第4話 別れと出会い
——……………………失敗
——………………続。失敗
——…………再接続。統合、成功
——……【
——仮想人格形成、成功。仮想容姿形成、成功。
——【
——
『……て…………さい』
『……ます。……ター。起き…………さい』
不思議な、直接脳内に響くような声が聞こえてくる。
『……うございます。マスター。起きてください』
知っている。
僕は、この声を知っているはずだ。
だけど、僕の知っているこの声の持ち主は気まぐれで、もっと淡々としているはず。
夢なのか現実なのか分からない
『再試行。おはようございます。マスター。起きてください。……失敗。休止モードに移行します』
そもそも、僕はさっきまで何をしていたんだっけ?
確か、モンスターが家を焼いちゃって、いや、これは昨日?
そうだ! ウェルトさんと話している途中でモンスターの声が聞こえてきて、確か僕はそこで眠らされて——
「——ウェルトさんは!? ッッ!? いたっ……」
眠気も一気に吹き飛んで、僕は飛び起きた。
腕に感じるわずかな痛み、それを無視して勢いよく立ち上がった。
「これは、一体……」
そこに広がっていたのは、まるで爆発が起きたかのように大きく焼け焦げた森と沢山のモンスターの死体。
しかし僕の周囲だけ何も起きていないかのように緑の草が生えている。
まるで、僕を守るかのように広がる戦闘の痕跡。
はっ、とする。
「ウェルトさんは!? ウェルトさんはどこ!? ッッ! あれはっ!」
痛みも忘れて、僕はそれに駆け寄る。
この惨状の中心地だと思われるその場所に突き刺さる純白の剣。
それは、ウェルトさんが常に手放さず、いつも腰に差したままだった彼女の唯一の武器。
ここに剣があるのなら……そう考えて、僕は辺りを見渡し————そして見つけた。いや、見つけてしまった。
「——嘘……」
ゆっくりと近づき、それを確認した瞬間僕の心に衝撃が走る。
強く触ってしまったら、そのまま壊れてしまうような
——冷たい。
それが僕が最初に感じたこと。
だけど、その事実を確認した途端に悲しみが心を支配する。
「ウェルト、さん……? 嘘、だよね……?」
返事は返ってこない。
「どうして……? まだ、三日も経っていないよね……?」
ゆっくりと揺する。
だけど、彼女は目を瞑ったまま微動だにしない。
「いつもみたいに僕を驚かそうとしてるだけだよね……?」
意識を失う前と一切変わらない、傷一つ存在しない彼女。
焼け焦げた森の中に不自然に存在する、ただ眠っているかのように見える妖精のように美しい姿。
大きく広がった白銀の髪が、更にその印象を強くする。
でも、彼女に触れた手に伝わってくるその冷たさは、現実を僕に嫌でも伝えてしまう。
嫌だと本能が拒絶しても、理性がそれを理解してしまった。
——ウェルト・プロッシモは死んだ
嘘だと叫んでも、嫌だと嘆いても、彼女は返ってこない。
「まだ……お別れだって言ってないじゃないか……。それなのに……勝手に居なくなるなんて……」
(一方的に伝えたいことだけ伝えて、無理やり僕を眠らせてから勝手に居なくなるなんて……卑怯だ……)
だけど、それが彼女らしいとも思ってしまう。
——自由で、強くて、優しくて。
——守ってくれて、導いてくれて、正しくて。
——不器用で、料理が下手で、だけど温かくて。
「自由奔放なウェルトさんらしいや・・・・・・」
丁寧に、その美しさが損なわれないように、儚く崩れたりしないようにと願いながらゆっくりと彼女に土をかけていく。
彼女の正しくない姿は見たくない。
そんな勝手なことを考えながらゾンビ化対策の聖水を振りかけた。
「ウェルトさん、空から僕を見守ってください」
全てが終わり、溢れる涙を拭って無理やり笑顔を作る。
彼女は、笑顔で見送ってほしいと言っていたから。
だから、僕はいつまでも泣いているわけにはいかない。
自分を守ってくれていた最愛はいなくなってしまった。
そう思いながら、ポツリと呟く。
「僕は、これからどうすればいいんだろう……」
『どうすればいいかという質問に対して、こちらの″自由な職業選択ガイド″がオススメです』
「!?」
聞きなれたはずの声から、聞きなれない言葉が聞こえてきた。
一瞬、訳が分からなくなって頭が真っ白になる。
「だ、誰!?」
周りを見回しながら焦ってそう叫ぶと、どうしてだかしっかりと答えは返ってきた。
『誰という質問に対して、こちらの"自分探しの旅~私って誰~"がオススメです』
違う、そうじゃない。
僕が知りたいのはこの声の持ち主。
周りを見回してもどこから声がするのかすらはっきりしない。
「そんな哲学的なことを聞きたいんじゃない! この声を出しているのは誰!? 隠れてないで姿を現して!」
『かしこまりました。司書モードを停止。可視化モードに移行します』
その言葉が聞こえた直後、僕の視界一杯に光が広がった。
直視できなくて目を瞑ったけれど、眩しさは変わらない。
まるでその光は瞼の内側に現れているかのように僕の目を焼き続けた。
ようやく光が収まったことを確認して、ゆっくりと目を開ける。
すると、さきほどまでは存在していなかった何かが視界の真ん中に存在した。
それは、パッと見ると小さい妖精のような羽が生えているけれど、その格好はキッチリとした正装のような格好に眼鏡をかけた黒髪の、いかにも真面目と言っているような格好の少女だった。
「君は、誰……?」
『私は【
「【
聞いても尚、訳が分からなかった。
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