第36話 PCR検査受けてみた件/検査後



検査の説明を受け、代わりに大きな紙袋を受け取って、私と友人は会場を後にしました。会場から離れてスタッフが見えなくなったあたりで、友人がボソッとひと言。


「『採取前1時間は飲食禁止』って説明聞いたら面倒になっちゃって、一瞬やるのやめようかと思ったよ」


「え? そんなこと何も言われなかったけど?」

寝耳に水発言に動揺する私。


「中のマニュアルにも書いてあるって言ってた」


「ウソぉ。それも聞いてない。でも、じゃあ、家に帰ってからゆっくり読むかあ」



私の担当者さんは大学生くらいに見えた若いお嬢さんで、たどたどしさ全開でしたが、友人はずいぶんしっかりとした説明を受けたらしく、その違いに思わず苦笑いです。まあ登録しちゃったからやるっきゃないねと言い合って、その場はそれでおしまい。続きは帰宅後です。



🏠 🏠 🏠 🏠



夜、落ち着いてから、マニュアルを開きました。

「はじめに」と書かれた一番最初のページの一番下にピンク色の囲み欄があり、検査の注意点が5項目並んでいます。見ると、ちょうど真ん中でいちばん目立つ3番目の項目として、


『唾液採取する1時間前から水以外の飲食や喫煙、歯磨きやマウスウォッシュを行わないようにしてください』


と書かれているではありませんか。しかもゴシック体の太い黒文字の上から、ご丁寧にも黄色のマーカーまで引かれています。この処理が施されているのは、1番上の


『採取日の登録を行った上で、当日に唾液を採取すること』


との2点だけでした。

やれやれ、と思いながら、他のページにもざっと目を通します。

以下、


②当日の段取り

③結果の確認

④唾液採取日の変更・再登録方法

⑤アプリのその他の利用について

⑥Q&A


と章立てされていました。

とりあえず②を読むと、採取する前にアプリを立ち上げ、マニュアルに従って進めるようにとのこと。当日の一連の流れがイラストと写真付きで分かりやすく説明されていたので、これならまず間違えないだろうと、読んで一安心です。

ちなみに私は非喫煙者ですが、1時間喫煙を我慢するのが辛いヘビースモーカーさんも中にはいそうだな、なんてことを思いました。



📮 📮 📮 📮



検査当日。

注意に従い、飲まず食わずで1時間。アプリとマニュアルを並べて、採取開始です。


唾液採取キットをプラスチック製ケースから取り出し、漏斗ろうとから唾液を入れます。容器には黒い線が表示されていて、その線まで唾液を入れるようにとの指示。ツバを吐くなんてこと普段はまずしませんから、ペッ、とわざわざ出すのは実に妙な気分です。

そして、なんということでしょう。ツバは一度では全然足りないのでした。

これにはいささか焦りました。何度もツバを吐くなんてこと、それこそ未経験ですからね。とにかく必死でペッ、ペッと繰り返し、何度目だったかは忘れましたが、片手ではきかなくて両手では余るくらいの回数を繰り返してようやく線を越えた時には、正直ホッとしました。


無事に唾液を採取したら容器から漏斗ろうとを取り外し、代わりにフタをしっかりと締めます。その後は前回書いた段取りでもって検体を梱包、箱に伝票を貼っていざ郵便局へ。外した漏斗ろうとはプラゴミ扱いです。

アプリでは『検査開始』という項目をタップして、QRコードシールの下に記された管理番号を入力すると、以後『結果待ち/通常数日後に通知』と表記が変わります。

後は結果が届くのを待つのみ。




📱 📱 📱 📱



さて。

アプリ上では「数日後に通知」と書かれていた結果が、なんと翌日に判明しました。

検査翌日の夜、「先日のPCR検査の結果がご確認可能となりました」とショートメールが届いたのです。驚きのスピードです。


早速、ショートメールの指示に従ってアプリを開き、トップ画面から「結果確認」の項目へ。タップしたその先には、採取日と名前、管理番号の下に


『検査結果/陰性(ウイルス検出限度以下)』


と白い欄にふつうの文字で書かれていました。

今回の検査ではと判明した訳です。

これが陽性の場合だと、


『陽性疑い(ウイルス検出)Ct値◯◯』


文字で表記されるとマニュアルにはあります。陽性疑いとなった時は、検査結果説明ページに提携医療機関が掲載されているので、そちらで受診可能ということでした。

やれやれ。これにて無事に終了です。お疲れ様でした。




✒ ✒ ✒ ✒




ここで、振り返っての感想を。


①検査自体はカンタンである。

ぶっちゃけツバを吐くだけですからね。吐いたツバを入れるのもカンタンです。

結果が分かるのも検査翌日と早かったです。



②でも、面倒臭い。

例えばインフルエンザかどうかを病院で検査する時。

問診後、鼻の奥にスーパーロング綿棒みたいなのを突っ込まれて「おお、痛っ!」と文句を言いそうになるのを涙目でこらえればいいだけです(とは言えアレは本当に痛いですよね?)。

今回はどこも痛くない代わり、検体を自分で梱包しなくちゃならないわ、それがいい加減だとアウトだわ、検査予約と抗体を送るのも自分で申し込み、挙げ句、郵便局まで持ち込みしなきゃならないわ。

ね? ひとり病院状態&検査機関の検体回収スタッフまで兼任してる訳ですよ。メルカリで商品を売る時にもよく似ていますね。これは面倒臭くて当然でしょう。でも、今回は無症状者を対象としたスクリーニング検査でですからね。そこが大きな声で文句を言えない理由ですかね。



③唾液を取るのは高齢者や小さい子供には大変そう。

何回かツバを吐いて、私はそれでようやく必要量を満たしました。ツバは割と出る方だったので、出なくて困ったりはしませんでした。

でもね、高齢者が1時間も水分を口にせず、唾液を一定量出すのはしんどいんじゃないんでしょうかね。特に夏場は。これから暑くなりますから、そういう時には検査をするだけでも一苦労しそうだなと思った次第です。


というのも以前、歯医者さんで言われたんですよ。

「唾液は年を取ると出にくくなっていくんだよ。たくさん出るのは健康で若い証拠」と。実際、テレビなどでも高齢者の熱中症対策としてよく言われていますよね。のどが乾いてから水分を取るのではなく、30分単位くらいでちょくちょく飲み物を口にするように、って。それくらいお年寄りは色々なセンサーが働きにくく、そのことを自覚しにくくもなっています。ですから検査を受けた後は、くれぐれも水分をたくさん摂ってほしいな、と思いました。


小さいお子さんも同様です。体が小さいぶんだけ、ツバも少ないんじゃないかなあ。しかも夏場は水分を摂るのを我慢させるのにも苦労しそうです。検査を受けるなら、ジュースや水分多め(例えばスイカとかゼリーとか)のご褒美を用意しておくのも手でしょうかね。



④スマホをある程度使えないと辛い。

これもほぼ高齢者とイコールかと。今回の受付会場でも、スマホでアプリをダウンロードしたりQRコードを読み取ったりすると説明を受けた時点で、諦めて帰られる年配の方をお見受けしました。


高齢者の皆さんの多くがスマホは持ってるんですよね。でも、使いこなせているかというと、それはまた別問題です。どなたか家族の方が諸々を引き受けてくれるならともかく(だからスマホでの登録人数が複数可能だったのでしょう)、最初から最後まで全部ご自身でできる高齢者がどれくらいいらっしゃるでしょうか。

そう考えると、一人暮らしや高齢者だけの世帯の方は、こういう場に偶然出くわしたとしてもその機会を利用するのは難しいだろうなあと思いました。ちなみに後期高齢者である私の母もスマホは持っていますが、この手のことは全くできません。


⑤市販の検査キットに注意。

現在、PCR検査キットは、ドラッグストアやインターネット上でも購入できるそうです。ですから気になる時は、市販品を購入して検査を受ける選択肢もある訳です。実際、心配だからという理由だけで病院で検査を受けるのは現実的ではないので、病院で検査を受けない受けられない時の受け皿としても有効かとは思います。そんな時に大まかな流れを把握するのにでも今回のこの話が役立つなら嬉しいです。


ただし、市販されている商品の中でも「研究用」と称される製品は、厚労省によると「国が認めた体外診断用医薬品ではない」のだとか。なのでこれらを使って自己判断しないように、という注意喚起情報が発表されています。

また、そうした製品でなくても、検査結果はあくまでその時点での結果でしかありません。陰性結果に気を緩めてしまっては元も子もなくなります。引き続き気をつけて生活していくことを心がけていたいです。



📱 📱 📱 📱



検査結果が出た翌日だったか。実家の弟から電話がありました。母宛てにようやく『ワクチン接種申し込み案内』が届いた、と。

あまりのタイミングの良さに思わずびっくりです。と言っても、母は後期高齢者、そろそろ来るはずのお便りではありました。



ということで、次回はGW後半、

「ワクチン接種申し込んでみた件(ただし自分ではない)」

に続きます(予定)。


引きが書けないことで定評のあるこの私が、珍しく引きを作ってみました。

しかもエッセイで……。

こんな珍しいことはそうそうないと思われますので(←をぃ、自分で言うな、自分で)、引き続き読んで頂けたらありがたいです。


では、皆様のGWが健やかなものでありますよう祈りながら、次回また。



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