第34話 深夜鈍行 再び/謎解きは毒餌のあとで



いきなりですが、タイトルにはルビふれないんですよね。ふりたかったのにふれなくって、いささか残念なスタートです。


いよいよGW。本来なら楽しいお出かけシーズンのはずが、外出しにくい今日この頃。家に籠もっているうちにうっかり昼寝してしまって、その分、夜更しがすぎるそこのあなた。そんなあなたの深夜の伴走者、幻のブルートレイン、満っつる”コータロー”フェイエノールトの【深夜鈍行】の時間です。


おかげさまで前回、無事に事件解決となりました。

早期解決を応援して下さった皆様、本当にありがとうございました。


今回の『再び』シリーズは、Season1のアライグマよりも身近な生き物による事件でした。しかも前回同様こちらも近年増加中とのこと。

そこで最終回の今夜は、駆除を担当して下さったチューガイシステム株式会社のS氏に今一度ご搭乗頂き、チュー害についてのお話をして頂こうと思います。


では、早速、インタビュアーのカサマさん。よろしくお願いします。




❖❖❖❖




──はい。こちら、カサマです。

Sさん、本日もお世話になります。どうぞよろしくお願いします。

早速ですが、その後、体調はいかがですか?


「鳥インフルエンザも終わったんで、安心して休めるようになりました。ただ、今年は暖かくなるのが早いんで、このまま一気に暑くなるとさらに忙しくなるんで、ちょっとまた心配になっています」


──暑くなると、忙しくなるんですか?


「はい。そうなんです。

実は私どもの会社、夏が繁忙期でして。冬場はどちらかというとオフシーズンなんですよ。ネズミ駆除に関しては冬場がメインなんですが」


──ということは、ネズミ駆除はメインの仕事ではない、と?


「ぶっちゃけ、そうなりますかね。いえ、もちろんネズミ駆除の依頼が少ないということでは決してないんです。はっきり言って依頼件数は増えています。

ただ、それ以上に夏場のチューガイ=虫害、が多いので」


──あ、社名の”チューガイ”って、ネズミの『Choo』 ではなくって、昆の『チュー』だったんですか?


「ははは。両方ですよ、両方。

春から夏にかけてはゴキブリ、蚊、ハエからダニ、ハチなど、多種多様なの活動時期なので、そちらの駆除依頼数が多いんです」


──ネズミ駆除はなぜ冬がメインなんですかね?


「外で暮らしていたのが、寒くなるにつれ屋内に潜り込み出すからでしょう。例年、11月くらいから依頼件数が増え始めます。

こういった生態に関する詳しいデータや、家に侵入してくるネズミの種類とその特長、侵入を防ぐための対策などは、分かりやすい良い資料が出ていますので、最後にご紹介しておきますね。こちらの資料、高齢化社会の歪みも浮かび上がっていて、読み応え十分です。チュー害とは無関係の方でも興味深い話かと思いますので、よかったらぜひ」


──ありがとうございます。

では、そういう話は参考資料を読んで頂くこととして、こちらでは割愛させて頂きます。その分、こぼれ話的なことをお聞かせ頂きましょうか。


「そうですね、”こぼれ話”と改めて聞かれると困っちゃうんですけど。


今回の建物は古いので、弱点としてそこをつかれて侵入されましたけれど、古いからダメという訳ではありません。

新築でも施工が甘かったために侵入された家がありました。ごくふつうの建て売りです。また、賃貸物件ですが、下水管の施工不良のせいでそこからドブネズミに侵入されたケースもありました。こういう場合、住人にできることはありません。気付くのも難しいです」


──それは怖いですねえ。そう言えば、2階から侵入する可能性、あれはどうなんでしょう?


「もちろんそういうケースもありますが、地面に近い所からの侵入の方がやはり一般的ですね。なので、入られるのが怖いからと言って、樹木や蔓性植物を必要以上に切らなくてもいいのではないかと個人的には思っています。実際に上から侵入されたのなら話は別ですが」


──植物と言えば、実がなる木や家庭菜園は危険ですよね?


「そうなんです。被害が続くと、やめたくなる、切りたくなる気持ちになると思います。エサになるものがなければ、動物を呼び寄せるリスクが格段に下がるのは確かなので。万一、棲み着かれて繁殖して増えると、自分の家だけでなくご近所さんにも迷惑がかかりますから、気にするのも当然です。

ですが、育てて食べることを楽しみにしている方が多いのも事実ですよね。コロナ下の今、癒やしとして楽しんでいる方たちも多いそうですし。実際、土いじりはセラピーとしての効果もあるそうですし。

そのあたり、線引きが本当に難しいとは思います」


──広い庭があるにもかかわらずほぼ植物を植えず、砂と石メインにしている知人宅を知っていますが。


「”チュー害”という観点からすると、安全対策として適切です。植物がなければ虫も動物もほとんど来ないと思いますから。落ち葉やチュー害でのご近所トラブルもなく、何より手入れがラクでしょうね」


──そうなんですよ。忙しくて庭木の手入れなんてしてられないと言ってましたね。それにお金もかからない、と。


「おっしゃる通り、植物の維持管理には手間と時間とお金がかかります。楽しめる余裕がないと厳しいですよね。それに、今回のようにねずみに侵入された場合、駆除にかかる費用は自己負担です。ドラッグストアなどで対策グッズなどを購入してご自身で戦う場合にも、それなりの金額はかかると思います」


──そう言えば、色々な種類の捕獲用商品が市販されているのにはビックリしました。今までは縁がなかったんで視界に入ってなかっただけだとは思うんですが。それにしても本当に色々ありますねえ。


「はい。今回、使った粘着シートも類似商品が市販されていますし、毒餌も出ています。ただし、毒餌は今回、市販タイプの物だけ食べませんでしたよね? そういう意味でもネズミ、特に今回のクマネズミは学習能力が高いんです。ですからご自身で戦うのもアリ🐜ですが、うまくいかない時は早めに我々プロに任せることも考えてもらうといいかと思います」


──その賢さ、どこかの誰かに欲し……あ、つい口が滑っ……失礼しました。

ところでモウ一点🐮、教えて頂きたかったことがあるんです。壁の断熱材なんですが。今回の場合、通常よく見るパネル状タイプの施工でしたが、近頃は吹付けの発泡ウレタンフォームなんかも見かけます。ああいうのだとネズミは侵入できないんでしょうか?


「いえ、残念ながら入れる隙間さえあれば関係ないです。発泡ウレタンフォームも時間が経つと少しずつ痩せてくるようなので、新築後すぐはなくとも築年数が経過すれば入られる可能性は出てきます。動物が侵入しやすい家、というのはたしかにあるんですけれども」


──それはどんな家ですか?


「凹凸がある家です。例えば、1階と2階の床面積が違う家。1階だけしか屋根がない部分があれば、そこを足場にして上に登るのが容易になりますよね。エアコンの屋外機や排水ホースなども足場になりますし。

逆に、真四角の箱状の家だと、足がかりになるのは樋やバルコニー、テラスくらいしかなくなりますから、入りにくくなるはずです」


──なるほど。その話、泥棒が入りやすい家とも被ってますね?


「そうです、そうです。泥棒と同じです。家の周りに物を置くな、っていうのも同じです。物があるとそれを使えたりしますからね。木材や段ボールなどが家の外に置いてあると、時に放火の原因になったりしますが、動物にとっては巣になったり巣作りの材料になります」


──まとめると、家の形はシンプルに。家の周りもシンプルに。こんな感じですかね?


「まさしくそういうことです。ミニマリストがいいと言っている訳ではありませんが、ヘンなものを呼び込まないためには、家も庭も家の周りもきれいにして暮らすのは大切かと。

付け加えるなら、凹凸のないシンプルな家の方が、壁や屋根の塗装のメンテナンスコストも安く済みます」


──なかなかに含みのあるお話でした。このシリーズが書籍化されて売れまくって【深夜鈍行】御殿を建てるのが作者の夢だそうですが、万にひとつもないと思われるその際にはぜひ参考にさせて頂きます。

Sさん、最終回までどうもありがとうございました。








「幸運を」

それは単なる別れの挨拶の決まり文句ではあったが、その防疫員の口から発せられると、私の前に立ちはだかっている困難を打ち破ってくれる魔法の呪文のようにも聞こえた。

~コータロー 「深夜鈍行」 第3便 書こうよ、書こうよ

              第16章 コロナの休日






❖❖❖❖



お楽しみ頂いた【深夜鈍行】『再び』シリーズも、今夜でお別れです。タイトルとしては、『帰ってきた』『リターンズ』『またまた』など、豊富なバリエーションが用意されているのですが、どれだけ人気になったとしてもこのシリーズは続かないのが一番、と作者は言っております。そんなこと言ったら書籍化なんて絶対に無……、って失礼……、とは言え、季節が巡るとまた同じようなトラブルが起きそ……、あ、いえ、何でもありません。

兎にも角にも、惜しまれつつ終わるのが”有終の美”、ですからね。え? 人気あったの? ってツッコミはお願いですからヤメてあげてください。


作者がぐうたらなせいで、ずいぶんネタが古くなってしまいました。あやうく腐るところでした。腐界に入門中といえど、ネタは腐らせちゃいけませんね。

がしかし。その結果、鳥インフルエンザの終結ニュースまで合わせてご報告できたのは、遅れたからこそのケガの功名、と言えるかもしれません。これも鈍行の為せる技、と笑ってお別れです。

今回のシリーズが皆様にとってどうか不要な知識でありますように。




【深夜鈍行】Season2/『再び』


オープニング&エンディング曲

「ふたたび ~千と千尋の神隠し ~ピアノ版」

https://www.youtube.com/watch?v=lwVrNzYSf4Y



プレイ・リスト


1曲目「ふたたびの」小林幸子

https://www.youtube.com/watch?v=6N5a26Wj148

2曲目「六本木~GIROPPON~」鼠先輩   

https://www.youtube.com/watch?v=vdXguqKqPBo

3曲目「 Choo Choo TRAIN 」ZOO       

https://www.youtube.com/watch?v=RNFkBEg3jTo

4曲目「ビバナミダ」岡村靖幸     

https://www.youtube.com/watch?v=Xe2gWRLnPlQ

5曲目「 KOME KOME WAR」米米CLUB

https://www.youtube.com/watch?v=G88pDsUD8xk

6曲目「日本の米は世界一」」打首獄門同好会

https://www.youtube.com/watch?v=BuU2bocSfDo

7曲目「てんやわんやですよ」クレイジーケンバンド

https://www.youtube.com/watch?v=FlFMvPAg0YQ

8曲目「バケノカワ」ポルカドットスティングレイ

https://www.youtube.com/watch?v=Z_fz6oeeG1M

9曲目「ふたたび」平原綾香

https://www.youtube.com/watch?v=eTv2FrL-waY




※※ カクヨム上に動画などのURLを貼付することは事務局からの許可を確認済み

   です。

   ただし、歌詞の利用は一部であっても権利者の許諾が必要となるので、無断転

   載はしないように、との事でした。





🐭ネズミのことをもっと知りたいあなたのために🐭


都民のためのねずみ防除読本

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/eisei/yomimono/nezukon/nezumi/nezumidokuhon.files/24nezumipannfu.pdf


行政担当者のためのねずみについてよくある質問&回答集

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/eisei/yomimono/nezukon/nezumi/boujoshishin.files/shiryou.pdf


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