幼馴染の娘と世界樹の導きで異世界転移? 俺が勇者ですか? 魔王討伐なんて無理です!

蒼い空

第1話 プロローグ

ある春の晴れた朝、小鳥のさえずりに目が覚め、ベランダに出た。

俺の名前は小鳥遊 真治。

疲れ果てた会社員の38歳だ。

未だ独身を貫いている。

俺にだってモテた時期もあった。

その時に結婚していればと思うこともある。

いまさら結婚願望はない。


「なんて気持ちの良い目覚めなんだろうか。」


久しぶりの気持ちの良い朝だ。

隣の家のベランダにも人影が。

幼馴染の娘さんが洗濯を干していた。

確か今年、高校に入学したんじゃなかったかな?

最近、あいつに似てきた気がする。

幼馴染の春菜だ。

娘の名は確か静香だったと思う。

もし春菜と結婚していたら今頃あの子ぐらいの子供がいてもおかしくないかな。

そんなことを思っていると小鳥がベランダの隅に舞い降りた。

すぐに何か落として飛び去った。


「種かな?」


なぜか無性に種を植えなければという衝動にかられ庭に埋めた。

翌日、もう芽が出ていた。

1週間ほどで背丈ほどの大きさの木に成長した。

速すぎじゃね?と思ったが仕事が忙しく、木のことを忘れてしまった。

ふと外を見ると窓から見慣れない木が見えた。

すっかり忘れていた俺はめちゃくちゃ驚いた。

ベランダに出て確かめると生えてる場所からあの日植えた種から育った木だと気づいた。

隣のベランダに静香ちゃんが居た。


「その木の成長速いですね。見るたびに大きくなっているみたい。」


急に声を掛けられて驚いた。


「そうなんだよ。でも、何の木なのか分からないんだよね。」


「ちょっと見に行ってもいいですか?」


「どうぞ。」


静香ちゃんを迎えに玄関に向かった。

門を開け、庭の木の場所まで案内した。


「そばで見ても何の木かわかりませんね。葉の形も珍しいです。」


「そうなんだ。綺麗な花が咲くといいんだけどね。」


「なんか根元に穴がありますね。」


「ほんとだ。なんの穴だろうね。」


手を突っ込んでみると急に吸い込まれた。

やばいと思った時にはもう肩まで入ってしまっていた。

静香ちゃんが慌てて引っ張ってくれているがどんどん吸い込まれていく。

そのままツルルンと体全体が飲まれてしまった。


気が付くと大樹の根元で眠っていた。

周りを確認すると見たこともない世界が広がっていた。

目の前に泉があり、泉の周りには虹色に輝く森林が広がっていた。

ここはどこなのだろうか?

太ももに重みを感じ下を見ると静香ちゃんが眠っていた。


「巻き込んじゃったか。ごめんね、静香ちゃん。ごめん、春菜。」


「ううん。あれ? ここはどこ? あなたは誰?」


「え? 隣のおじさんだけど?」


「え? おじさん? 同い年くらいなのに何を言っているの?」


「は? こっちこそ、何を言ってるんだい、静香ちゃん?」


「え? なんで私の名前を知っているの?」


「だから、隣のおじさんだってば。」


あれ? 穴を抜けるときキズだらけになって顔が分からないのかな?

近くにある泉で顔を洗うことにした。

泉に映った自分の顔を見て驚いた!

若返ってた!!!

どういうことなんだ? 混乱する俺を静香ちゃんが心配そうに見ていた。

すると泉の中からゼリー状の物体が出てきた。

何だこれは!と思うと脳内に声がした。


『スライム:ゼリー状の魔物。物理攻撃耐性あり。核が弱点』


「え? スライム?!」


静香ちゃんからへ?って声がした。

大樹を見上げると、『世界樹』と答えた。

あれ? もしかして鑑定スキル?

というか、ここって異世界ってことか?

なんとなく理解してきたので静香ちゃんに説明してあげることにした。


「あの木の穴を抜けて異世界に転移してしまったらしい。なぜか俺は若返っているのだが。俺はお母さんの春菜と幼馴染の隣のおじさんの真治だ。巻き込んでしまってごめんね。」


「おじさんなの? 異世界転移?」


「静香ちゃんはラノベとか読んだことある?」


「web小説でちょっとだけなら。私はラブコメ派なんですが、友達の勧めでファンタジー系も読んだことあります。なんかモフ好き主人公がスローライフする話でしたが。」


「ちょっとズレているけど、まあそんな感じかな。まだわからないけど、スライムがいるということは魔物がいる世界なんだろうね。そして、その大樹は世界樹という木なんだ。この木がうちの庭の木とつながって俺たちを運んでしまったみたいだ。」


「じゃあ、この木を調べれば帰れる方法が分かるかもしれませんね。」


「そうだね。探してみよう。」


世界樹の周りを調べていると木の根元が光った。

そして、少女が現れた。


「妖精さん?」と静香ちゃんが呟いた。


「いや、わらわはこの世界の創造神のメリーナじゃ。叡智の神でもある。お前たちには使命があるのでまだ帰られては困るのじゃ。魔王を倒してほしいのじゃ。勇者、真治よ。賢者、静香よ。」


テンプレキター! 魔王討伐かよ。

じゃあ、お約束の展開に。


「私たちは一般人です。魔王を討伐する力なんかありません。元の世界に帰らせてください。」


「では、力を与えるとしよう。すでにお前たちには鑑定と収納、言語のスキルを与えておる。他に欲しいスキルがあるのなら言ってみよ。」


異世界転移3大スキルはもらっているらしい。

じゃあ、やっぱり創造かな?


「私は神様のスキルがほしいです。」


「創造と叡智か? まあ良いか。では、静香はどうする?」


「私は賢者なので、全魔法適正をお願いします。」


「全部とは、顔に似合わず欲張りじゃの。まあ良い。こちらからお願いしている立場じゃしのお。あと、わらわの加護もつけておく。それでは頼んだぞ。ここより北に向かうと集落がある。そこで旅の準備をするが良い。お前たちの活躍を期待しておるのじゃ。」


神は光となって消えていった。


異世界と分かればお約束の呪文、ステータスオープン!


*ステータス

 名前: 小鳥遊 真治(勇者)

 性別: 男

 年齢: 16歳(38歳)

 レベル: 1


 HP: 100

 MP: 50

 STR: 100

 DEF: 80

 AGI: 80

 DEX: 80

 幸運: 200


 スキル

  鑑定、収納、言語


 ユニークスキル、加護

  創造神の加護(成長促進)、叡智神の加護(スキル取得率UP)、

  創造(スキル、アイテムを生み出す)、叡智(使い魔)


装備

 武器: なし

 頭: なし

 手: なし

 体: ジャージ

 足: スニーカー


*ステータス

 名前: 早乙女 静香(賢者)

 性別: 女子

 年齢: 15歳

 レベル: 1


 HP: 100

 MP: 120

 STR: 50

 DEF: 60

 AGI: 60

 DEX: 100

 幸運: 200


 スキル

  鑑定、収納、言語


 ユニークスキル、加護

  創造神の加護、叡智神の加護、全魔法適正


装備

 武器: なし

 頭: 魔力のカチューシャ(魔力上昇)

 手: 慈愛の指輪(回復力上昇)

 体: ワンピース

 足: スニーカー


静香ちゃんのカチューシャと指輪がファンタジー設定になってるぞ!

寝起きの俺は無防備です。

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