第43話 向日性


サボちゃん、こと、サボテン1号(本名・七々子丸)は、去年ほどではありませんが、今年も愛らしい花を咲かせ続けてくれています。


そのサボちゃんが、ある日、突然、モンスター化してしまいました。

直角に体を折り曲げてしまったのです。

最大限の敬意を払ったお辞儀をしているかのように、真ん中あたりから90度に。


買った当初の倍以上に背が伸びたサボちゃんは、小さい頃からいつも日の光の方へと顔を向けていました。なので、気が付くとちょこちょこと向きを変えて、なるたけ真っ直ぐに育つように気をつけていたつもりだったのです。


それが、ある日。

何かずいぶん倒れているなあ、と思ったのです。

雨続きだから余計に日の光に向かうのかな、と思いつつ、それにしてはずいぶん横向きになってるけど、なんて思って反対側に向けて置き直しました。


次の日。

もっと倒れていました。

おいおい。そんなに日の光が恋しいのかい。

うん、私もそうだよ。晴れてくれないと色々と困るよね。

でも、それにしたってそんなに倒れ込まなくてもいいんじゃない?

そう声掛けしながら、また置き直しました。


次の日。

えー? ちょっと待ってよ。

それ以上、倒れたら、お辞儀を通り越して立位体前屈になっちゃうよ。

私の代わりに柔軟体操しなくっていいんだってば。

焦りながら、またまた置き直しました。


次の日。

もはやかける言葉はなくなっていました。

ヤバい。ヤバいヤバいヤバい。

このままだと折れちゃう。

焦っても解決方法は分からず、途方に暮れました。


仕方ないから、植え替えてみよう。

そう思って、エアプランツのソーキング(要は水やりみたいなものです)がてら、スリーアミーゴス(サボテン3兄弟)の水やりもして、その後、サボちゃんを一回り大きい鉢に植え替えました。


植え替え、実はちょっと怖かったんです。

サボテン2号の『ヒノデ』をあちら側に送ってしまったのは、植え替え失敗のせいでしたから。

これでまたサボちゃんまで見送ることになってしまったらショックです。立ち直れなくなりそうです。

ドキドキしましたが、とにかく植え替えて、液肥をたっぷりあげた、次の日。





真っ直ぐ立っていました。

びっくりするくらい、真っ直ぐでした。

姿勢がいいね、って褒めてもらえそうなほど、真っ直ぐでした。

ということは?





水不足、だったんでしょう。

日の光に向かっていると思い込んでいたのですが、実は違ったのですね。

体が大きくなった分だけ水が必要だったのに、鉢が小さくて水切れを起こしてしまったのだと思います。

梅雨時の湿気のせいで鉢の表面はそんなに乾いて見えなかったのが、判断を誤った理由のひとつです。湿度が高いからそんなに水やりしなくても、と油断もしていました。

思い込み、ってダメですね。


そんな訳で、日の光も大事だけれど、サボテンと言えど水も大切、という極々当たり前のことを見落としていた愚かな私でした。

サボちゃんには色々と反省させられました。私の方こそ90度に腰曲げて「勉強になりました」ってお礼言わないといけません。

でも、近頃、運動不足で腰が痛くって曲がらないのよね、って梅雨の雨のせいにしようとして、あ、それがいけないのよー、って慌ててスマホの歩数計見たら……。






もう少しで梅雨明けみたいですね。

ホラーネタじみた数字にはさよならして、おひさまの下で汗を流したいと思っています。はい。


……日の光からうんと遠い時間帯に何、言ってるんでしょう私ったら。

せめてこの後、自然光色のLED照明の下で柔軟体操でもしてから寝ることにしましょう。

皆様、今日もお疲れ様でした。


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