第2話 最初の村に到着

『マスター!』


「うぉ! なんだ?」


『マスター! 私は叡智です。マスターの世界でいうと人工知能のAIみたいなものです。よろしくお願いします。』


「よろしくね。それで君は何ができるのかな?」


『あ。私とは心の声で会話できるので、声に出さなくても大丈夫ですよ? 静香ちゃんが変な目でみてますよ。あと、私のできることですが女神メリーナ様の記憶にアクセスし、この世界のことを調べることが可能です。また、マスターのスキルを使ってフォローすることもできます。』


『なるほどね。よろしく頼むね。』


「静香ちゃん。今ね、神様から貰ったスキルと会話してたんだ。ちょっと待っててね。」


『それでこれからどうすればいいかな。北へ向かえって言ってたっけ?』


『すぐに向かうとゴブリンに出会う可能性があるので、ここのスライムを狩って少しレベアップした方がいいと思います。まずは創造でナイフを作ってください。静香ちゃんには杖を作ってあげてください。』


スキルの使い方は何となく頭に浮かんできた。


「創造発動、ナイフ作製。」


足元にナイフが落ちてきた。


「創造発動、杖作製。」


同じように杖が現れた。静香ちゃんに渡した。

静香ちゃんは杖を握り、ブツブツ呪文を唱え始めた。


『パーティ編成を作成し、静香ちゃんとパーティを組みました。泉の畔にいるスライムの核をナイフで突き刺してください。』


「静香ちゃん、泉にいるスライム目掛けて呪文をぶつけてみて。」


静香ちゃんは頷き、スライムに向けてファイアボールをぶつけた。

ジュワという音とともにスライムが消し飛んだ。

俺も負けじとナイフで核を突き刺した。

数匹倒したところでレベルが上がった。

静香ちゃんもレベアップしたようだ。

そのまま周囲に居たスライムを狩りつくし、レベル5まで上げた。

2人で世界樹に触れて、行ってきますとお別れの挨拶をすると身体が癒された。

そして、世界樹の加護(HP、MP回復速度UP、治癒)が着いていた。


『それでは北に向かいましょう。ゴブリンにナイフでは厳しいので短剣を作ってください。盾もあった方が良いでしょう。ゴブリンは女の子を攫いますので静香ちゃんをしっかり守ってくださいね。』


「静香ちゃん、集落に向かおう。」


しばらく歩いたがまだ集落は見えてこない。

ときどきスライムが居たのでチクチク狩っている。

すると草むらからゴブリンが飛び出してきた。

緑の身体、大きな耳、発達した犬歯、するどい爪、子供ほどの背丈の小鬼だった。

爪攻撃を盾で防ぎ、短剣で喉を貫いた。


『おめでとうございます。討伐成功です。討伐証明の左耳を切り落としてください。あと、心臓付近に魔石があるのでそれも採取しましょう。売れます。』


静香ちゃんは立ち尽くしていた。

やはり人型の魔物を殺したのはショックだったのだろう。

これから解剖するんだけど大丈夫だろうか?

あれ? 急に気持ちが落ち着いてきた。


『精神耐性を獲得しました。スキル付与も獲得したので静香ちゃんにも精神耐性をつけてあげて。』


静香ちゃんの手を握りスキル付与を発動し、精神耐性を付与した。

静香ちゃんの顔色が良くなった。


『気配感知、マップを取得しました。周囲に結構な数のゴブリンが居ますので気を付けてください。』


ナイフで手早く耳と魔石を採取し、先を急いだ。


「静香ちゃん。敵が多いので離れないでね。」


静香ちゃんも慣れてきたのか魔法で支援をしてくれた。

2、3匹なら一度に対応できるようになった。

マップからするともうじき集落が見えるはずだ。

すると目の前を何かを担いだゴブリンの集団が通り過ぎた。


「今の女の子じゃなかった?」


『今のゴブリンの集団を追跡できるか?』


『了解、追跡します。南南西に向けて逃走中です。』


マップと叡智のナビを頼りに女の子を助けに向かう。

やっと集団が見えてきた。

拘束魔法がほしいな。

脳裏に浮かんだ魔法を唱える。「バインド!」

少女を抱えていたゴブリンたちが転んだ。

追いついて動けないゴブリンどもを刺殺した。


「大丈夫かい?」


声をかけた瞬間に、言葉が通じるのかと心配になってハッとした。


「助けていただきありがとうございました。」


良かった。通じているようだ。

最初に貰ったスキルの言語のおかげらしい。

良く見ると獣の耳が頭に生えてた。

ケモミミ少女だ!

最初に出会った異世界住民は獣人少女だった。


「無事でよかったよ。俺たちはこの近くにある集落を目指していたのだが知ってるかい?」


「おそらく、その集落は私の暮らしている村だと思います。案内しますね。」


獣人少女に着いていくことにした。

そっと鑑定してみると、


『猫獣人:メイ、14歳、少女』


ステータスやスキルは無いようだ。

村が見えてきた。

村は木の柵で覆われた小さな村だった。

ふと静香ちゃんを見てみると森を抜けてきたので泥だらけだった。

なんとかしてあげたいと思ったらクリーンを覚えた。

自分で確かめてみると泥だらけの衣服や汗くさい身体が綺麗さっぱりした。

静香ちゃんにもかけてあげるときれいになった。

めちゃくちゃ喜んでいた。


「最果ての村ドリーミーにようこそ。まずは村長に挨拶をお願いします。」


メイが村長宅に案内してくれた。


「わしがこの村の村長だ。ここは世界樹を守るエルフと獣人の村だ。わしの娘のメイを助けてくれて本当に感謝している。ただ、この村の住人はヒューマンを嫌っている。問題を起こさないように頼む。」


ヒューマンはここに住んでいるようなエルフや獣人を奴隷のように扱うそうだ。

時折、奴隷狩りと言って村を襲うことがあるらしい。

そりゃ嫌われるわな。

旅の準備をしたら、なるべく早く立ち去った方が良さそうだ。


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