第16話 深夜鈍行・3号車/はいくーな話


すっかり冷え込んできました、秋の夜長。

今夜もまた、深夜をさすらうにそっと寄り添う

満っつる”コータロー”フェイエノールトの【深夜鈍行】。




今月は「柿」の話を特集してお送りしていますが、

柿、と言えば


「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」 正岡子規


日本人の大半がそらで言えることと思われる、こちらの句。

胃に染み入る名句ですねえ。

なんですか、こう、しみじみと腹が減ってきます。


「閑さや胃に染み入る柿の声」


なんて句もありましたっけね。

え? ない? 変だな、記憶違いですかね? 

ま、気にしないでいきましょう。


「柿が赤くなると医者が青くなる」

なんてことわざもあるくらい柿はビタミン豊富で健康に良いようですが、

果糖も多いそうなので食べすぎには気をつけた方がいいかもしれません。

もちろん、深夜の間食は”デブの素”。

麗しいであり続けたいなら、

この番組を聞きながらのつまみ食いはおすすめ致しかねます。

そうですね、今の季節ですと

桂花陳酒を嗜むくらいがよろしいのではないでしょうか。




ところで。

今、突然思い立ったのですが。

今夜の放送中、リスナーの皆様から俳句を募集してみようかな、と。

そうして集まった句を、放送の終わりにまとめてご紹介させて頂く。

お題はズバリ、「柿」。

秋の深夜に風流な試みかと思ったのですが、いかがでしょうか?

集まらなかったらしらばっくれてそのまま終了しますので、お気になさらず。


え?

お題が「柿」では、かえってうっかり何かつまんでしまいそうですって?

ダメですよ。これしきのことガマンできないようでは、暗闇の中、

木に登って目を光らせつつ食べている、アレらと同じ生き物になってしまいますよ?

あの手この手で襲ってくる食欲の波を乗りこなしつつ、

一句でも番組までお送り頂けましたら幸いです。




では、今夜も【深夜鈍行】が出発します……。




❖❖❖❖




さて。

今夜は、ぐうたら市役所の環境創造局局長様と、委託業者の人外サービス様にスタジオまでお越し頂きました。

えー、こんな夜中にバナナ持参でご足労頂きありがとうございます。

早速ですが、お話、よろしくお願いします。


「今回、役所からは深夜手当なんて出ないんですが、啓発事業の一環ということで、特別にお話させてもらいますね。あ、手当出ないんで、市役所からそのまんま来てるんで、小腹が減ってるんで、そこの柿、食べてもいいですかね?」


ああ、どうぞどうぞ。たくさん剥きますので遠慮なく。


「じゃ、早速。……、あ、コレ、甘いっすね?

こんなのタダで食べてるのかあ。ハクビシンもアライグマもよく知ってるよなあ」


……そんなコト感心しなくていいですから。お話を。


「あ、失礼。……ん、んぐんぐ。む、はーっ……。

では、えーっと。

野生動物は嗅覚が鋭いんで、忌避剤として塩素系漂白剤をオススメしています。いわゆる”ハイター”ってヤツですね。あとは木酢液や唐辛子エキス。使い捨てできるプラスチック製カップなどに入れて、地面に置くだけです。安くて簡単に入手できるのが利点です。ただ、屋根の上にはこの方法は使えないんですよね。まあ、出来て、布などに染み込ませて樋にかけるくらいかなあ。風で飛ばされることを考えると、あまりオススメはできないんだけど。

屋根伝いに来られると、正直、できることが、ねぇ?」

「我々捕獲業者が設置する捕獲檻も、屋根の上には置けません。地上設置です」


……てっきり遺留物(糞)を見ていかれるのかと思って、証拠保全に努めていた(単に自分で片付けたくなかったとも言う)んですが。で、2階からでないと屋根の上が見られないことに気づいて、慌てて家宅捜索(家の掃除)したんですが……


「アハハ。別に見ませんよワザワザ」


……そうなんですね。

檻を設置してもらった後、仕方なく現場保全解除(糞の片付け)しましたけれど、果物や野菜メインな食事らしく、からからに乾いていたのと相まって、バナナ型グラノーラみたいでした……


「アハハ。資料にも書いてありますけれど、家に侵入された場合の補修作業や糞などの始末、消毒などは、僕ら捕獲業者は行いません」

「市の事業費にも含まれません」


……そうなんですか。

今回の被害は柿でしたが、他にはどのような?


「果実の他に、家庭菜園の野菜。それから池の金魚なんかも食べますよ」


……金魚、「ネコに食べられた」って話を聞いたことがありますが。


「ああ、もしかしたら違うかもしれないですね。それからネコや犬のエサも食べるんで、夜間のエサの出しっぱなしはNGです」

「当市の捕獲対象はハクビシン、アライグマ、タイワンリスだけです。『4大害獣』としてアライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマが資料には掲載してあるんですが、タヌキやアナグマがかかっても対象外なんで、よろしく。

もちろんネコはハナから対象外ですので、よろしく」


……「よろしく」と言われても……。犯人を捕まえても、想定していた犯人と違うのが捕まったら逃がすだなんて、被害者の気持ちはどうなるんですか?

誤認逮捕じゃないのに逃がすんですか??


「ま、ソコはオトナの事情ということで、忖度よろしく」

「それから捕獲檻の設置は原則2週間となっていますので、ご理解の程よろしく」


……”犯人は犯行現場に戻ってくる”とよく言われますが、実際、戻ってきたにもかかわらず土曜日で捕獲檻は閉鎖中でした。それでも2週間でお終いなんですか?


「うーん。まあ、あくまでも”原則”なんで、今回既に過ぎてますけど柿もまだあるようですし、連絡は来週以降にします」

「お話し中、申し訳ないんですが、少しお腹が空いてきたんで僕も柿、頂きます。

……あ、ホントだ。甘いですねえ」

「ねえ。夜中に甘いモノって悪くないですねえ?」


……気のせいですかね? さっきからお2人の後ろに、尻尾みたいなモノが見える気がするんですが……


「そりゃ気のせいに決まってるじゃないですか」

「でなければ老眼、とか」

「さもなければ幻覚ですかね?」

「ああ、タヌキならぬアライグマに騙されてるんじゃないですか?」

「そうだ、そうだ。きっとそうです」


……も、なんだか急に眠くて眠くて……、ヘンだなあ、何もかもどうでも良くなってきましたよ……




❖❖❖❖





突然の無茶振りにもかかわらず、

この短い番組の間に句を作って送ってくださった方々がいらっしゃいました!

皆さん、どうもありがとうございました。

ここでまとめてご紹介させて頂きます。



「チョコに柿食い合わせなぞ知るものか」   森永製薬様

「足跡に星降るのるふ夜に柿」        アル日ーフ様

「カレールー柿はやっぱりチャツネだね♪」 しゃーしぃ様

「夕暮れ時幻想の柿喰らいつつ」       へんてこりん店主様 

「柿は深緑じゃない橙だっぴ」      プランクトン様

「夜更けて柿食ってもひとり」      R指定様

「妻子へと花と柿持ち爆走す」      R134機長様

「レコードに針を落として柿ひとつ」   マダム京子様

「ゆるゆると名前も知らない柿を喰む」  ごんべえ様

「柿食うな糞も許さじそこのケモノめ」  みっちゃん様



どの句も書き手の個性が感じられる気がしますが、気のせいですかね。

ご参加頂いた方々には、番組特製、満っつる印の「柿の葉一筆箋」をお送りします。

♡がこちらに届き次第、発送予定ですので、楽しみにお待ちください。


最後に。

この企画、全くの思いつきでしたので、

ご批判、ご要望、ご感想などなどございましたら遠慮なくお送りください。

次回の開催は全くの未定ですが、

万一ご希望が多いようであれば前向きに検討したいと思います。

反対に、顔出しNGの方がいらっしゃいましたら、

モザイク処理もできますのでご相談ください。


ほら、そこのあなた。

ダメでしょう、柿の木になんか隠れてちゃあ。

PVの影に隠れる必要もないんですよ?

このバカバカしい企画は今回の番組の間だけの期間限定なので、

次回までに♡を押して奮ってご参加を。

ぬるく急いでお待ちしております……。






※参加賞の「柿の葉一筆箋」ですが、番組終了後1分以内の♡到着分のみ有効です。それ以降に♡が届きましてもお送り致しかねますので、ご了承ください。

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