け捕りでないとダメなんです。死んでると処理が変わるもんで。違反すると役所からペナルティくらうかもしれませんよ? あ、あと、万一、猫とかタヌキとか他の生き物がかかった時は逃してください」


「え? 猫はともかく、タヌキでも逃がすんですか!?」

「はい。タヌキはまた捕獲檻が違うんですよ。申請も別なんでね。コレはハクビシンとアライグマ専用なんで、かかってもこちらで処理できないんです。なので逃がしてもらう、と。逃がす時は危ないんで、入り口に正対しないで横に向けて、逃げやすいようにしてあげてください。正面で開けちゃうと体に突進してきてケガしますよ?」

「……あ、はい……」


「金曜の朝、閉めた檻を日曜の夕方、エサを入れて開けます。繰り返しますがバナナとリンゴですよ? 間違えても魚肉ソーセージは入れないでね。あれ、猫の好物だから。毎朝檻を見て、かかってた場合は朝の8時から9時の間に電話してください。回収に来ますんで」

「……なんだか、かかっても、かかってなくても、怖くなってきました……」

ハハハ。

明るく笑った業者さんは、その後、檻の取り扱い方を実地レクチャーしてくれ、資料と一緒に「何かあったら」と名刺を手渡すと、車に乗り込みあっという間に去っていきました。




まさか、ですね、働き方改革とはいえ、害獣駆除に土日休みがあるとは思いませんでした。それならハクビシンやアライグマにも土日は出るなと言ってほしいです。


そして。

檻を閉めていた土曜の夜に、前回の事件は起きたのでした……。




❖❖❖❖



やれやれ。

昔はこの【暗闇の車窓から】もね、休みなんてなくって毎日放映してたんですよ?

もちろん土曜も日曜も、です。

それが今じゃ、月曜と火曜だけですからね?

……って、今夜はコラボなんで、特別にお送りできてるワケなんですが、ね。



ちゃら、ららっら、らーらーらーらーらー♪


深夜とは言え、暗くないBGMでお送りしました今夜の

満っつる”コータロー”フェイエノールトの【深夜鈍行】&【暗闇の車窓から】。


台風だからどうせ来ないでしょ、と横着して、

エサも檻の入り口もそのまんまで、今夜はお別れします。



出るなよ!!










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る