第39話 ローブ
リードはウェラリーを頼った。一抹の希望に縋った。
このままだと間に合わない、皆が死んでしまう。心のどこかでそれを理解していた。だけどどうすることもできなくて、ただ走ることしかできなくて。
果たしてウェラリーの想いはリードに届いた。
『ッッ! お任せください!』
そこから先は早かった。
リードを知り尽くしていたからこそ、リードの異能だからこそできる判断。
『まずは怪我を治すために【ヒール】の魔導書をインストールします! 申請理由を!』
「怪我を治すため」
『申請許可! 魔導書【ヒール】をインストールします! 時間が惜しいです。走り出してください。魔導書は必ずリード様の正面に顕現します。顕現し次第足元から意識して六連続使用、その後私の合図に合わせて足に二回使用して下さい!』
リードは再び走り出した。
確かにその場を離れても本の形を作る光はリードに付いてくる。
そして数秒後魔導書が顕現。その行動の意味が分からずとも、今はウェラリーを信じて手に取り魔力を流す。
「ぐっ……。【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】」
『次いで、【
そんなものがあったなと思いながらも、【
そのまま装着した——瞬間、リードの走るスピードが約三倍に膨れ上がった。
「⁉」
『通称"破砕王のローブ"。装着者の力を全て三倍に引き上げます。国宝級の魔道具です』
「こ、国ほ……ッッ⁉ いったぁ……!」
足元からブチッという音が響き、突然リードの足に折れるような痛みが走った。
その痛みは一歩進むごとにどんどん痛くなる。
ガクッと膝が折れそうになることを寸でのところで耐える。
リードの走る速度が一気に落ちた。
『ッッ! 【ヒール】してください! 予想以上に早いですね……!』
「っ【ヒール】【ヒール】! 今何が起きたの⁉」
『足の筋肉がズタズタになっていました』
「なっ……‼」
すぐに【ヒール】をかけたことによって筋肉は治り、再びスピードを取り戻す。
しかしすぐに足からブチブチという音が聞こえ、再び【ヒール】をかけるの繰り返しに入った。
『"破砕王のローブ"のデメリットです。力を三倍に引き上げる代わりに慣性——リード様への反動も全て三倍になります。リード様が回復するたびに筋肉は強くなるのですが、強くなった分だけ力が出せるようになるため鼬ごっこです。無限といっても過言ではないほどの魔力があるからこそできる力技です。我慢してください』
正直、痛い。
内側から痺れるように痛い。
痛み慣れしてるつもりのリードでも声が漏れ出る。
ブチブチ音が鳴るたびに目から涙が勝手に出てくる。音が聞こえるたびに身が竦みそうになる。
筋肉が千切れているのだから当たり前かもしれない。
だけど。
「なにくそおおおおおっっ!」
こんな痛みで
止まるわけにはいかない!
今この瞬間にもあの人たちは戦っているのだからっっ!
『次の【ヒール】を発動し次第魔導書は消して大丈夫です! 【ヒール】完全習得です!』
「いっっ――! 【ヒール】【ヒール】! りょうかい!」
『ギルドまであと半分です! 頑張ってください!』
リードは走る。
助けるために、間に合うために。
景色も風も全て置き去りにしながら走り続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます