第26話 【閑話】ユリアの憂い
リードが見えない位置まで行ったことを確認したユリアは、リルとラビの方向へと振り返る。
「さて、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、ラビはリードくんの戦い方を見てどう思ったかしら?」
「うーん、そうっすねぇ……。なんというか、不自然……っすかね?」
ラビが答える。
それを聞いてユリアはリルの方を向き同様の質問をする。
「リルは?」
「ん。魔力感知は使ってない。直感はありえない」
リードの動きは、端から見れば不自然すぎた。
例え、レベルアップしたリードにとってゴブリンが既に格下の存在だったとしても、多対一に無傷で勝利することは難しい、いや、不可能だ。
それは決して偏見などではなく、実際に練習として打ち合ったユリアが判断したリードの実力に基づく結論なのだ。
見てから避けているのならまだ分かる。
だが、リードはそこに行けば安全だと
そんなこと、音を聞き分けることができるラビでも不可能だ。
となると、考えられる可能性は——
「——異能、ならありえる」
「そう、としか考えられないわよね?」
「そうだとすれば、彼はそれほど強力な異能を持ってるってことは……」
「そんな気配は感じなかった」
異能は絶対。
それは子供でも知っている常識だ。
自らの想いを具現化したもの、願いを叶えるための奇跡。
異能は所有者に嘘をつかない。
異能は所有者に不利益をもたらさない。
だからこそ、所有者は異能を信じる。そして異能が関連した言葉を人々は信じる。
そして強力な異能は——
「——問題ないんじゃないっすか? リードくんは良い子っすから!」
「ん。同感」
二人にあっけらかんとそう言われて、ユリアは一瞬目を見開いたが、すぐに微笑んで言った。
「ふふっ、そうね。どんな子だったとしてもリードくんは私たちの生徒に違いないのだから、私たちが導いてあげれば問題ないわね」
「生徒ってことは自分らが先生ってことっすね! 生徒と先生……なんかいい響きっすね!」
「ん。生徒。良い。明日呼ばせる」
「それじゃあ私たちも帰りましょうか」
歩きながらユリアは考える。
リードが善なのか悪なのかを。
しかし、どう考えてもリードが悪だと判断することはできなかった。
そんなユリアに心配そうな目を向ける者が二名いたことには気がつかない。
それぞれが様々な思いを持って、夜は更けていく。
異能は絶対。
それは子供でも知っている常識だ。
自らの想いを具現化したもの、願いを叶えるための奇跡。
異能は所有者に嘘をつかない。
異能は所有者に不利益をもたらさない。
だからこそ、所有者は異能を信じる。そして異能が関連した言葉を人々は信じる。
そして強力な異能は、所有者を狂わせる。
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