第15話 【清姫】アトリア・アトロポス
「見て! 先頭にいるのは【
「その後ろには【
洗練された隊列に凛とした歩み。
特級冒険者それぞれにファンが付いているようで、一人が登場するたびに喜声が上がる。
呼ばれているものは、きっと特級冒険者についている二つ名なのだろう。
リードが読んだ英雄譚に出てきた冒険者にも様々なかっこいい二つ名というものが付いていた。
「どうかしら? これが凱旋よ」
「すごいです……」
むしろ凄い以外に言いようがない。
始めて観た特級冒険者は、格好良くて、美しくて、堂々としていて、凛としていて。
今見えている
そしてウェルトは多分、この距離よりも遙かに遠い。
「先頭を歩くのがリーダーで
確かに、灰色がかった髪色に細身の身体。そして眼鏡をかけている彼の見た目はお世辞にも戦闘が得意そうには見えなかった。
実際、戦闘面ではその見た目通りなのかもしれないが、彼の本質はそこではない。
彼は高い知識を知恵に変え、高度な戦術により味方を勝利へと導く。
知識を以って指揮をするから【識者】という二つ名が付き、多くの人気を集めている。
しかし、言ってしまえば頭脳を担っている彼でさえ戦闘の実力は第一級冒険者程度、つまり、リードの何倍も強い。
「その後ろにいるのが
燃えるような赤い髪をした
だが、その実彼はその見た目の何倍もの力で何倍もの大きさのモンスターを討ち取る
その勇ましい姿は味方を鼓舞し、敵を怯ませる。
子どもが相手だと侮った者は敵味方問わず全てが実力を示され彼に跪いたという。
高い戦闘能力とカリスマ性を備えた小さき種族の王として【
その実力は正真正銘の特急冒険者、つまり、リードなど片手で捻りつぶせるほどの高みにいる。
ちなみに、綺麗なお姉さんからのハグは振りほどけない、いや、振りほどかない。
そして最後の一人を見てリードは固まった。
「最後に
リードの髪とは違った輝きを見せるブロンドの髪を持つ
隣を歩くレグルス・アポステルと楽しそうに話す彼女は、その笑顔で多くの者を虜にしてきた。
現在進行形でリードもされていた。
しかし、彼女の存在は高嶺中の高嶺に存在する花のようなもの。
例えるならば、魔の森の中心にひっそりと咲いている伝説の霊草。
憧れと羨望の眼差しを受ける姫として、男女問わず多くの人気を集めている。
『……マスター。浮気をしないでください』
「う、うわっ……!?」
「うん? ——とりあえず、後ろの
——クラン
冒険者ギルドの同等もしくは下部組織として存在している、同じ目的や思想を持った者たちの集まり。
例えば【明けの明星】は魔の森の攻略という目的を掲げているクランであり、何十年も前から存在している巨大なクランだ。
クランへ加入する方法は面接を受けるやスカウトを受けるなどあるが、【明けの明星】は生半可な実力の者は必要ないとして完全なスカウト制となっている。
クランは数えきれないくらい存在しているが、【明けの明星】はスカウトを受けただけで尊敬や羨望を受け、断るものはほぼいないほどと言われるほどだ。
『あれがマスターが目指すべき、そしていつか越えなければいけない存在です』
「高い……ね。想像よりもずっと……」
『ですが、マスターには登るための力があります。サポートする
ウェラリーがリードを真っ直ぐ見つめながらそう言った。
リードは確かに力を手に入れた。
今はまだ小さくて弱い力だが、きっとこれは大きな力になる。
そう確信していた。
なぜなら、生まれてからずっと一緒だった
そう考えたらもういても立ってもいられなかった。
「みなさん! 早く、僕もモンスターを討伐してみたいです! 外へ、森へ行きたいです!」
リードの様子をを微笑ましそうに見ながらユリアたちは立ち上がり言った。
「ん。やる気ある。良いこと」
「そうね。もうそろそろ凱旋パレードも終わるし行きましょうか」
「これを見に来ることは一週間の指導内容には関係ないことだったんすけど、丁度タイミングが被ってたから予定を早めて見に来たんすよね。リードくんはこの凱旋を見てどう思ったっすか? 触発されたっすか? ゾクゾクしたっすか? 素直に思ったことを聞かせて欲しいっすね!」
どう思ったのか。
その問いに対する答えは一瞬で複数浮かんできた。
目標になった。
格好良かった。
可憐だった。
だけど何より——。
「憧れました! 僕も、いつかあの人たちのような冒険者になりたいです!」
それを聞いたユリアは笑みを浮かべた後に、茶化すように言う。
「そう。それなら良かったわ。実は、これを見に来ようと提案したのはリルなのよ。お礼を言うならリルに言ってちょうだい」
「……ユリアうるさい」
そうだったのか、とリードはリルの方を向いて深々と頭を下げる。
「リルさん! ありがとうございます!」
「ん。別に」
リルが若干照れたように言う。
まだ凱旋を見守る人はいるが、移動を始めている人も多く存在する。
徐々に人が散っていく。
それでもいつもより賑やかな街を後目にリード達は街の外へと向かっていく。
「——ん? あれ……?」
『マスター、どうかしましたか?』
(いや、気のせいだと思うんだけど……今誰かに見られてなかった?)
『私は何も関知しませんでした。恐らく気のせいでしょう』
念のため、周りを見渡してみるが、それらしい人影を発見することはできなかった。
「何してるのリードくん! 早く行くわよ!」
「はい! 今行きます!」
【
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