第46話 新聞


新聞が好きです。

どれくらい好きかって言うと、授乳中、片手で息子を抱きながら新聞を読んでいて(だってゆっくり読める時間がほとんどなかったんだもの)、突然差し入れに来てくれた母に見られて呆れられたくらい。

出産、子供の入院の付き添いなどを含め10回ほどの入院中は必ず、新聞を毎日のように差し入れしてもらってたくらい。

読めなかった時期もあるにはあるのだけれど、私にとってとにかくないと困るもの、そのひとつが新聞なんです。


なのですが。

実は去年の暮れからほとんど読めなくなっていました。単純に時間がなかっただけです。後で時間が出来た時にまとめて読めばいいやと思って、お気楽に部屋の隅に積んでおきました。それが、どういう訳かさっぱり分かりませんが、気づけば山がいくつも出来てしまっていたのです。

山が増えるにつれ、掃除する意欲は反比例して失せていきました。おかげで山は、津軽海峡も真っ青なほこりまみれの冬景色です。

これでは片付けないことにかけては定評のある次男を叱るにも、まるで説得力がありません。なので、片付けろ、とはどんどん言いづらくなります。いや、それはもちろん最低限は言うんですけどね。こうして家の中はさらに惨状を極めていったのです。


見かねた長男がある日、私に言いました。

「往生際が悪いんじゃない?」と。

「いやいや、読みます。読むんですって」と焦る私。

「だって、これ、いつのだよ? そんな古い情報、読む価値あるの?」

「そりゃ足の早いネタは仕方ないけど、でも、新聞記事はそれだけじゃないんだよ?」

「だからって、これだけ溜めたらとてもじゃないけど全部なんて読めないと思うけど」

「諦めません私は!」

「だったらいい加減、早く読んでよ。じゃないと、家の中があんまりだ」


分かってます。いつまでも新聞を積んどくわけにはいかないってことくらい。

いつかは片付けなきゃいけないってことくらい。

いつかは。ええ、いつかは。

じゃあ、いつやるの? って話ですね。


分かりました。分かりましたよ。

今、やればいいんでしょ?


仕方なく? この前から読み始めました。山と積まれた新聞を。


しかしね、なんで今頃、マラドーナへの追悼文、読んでるんだ?

なんで今頃、共テのデータ見てるんだ?

なんで今頃、鳥インフルの数字見てるんだ?

なんで今頃……。


あまりの自分のアホさ加減に、気付けば読みながらてへへと笑っていました。

床に座ってストレッチしつつ、奇妙な笑みを浮かべて新聞の山を取り崩している母親を見た長男が、呆れたようにひと言。

「ほんとに読んでる」


だって、私、往生際が悪いんだもの。

もちろん、テレビでニュース見てたから、記事の大半は知っていることな訳で、その分、読まなきゃ、って思う記事は限られてるんだけど。全く読んでなかったかというとそういう訳でもないんだけど。それでもハンパない量。


かなり、がんばりました。山は減りました。

それでもまだまだ残っています。

今、五合目は越えて、六合目? 七合目あたり??



そんな訳で、今年の夏は富士山登山、ならぬ、新聞山登山をしています。

登りきった暁には冬景色も解消されるはずです。

いやぁ、なんて夏らしい!

皆様はどんな夏をお過ごしでしょうか?


新聞山の山中から、

残暑お見舞い申し上げます。

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