第37話 マーレン王とお食事会 ②

「どうかね。食事の方は?」


マーレン王に突然話しかけられて焦った。

物足りないと感じていたことがバレたかと思った。


「おいしく頂いております。ありがとうございます。」


スッポン鍋がグツグツ煮えてきた。


「それにしても真治殿の料理からは良い匂いがするな。」


「もう少々お待ちください。まもなく煮えると思いますので。」


毒味係だろうか、王のそばに近寄ってきた。


「ちょっと味見をさせていただきますね。」


疑われているようなので俺が最初に口にする。

次に好奇心旺盛なクリスが取り皿を差し出してきた。

クリスが取り皿を受け取り、そのまますぐに口にした状況を見たメイドや執事が驚いた。

通常、毒味係りが初めに口にするのが常識だからであろう。


「うわ! おいしいですわ。」


「王様、鑑定スキルはお持ちですか? お持ちでしたら、クリスの指輪を鑑定してみてください。」


王様には鑑定スキルが無く、鑑定持ちの側近を呼んだ。


「ええええ! 王様、クリス様の指輪は伝説級のアーティファクトです。状態異常無効の他、たくさんのスキルが付与されています。」


ハワード夫婦も指輪を誇らしげに見せつけた。


「はっ! あちらの2つの指輪も同じスキルが!」


「ハワード王国には3つも伝説級のアーティファクトを所有されておったのか!」


「いえ、私が居たころにはございませんでしたよ。」


「マーレン王、内密なお話がございますので一旦メイドさんたちを下げていただいてもよろしいですか?」


メイドさんたちが部屋を出ていき、身内だけになった。


「その腕輪はいつもされているものですか?」


「これは先代の王、父の形見だから常にしておるが?」


「その腕輪を見せていただけますか?」


腕輪を受け取り、クリスの指輪と同じスキルを付与し返却した。


「王様、これで鑑定スキルが使えるようになったと思います。腕輪を鑑定してみてください。」


「了解した。えっ!? この腕輪にスキルが付与されているではないか! 真治殿が付与されたのか?」


「はい、私には特別なスキルがございますの。これで毒味の必要がなくなりましたね。」


「真治様!! 私にもお願いします!」


「構いませんよ。では、そちらのペンダントに付与しますね。」


お待ちかねのスッポン鍋もいい感じに仕上がった。

みんなの取り皿にわけ、食事会を再開した。

メイドさんたちの入場を許可した。

王様が普通に鍋を食べているのを見て毒味役が慌ててきた。


「大丈夫だ。もう毒味の必要はないから安心せい。」


毒味役の仕事を奪ってしまったかなと申し訳なく思ったが、王様の安全の方が重要だろう。


「それにしてもおいしいわ。あのカメがこんなにおいしくなるなんて驚きですわ。クリスが自慢していたけど本当においしいわね。」


クリスがドヤ顔をしている。


「本当に真治殿はすごいお方だ。これからよろしく頼む。お礼をするつもりが大変なものをもらってしまった。お腹の子が娘だったら嫁に出すことも考えるかな。」


「いえいえ、私がクリスと結婚すれば親戚になるわけですし、気にしないでください。」


クリスが赤くなってモジモジしていた。


「真治殿の料理には毎回驚かされてますよ。昨日のウナギや唐揚げはいままで味わったことの無い味だった。」


ハワード王が余計なことを口にした。


「なんですの、唐揚げとは?」


クリス姉が食いついちゃったじゃないか。


「もうお腹いっぱいでしょうから、1つずつですよ?」


さっき作った唐揚げを収納から出し、1つずつ配った。

作っているのを見ていた王は食べたかったんだろう。


「うわぁ、おいしいですわ。我が家の料理長にお迎えしたいですわ。」


「お姉さま、真治様はわたくしの旦那様ですからね!」


クリスさん、まだ結婚してないので旦那ではないですよ。

デザートにプリンまで出すことになってしまった。

みんなが幸せそうに食べているのでまあ良かった。

その後、プライベートのリビングに移動し、お茶を頂いた。


「王様、私を鑑定してみてください。」


「ん? では鑑定するぞ。え! 勇者様?? 今までのことが納得いきました。唐揚げが温かかったのですごいアイテムBOXをお持ちなのは想像できましたし。それにしてもすごいスキルの数ですね。」


「それで、お願いがございます。私には女神メリーナから魔王の討伐の使命があります。ご協力をお願いしたい。」


「魔王が復活したということですね。わかりました、ご協力いたします。何か情報が入りましたらご報告いたします。」


「よろしくお願いします。また、このことはご内密にお願いしますね。」


これでマーレン国からの協力も得られた。


「それと私はもっと強くならなければなりません。良い修行の場所があれば教えていただきたい。」


「ここから北に魔の森と呼ばれている深い森がございます。AやSランクの魔物が生息しているという噂がございます。詳細は冒険者ギルドの方で確認できると思いますので私の紹介状をギルマスに渡してください。」


「ありがとうございます。では早速明日にでもギルドに確認してみます。ちなみに王様と王妃様は特別なスキルをお持ちですか? ステータスを見てもよろしいでしょうか?」


「構わんぞ。真治殿のステータスをすでに見ておるでな、遠慮せずに鑑定してくれ。」


「私もどうぞ、おいしいデザートをまたお願いしますね。」


*ステータス

 名前: モーリス・マーレン(マーレン国王)

 性別: 男

 年齢: 36歳

 レベル: 30


 スキル

  礼儀作法、統率、剣術、槍術、剛腕、一点集中、鷹の目


 魔法

  火魔法、風魔法、闇魔法


 ユニークスキル・加護

  炎の使い手(火、炎魔法を増強する)、闇の使い手(闇魔法を増強する)


*ステータス

 名前: スーザン・マーレン(マーレン王国王妃、クリスの姉)、妊娠中

 性別: 女

 年齢: 20歳

 レベル: 22


 スキル

  礼儀作法、魔力操作、魔力感知、魔力増強


 魔法

  水魔法、風魔法、光魔法


 ユニークスキル・加護

  聖なる結界(邪悪なものを拒絶する)、良縁の導き(良縁に恵まれる)


クリス姉の名前がスーザンだったことを今更知った。


「私が所有していないスキルをコピーさせていただきますね。減ったり無くなったりしませんので。」


「そのようなスキルもお持ちだったのですね。遠慮なさらずどうぞコピーしてください。」


夜も更けてきたのでお暇することにした。

客間に泊っていくように勧められたが、転移できるのでと話、移動のための部屋だけ借りた。

先程の客間に通され、壁にルームを起動した。

明日の予定はギルド訪問だ。

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