第62話 庭の整備

今日は門から玄関までの通路の花壇を作る予定だ。

まず、専門家の庭師のソニアの意見を聞こうと思う。


「ソニアのイメージを教えてくれ。」


「そうですね。まず門を潜ってすぐにバン!っと目に着くものが欲しいですね。それだけで印象がかわりますからね。」


「んー。そうだな。桜なんかどうだろうか?」


「桜? サクラとはどんなものですか? 木ですか?」


「春先だけ満開に咲き誇り、1週間ほどで散っていく俺の故郷の代表する春の花だ。ピンクの小さな花で、散る時は花弁が舞うんだ。」


試しに門の両脇に1本ずつ、満開のソメイヨシノを植えてみた。


「す、す、すばらしい! こんな可憐で気品を感じる花をみたのは初めてです。」


「満開を迎えるとすぐに散ってしまうんだよ。果敢無さがすばらしいだろ。この花をみながら酒盛りをするんだよ。」


家から次々と出てきてサクラをみんなで眺める。

綺麗、綺麗と連呼している。

この世界にはサクラは無いようだな。

サクラをうちのシンボルにしようと思う。


「メルモ、ずっとサクラを咲かせることってできるかい? できるだけ長い間見ていたいんだが。」


「わらわの力があれば容易いことよ。」


1年中、満開の桜がみれることになった。

観れることになったのは良いのだが、有難味が薄れた気がするのは気のせいだろうか。

その他、バラやアジサイ、金木犀、梅、花桃などいろいろな花の木をショップで購入し、並べた。

他にパンジーやカスミソウ、マリーゴールド、チューリップのような花壇で馴染みの草花も並べた。

あとはソニアのセンスに任せよう。

追加が欲しいときには声をかけるように指示した。

綺麗な花に目を奪われ、みんなずっと見ている。

仕事戻ってほしいのだが。

この世界の花と言えば、野草の花程度しかない。

あとは果樹や野菜が実をつける前に咲く程度だ。

花を贈る習慣もなく、まず売れないので品種改良などする人もいない。

そこで我が家にこの世界初のフラワーガーデンを作ることにした。

いつの間にかに見に来ていたメイドちゃんたちも手伝い花壇を作り始めた。

ほったらかしにしたお仕事は大丈夫なの?

楽しそうなので言えないけどね。

夕方には素晴らしい花の通路が出来上がった。

これでやっと一通りの我が家の建設が完了した。


落ち着いたところで久しぶりに依頼を受けてみようかとギルドに向かった。


「お久しぶりですね、ミントさん。滞っている高ランク依頼があったら消化してあげようかと思いまして着てみたんですが、どうですか?」


「お久しぶりですね、真治さん。ありがとうございます。今のところは大丈夫です。」


「了解です。また来ますね。」


ギルドを出ようとしたところ、隣の飲食コーナーで項垂れた2人が深いため息をついていたのが気になった。


「お嬢さん、どうかしたのかい?」


「え? ああ、ちょっと訳ありでして・・・。」


剣士と魔術師風の2人の若い女性であった。


「こうして話しかけたのも何かの縁だし、聞かせてもらっても良いかな?」


「実は借金の返済が明日までなのですが、返す当てもなく途方に暮れてました。明日、返済できなければ奴隷落ちしてしまうのです。」


2人はDランクの冒険者で、借金をして装備を揃えたそうだ。

装備を揃え、どんどん依頼をこなせばすぐに返済できると思っていたが、そんなに甘くはなく、日々の生活で精一杯だった。


「いくらの借金があるんだい?」


「私が11金貨で、彼女が12金貨です。」


「ほう。じゃあ、それを俺が肩代わりする代わりに家で働いてもらえないかな?」


「え? 見ず知らずの方にそんな大金を頂くわけには行きません。」


「いや、あげるとは言ってないよ? 家で働いて返してね。」


「私の名前はカスミです。Dランク冒険者で剣士を目指していました。何でもしますのでよろしくお願いします。」


「私はカリナです。Dランク冒険者で魔術師を目指していました。私も何でもしますのでよろしくお願いします。」


「俺はSランク冒険者の真治だ。よろしくな。じゃあ、返済してくるか。」


二人の借金を返済しに行った。

そして、今拠点としていた宿屋を引き払い、我が家で生活することになった。


「それで君たちの仕事だが、一番手が足りていない料理人の補佐をお願いしようと思う。今、4人で切り盛りしているのだが人が増えて作る量も増え、手が回らくなっているんだ。主に配膳と買い出し、皿洗いを任せたい。それと給料は月1金貨ね。1年あれば借金も無くなるね。」


「ありがとうございます。全力で頑張ります。」


新たな仲間が加わった。



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