第38話 奴隷店

翌日、早速マーレン王都の冒険者ギルドへ向かった。


「すいません。王様の紹介状をギルドマスターに渡していただきたいのですが。」


「かしこまりました。少々お待ちください。」


受付嬢がギルマスの部屋に向かった。

数分後、戻ってきた受付嬢とともにギルマスの部屋に向かう。


「初めまして、私はこのギルドを任されておるギースだ。王から真治殿に全面協力せよとのことなので何なりと聞いてくれ。まあ、立ち話もなんだから座ってくれ。」


ソファーへ座った。


「初めまして、私が真治です。そして、クラン蒼の絆のメンバーです。それで、魔の森について教えていただきたい。」


「魔の森ですか。あそこは魔素が非常に強く、森の奥には非常に強い魔物がいると言われている。近場でも魔物が強すぎて奥までいけない。したがって、あまり情報が無いのが現状だ。しかし、君たちは相当強いらしいから奥まで行けるかもしれない。もし、攻略できた際には情報提供をお願いしたい。」


「わかりました。では、魔の森までの地図をお願いします。」


「了解した。受付の方には話しておくから受け取ってくれ。」


ギルマスの部屋を出て受付に戻った。


「こちらが魔の森までの地図になります。それと、こちらは王都の地図です。お勧めの宿は南門のそばの『うさぎの宿』、お勧めの食堂は『マカロン亭』です。それでは旅のご無事を祈っております。」


なかなか気の利いた受付嬢だった。

街の地図はありがたい。

地図を頼りに武器屋、防具屋、道具屋をまわり、こっそり解析させてもらった。

服屋と市場も回った。

それとこの街には奴隷の店も存在した。

奴隷が合法であることはクリスから聞いていたので分かっていたが嫌な気分になった。

メイに危害が及ばないようになるべく俺のそばにおき、みんなでガードする隊形を組んだ。


「真治、もしかすると私の村から攫われた子がいるかもしれないから見に行ってもいいかな?」


「構わないが、メイを奴隷のような目で見られるかもしれないぞ。大丈夫か?」


「大丈夫。知り合いが居たら救ってあげたいの。ダメかな?」


「いいぞ。今ならお金もあるし、たぶん救ってあげられるだろう。」


ガード隊形を崩さず、奴隷店へ向かった。

奴隷店は裏通りにあった。

思っていたような感じではなく、非常にきれいで豪華な店構えだった。

貴族も買いにくることがあるので当然なのかもしれない。

中へ入ると執事のような恰好をした店員が近づいてきた。


「いらっしゃいませ。どのような奴隷をお探しでしょうか?」


「そうだな。獣人の子供はいるか?」


「数は多くありませんが、何頭かはおります。」


何頭という言葉にイラっとしたが我慢した。


「それじゃあ、全員見せてくれ。」


「かしこまりました。準備をいたしますので少々お待ちください。」


10分ほど待たされたあと、応接室に案内された。

部屋に入るとボロ雑巾のような布しか着ていない獣人の少女が立っていた。

痩せこけており、とても良い環境には居ないことが分かる。


「これが当店で現在所有している獣人の子供です。左から犬獣人8歳、猫獣人12歳、竜人13歳、エルフ15歳です。お気に召したものがおりましたでしょうか?」


店員に気付かれないように吟味しているような雰囲気を見せながら念話で話しかけた。


『メイ、猫の子は村の子か?』


『知らない子でした。でも、この子たちを助けてあげたいです。』


『わかった。任せろ。』


獣人の少女に優しく微笑み、念話で語り掛けた。


『こんにちわ。俺は真治という。店員に気付かれないように聞こえていたら頷いてくれ。』


4人とも小さく頷いた。


『俺は君たちを全員買い取ろうと思う。でも無理強いはしない。俺は冒険者だ。場合によっては戦闘を行ってもらうかもしれない。それでも良いならまた頷いてくれ。』


また4人とも小さく頷いた。


「ちなみにいくらだ?」


「左から10金貨、10金貨、60金貨、70金貨になります。竜人、エルフは貴重なのでちょっと高めです。」


「そうか、じゃあ全員貰おうか。150金貨、置いておくぞ。」


「え?! 全員ですか? では少々お待ちください。奴隷契約の準備をしますので。」


「それは構わない。契約の方は俺が魔法を持っているから大丈夫だ。手続きだけを頼む。それとこの子たちの荷造りと外に連れ出せるような衣服を頼む。」


追加で4金貨渡して準備をさせた。

30分ほど待たされたが、少女たちは白のワンピースに着替え戻ってきた。


「真治だ。今日からお前たちの主人になる。それじゃ、行くぞ。」


店を出て、人通りの無い裏通りに向かった。

周囲を確認し、ゲートをクリスの部屋につないだ。

先に蒼の絆のメンバーが通りぬけ、メイに促され獣人少女たちもゲートを潜った。

最後に俺が抜けてゲートを塞いだ。


「クリス、ただいま。この子たちを紹介するね。奴隷店にとらわれていた子たちなんだ。この子たちの面倒を見ようと思う。よろしく頼む。」


「わかったわ。とりあえず、城のメイド見習いになってもらおうかしらね。」


「そういえば名前を聞いてなかったな。教えてくれるか? あと、奴隷紋を消してやるから集まってくれ。俺はお前たちを奴隷としては扱わないから自由にして構わんぞ。」


「私は犬獣人のパンです。8歳になります。よろしくお願いします。」


「パンだな。よろしくな。んじゃ、奴隷解放っと。これでパンは自由だ。」


「うちは猫獣人のサクラです。12歳です。よろしくです。」


「サクラだな。うちにも猫のメイがいるんだ。可愛がってもらえ。奴隷解放っと。」


「ご主人様、初めまして。私は竜人のカリンと申します。多少剣術の心得がございます。お役に立てるよう頑張りますので見捨てないでください。お願いします。」


「そうか、じゃあカリンには冒険者になってもらおうかな。奴隷解放っと。これでもうご主人様と呼ばなくても良いからな。真治と呼んでくれ。」


「最後にエルフのサリンです。弓と風魔法が使えます。できれば私も冒険者になりたいです。よろしくお願いします。」


「そうか、わかったぞ。サリンも奴隷解放っと。パンとサクラはメイドさんで良いか?」


「「私たちも真治さんのそばで冒険がしたいです!」」


「クリス、そういうことらしい。とりあえず、冒険者として育ててみるわ。」


『ティア、そういうわけなんで。メリーナ様に加護をお願いしといてくれ。』


『了解です。あと、彼女たちの衣服や装備も準備しておきますね。』


『よろしく頼む。』


「ちなみにここはさっきまでいたマーレン王国の隣にあるハワード王国の王城だ。そして、そこにいるクリスはここの第4王女だ。ちなみに俺の婚約者だ。そして、こっちにいる7人は蒼の絆というクランに所属した俺のパーティメンバーだ。お前たちも蒼の絆に所属してもらう。明日、ギルドに行って冒険者登録とクラン登録をしてこよう。」


王女と聞いて4人は平伏した。

慌てるクリスを見てみんなで笑った。


「それじゃ、我が家に帰るか。」


クリスの部屋の壁にルームを起動した。


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