第16話 【閑話】英雄の判断
「うーん……ハズレかぁ……」
英雄の凱旋の前から二番目にいた彼女、【
その声を聞いていたリーダーの【
「アトリア、何か見つけたのかい?」
「いや、ハズレだったよ! なんかまだ
「そうか……。何も見えなかったか」
「何の話をしてるんだ? 俺も混ぜてくれよ」
二人の会話に隣で聞いていた【
二人はいつものことだと言わんばかりの態度で受け入れた。
「まぁ、大した話じゃないんだけどね。アトリアがさっき
「あぁ、なるほどな? つまりそいつは——」
「——一週間以内に死ぬってことだね」
当たり前のように、それが当然のことのようにアトリアは平然と言い放った。
「おいおいそんなこと言っていいのかよ? かの有名な【
厭味ったらしくレグルスはアトリアに言う。
だが、アトリアから返ってきた言葉は背筋が冷えそうなほど冷たいものだった。
「私に理想を押し付けないで。冒険者になった時点で誰であろうと、弱者であっても庇護下には含まれない。それに、運命を変えることなんてできるはずがない。だって——」
「——異能は絶対だから……だね? もう聞きすぎて覚えてしまったよ」
「その通りだよ。運命は、変わらない」
酷く重みを感じるその言葉は、誰にも拾われることは無かった。
異能は絶対。
それは子供でも知っている常識だ。
自らの想いを具現化したもの、願いを叶えるための奇跡。
異能は所有者に嘘をつかない。異能は所有者に不利益をもたらさない。
だからこそ、所有者は異能を信じる。そして異能が関連した言葉を人々は信じる。
「ちなみに、そのお先真っ暗な奴はどこにいるんだ?」
「左斜め前方。女パーティ三人と一緒にいる門の方に向かってる少年だよ」
「うん? どれだ? 俺ぁちっちゃくて見えねぇんだよ」
小人族のレグルスと人族のアトリアの目線は当然だが全く違う。
だから、遠くを見ることができるようにレグルスはトートに抱えてもらうことにした。
若干周りからの歓声が増えたような気がするが、気のせいだろう。
「ああ! あの白髪野郎か! ありゃあ見ただけで分かるぜ? 相当なビビりだ。良くて中堅、悪くてって……そういや一週間以内に死ぬんだったな! あーあ。死ぬと分かってて見捨てるのか」
「勝手なこと言わないでくれる? 冒険者になった時点で自己責任。私は【
「どのみち、死ぬと分かって助けることなんて不可能なんだから仕方ないね」
彼女たちの視線の先では、女三人の冒険者パーティとそれについていく白髪の少年が門から出て行くところであった。
「どうせ運命なんて、変わらないんだから」
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