第22話 『白蓮』
ユリアたちがいなくなったことで、部屋に静けさが舞い戻ってくる。
「それにしても、レベルってすごいんだね」
『レベルが一つ違うだけで力量差は二倍になると言われていますからね!』
「ってことは、今の僕は今までより二倍強いってこと!?」
『いえ! レベル有りと無しではその時点で天と地の差があります! ゴブリン一体に苦戦することなんてもうあり得ませんよ!』
それは、素直に凄まじいとしか言えない。
先ほどのゴブリン戦も言ってしまえば武器頼りのラッキーショット。
ゴブリンを倒すのにリードは魔法を一切使っていない。
つまり、覚醒した異能の恩恵は一かけらたりとも受け取っていないのだ。
武器が違ったとしたらリードはゴブリンを倒せなかっただろうし挫けて心が折れていた可能性も高い。
だが、もうゴブリン程度には負けることはないとウェラリーは言った。
そしてリード自身も自分の実力が引き上げられたことをひしひしと感じ取っていた。
『レベルが三離れればもう相手にならないと言われています。二の差だととんでもなく相性がいい相手だとギリギリ勝てるくらいですね! 一の差なら技術で埋めることができるのでマスターは剣術を磨きましょう!』
「そうだね! ウェルトさんも剣の練習は欠かさないようにって言ってたのはそう理由なのかな?」
『それもあると思います!』
リードの目標は最強になること、英雄になること。つまりウェルトを越えること。
ウェルトは魔法だって剣だってポーション作りだって何でもこなしていた。彼女を超えて最強を目指すというならば魔法だけでは足りない。
剣と魔法の両方で超えなければ彼女を超えたと胸を張って言える日は来ないだろう。
「よし! 素振りだけしようかな!」
『自身の変化が感じ取れるので良いと思いますよ!』
ウェルトもモンスターを倒すと強くなるということを教えてくれていたけれど、気を失うなんてことは聞いた事がなかった。
教えなかったのではなく、十中八九聞かれなかったからとかそういう理由だろう。
「この剣、すごい魔道具だったんだね」
リードは純白の剣を撫でながらそう呟く。
『折角ですし、銘を付けられてはどうですか? マスターの好きな英雄たちの持つ剣にも名前がついておりますし』
確かに、武具には名前が付けられていた気がするし付いていた方が愛着も沸くだろう。……初めてモンスターを倒した武器で形見なのだから愛着などとっくに沸いているけれど。
「うーん……。エクスカリバー……は英雄譚に出てきた武器だし、どうしよう……」
目の前に浮かぶ相棒の名前からわかる通り、リードにネーミングセンスなど存在しない。
まともなものがあったとしても、どこか聞き覚えのあるものから取ったものだ。
この剣がウェルトから何と呼ばれていたのかも知らないし、純白で切れ味が良いということくらいしかこの剣のことをまだ知らない。
しかし、この時は冴えていたのか一つの銘が浮かんできた。
「よし、この剣は『白蓮』にしよう。君の名前は『白蓮』だよ」
そう呼びかけてみると、気のせいかもしれないけれど剣が僅かに脈動したような感覚がした。
『純白で蓮のような清らかさで『白蓮』。良いと思います。私の名前の第一候補である【
「もしかして根に持ってる⁉」
『何のことでしょうか?』
「根に持ってるよね⁉」
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