第9話 ルーム確認
ルームに戻ったのは良いが食材がオークの肉以外無いことに気付いた。
再度町に戻り、露店や商店で食材や調味料を入手することにした。
「メイ。今日の晩飯は任せたぞ。メインはオークだ。必要な食材と調味料を選んでくれ。」
「わかりました。オークのスープと香草焼きがメインですよ。あとパンが欲しいです。」
『ねえ、ティア。この世界の調味料って何があるの?』
『そうですね。塩、コショウはありますね。香草も使いますね。あとは素材の味を生かす感じですかね。』
『ほぼ無いってことだね。これじゃ、もうカレーは絶望的だな』
『メリーナ様にお願いしてみます? 向こうの世界の調味料がほしいって。
あ! スキルもらいました。条件があるそうです。私にも食わせることだそうです』
「メイ。調味料はメリーナ様にもらったから大丈夫みたいだ。」
「そういえば、静香は料理できるのか?」
「多少はできますよ。ママの手伝いしてましたから。」
ここで静香ちゃんの家庭事情を話しておこう。
先に述べたように俺と静香ママの早乙女春奈は幼馴染だ。
高校時代には恋仲だった。
卒業後、それぞれの道に進み疎遠となった。
俺は仕事に没頭し、春菜は知り合った男と結婚した。
そして、娘の静香が産まれた。
産まれてすぐに旦那の浮気が発覚。
女癖が悪く離婚。
そして、隣の家の実家に出戻りとなった。
静香には父の記憶が無い。
春菜の父は幼いころに亡くなり母子家庭だった。
娘も同じ環境になってしまい申し訳ないと思っていた。
それで俺が父親代わりになり、運動会や参観日に出席したこともあった。
静香は俺がママと再婚すればいいのにと思っていたらしい。
残念ながら俺にその気は無かった。
だが、静香は俺にとって娘のような存在なのだ。
最近は思春期を迎えてよそよそしくなり、遊んでくれなくなってしまっていたが。
こうして異世界に転移し、同い年になって一緒に冒険できていることが実はとてもうれしく思っている。
向こうでのことをぼんやりと考えているとメイから買い物が終わったと声を掛けられた。
買ったものは俺の収納に入れる。
先日、露店で買った串焼きを入れておいたのだが、出すと買ったときと同じように温かかったので時間停止機能が着いていることが発覚した。
しかも、無限収納らしい。
腹も減ってきたので早速メイに晩飯を作ってもらおう。
再度、ルーム起動。
『ティア、部屋の機能の説明よろしく。』
『まずキッチンはもちろんオール電化ですよ。正確には電気ではないんですけどね。電力ではなく魔力です。お風呂はなんと!温泉なのです。サイズも大きめの希望でしたので3人で入っても余裕のサイズにしときました。トイレは注文通りの水洗トイレです。もちろんお尻洗浄もついてますよ。マスター、褒めてくれても良いのですよ?』
『オーブンに電子レンジもあるね。あれ? この冷蔵庫の一番下のドアってなに?』
『一番上のドアは冷凍、真ん中は冷蔵、そして一番下はアイテムBOXですよ。もちろん、時間停止&無制限です。』
『なんかすごいことになってるね。』
「メイ、料理よろしくね。静香ちゃんも手伝ってあげてね。俺は久しぶりの風呂を頂いてきます。ちなみに温泉なんだってさ。お先~」
静香ちゃんがなんかズルいとか言っているようだが無視だ。
何日ぶりの風呂だろうか。
気持ち良い。このまま寝ちゃいそうだ。
ほんとにおっきな湯舟だった。
すると脱衣所に気配がした。
「ちょっと待ったー! 何入ろうとしてるのよ。まだ入ってるからね?」
「別にいいじゃない。ちょっと前までは一緒に入ってたんだし。」
「ちょっと前って小学生のころじゃないか! あかんて!」
「待ってられないの!」
本当に入ってきたよ。
もう開き直りました。
なるべく見ないように目を反らしましたよ。
でも、なんでメイも一緒なんだよ。
もう突っ込むのも面倒くさくなったよ。
「体の芯から癒されてる感じがするよ~」
「ほんとですね。まさか異世界で温泉に入れるとは思いませんでした。」
「メイは、お風呂初めてですが癖になりそうです。」
「トイレ確認した? お尻洗浄付きらしいよ。」
「ほんとですか! メイちゃん、あとで使い方教えるね。」
「はいなのです。」
「ところで、真治さん。肝心なオークを出すの忘れてますよ? 晩御飯作れないじゃないですか。」
「あ! ごめん。温泉の誘惑ですっかり忘れてしまったよ。だからこっちに来ちゃったのね。」
ずっと戦闘ばかりでゆっくり会話することも無かったな。
メイに向こうの世界の話をしたり、こっちの世界の常識を聞いたり充実した時間を過ごした。
裸なのを忘れていたが。
風呂上がりに新しいパジャマを出した。
3人お揃いで色違いにしてみた。
俺が青、静香がピンク、メイが黄色だ。
これから始まる新生活に。
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