第45話 おんなのバッグ



荷物は極力持ちたくない派です。なるたけ身軽がいいのです。箸より重いものは本来ならノーサンキューです。

近所にちょいと、って時は、ジーンズの左右のお尻ポケットにカギとスマホを、前のポケットには財布を入れ、手ぶらで出かけたりしていました。

、と過去形なのは、最近スマホを大きいのに変えたから。

老眼のせいで小さい画面がしんどくなり、つい誘惑に負けて大きいのに変えてしまったのです。変えたおかげで見やすくなり目にも優しいのですが、お尻ポケットに入れて歩くには滑り落としそうで怖いサイズなのでした。一応、入るには入るんですけどね。




そんなワケで、どんなに近くてもバッグを持たねばならなくなりました。

荷物は持ちたくない派ですから、近場用にぴったりの小ぶりなものは元々いくつか持っていました。

それとは別に、この間、大きいバッグも地味に増えていたのです。

これには当然、理由があります。

多くのひとがそうなったであろう最も分かりやすい理由は、レジ袋有料化。エコバッグももちろん持っていますが、使う度に広げたり畳んだりするのは面倒ですし、始めから大きいバックを持っていればエコバッグ忘れてもなんとかなりますしね。

でも、理由はそれだけではありません。



荷物を持ちたくない派ですが、夏場は意外と荷物が多くなるんです。

ひとつめの理由は『外は暑いのに中は寒い』問題。エアコンが効いているところに長くいると冷えるけれど、一歩外に出れば炎天下。こんな時、羽織物やストールなどで調節しますが、使わない時に手で持って歩くのは暑苦しいし、うっかり置き忘れもしやすい。なので私は大きいバッグにぽいぽい突っ込んでいきます。

同じく帽子。こちらも建物内に入ると脱ぐので、ぽいぽい。突然の雨が多い昨今、折り畳み傘の出番も増えました。もちろん夏場は飲み物はマスト。日焼け止めや制汗剤も持っていると安心です。


ほら。気付けばこんなに荷物がいっぱい。

だからといって、小さいバッグは持たないかというとそんなことは全くありません。なぜでしょう。理由は簡単。大きいバッグだと中身が迷子になりがちなので、小さいバッグを仕分け用のバッグインバッグとして使うのです。

貴重品だけ持って歩きたい時にもバッグインバッグは便利です。例えばひとりで飲食店に入った時。トイレなどのため席を外すのに、大きいバックだけ座席に残しておけば座席キープできますし、余計なものをトイレに持ち込まずに済みます。旅行中も何かと役立ちます。

荷物が増えた時、小さいバッグを取り出してふたつ持ちにすれば、その分、大きいバッグの中のスペースが確保できるのもありがたいです。


もちろん冬場だって、今度は『外は寒いのに中は暑い』問題に変わるだけで、事情はさして変わりません。


ということは。

近頃では通年、大きいバッグの出番が多いのです。っていうか、必要なんです。

そして同じくらいかそれ以上に、小さいバッグも。

少なくとも女性には(男性事情は残念ながら私には分かりません)。



もちろん、これ以外にも、大きいバッグには世代的なニーズもあるでしょう。

赤ちゃんがいるおかあさんのためには、その名の通り『マザーズバッグ』があります(赤ちゃんのおむつ替え用シートが共布でセットアップされていたり、おむつや母子手帳を入れる仕切りがあったりと色々な工夫がされている)。

赤ちゃんでなくても小さい子供がいるうちは、バンドエイドやアメなどは必需品でしたし、オモチャや絵本などもよく持ち歩いていました。それこそ着替えだって。

高齢者になったらなったで、薬や病院の診察券などがいつも入っているとのこと。老眼鏡も必要ですね。それからアメ。唾液が出にくくなる分、アメをなめるといいのだと聞いたことがあります。薬を飲むためか、熱中症対策か、いつも飲み物を持ち歩くひとも増えているそうです。

今だったらウェットティッシュや予備のマスクなどは、年代問わず持っているひと、多そうです。




という訳で、女性のバッグは、大きいものから小さいものまで各種取り揃えておくことが肝要なのです。

これは何もぜいたくを言っているわけではありませんよ? 

女性は一歩家の外に出たら、それこそ7件のトラブルに見舞われても対処できるようにしておかないといけないのです。

あ、まだ他にあったな。

すてき且つ有能なバッグは持ち主の七難を隠してくれるからです。

あれあれ、それだけじゃなかったな。

一歩外に出たら7人の敵がいるから、身を守るための道具を持ち歩く必要もあるんです。




そんなこんなで、バッグ、もとい、話が大きくなってしまいました。

『風呂敷を広げる』って言葉がありますが、これは私にとってはもはや『大きいバッグを持つ』と言い換えてもいいかもしれません。



滴る(冷や)汗を拭いたタオルハンカチも大きなバッグの中にぽいっと投げ入れて、

どうせなら「おんなのバッグの中には宇宙が入っている」ってくらい大きなことを言ってみたい、やけくそ気味な私なのでした。


(つい気が大きくなって、バーゲンでバッグを買ってしまったせいではないことだけはお断りしておきます。ええ、ホントです……。)




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