第45話 料理人を雇いました

歓迎会が終わり、俺は一人2階のテラスに椅子を出し空を見上げていた。

やっぱり星座は違うんだなとしみじみ思う。

どこにも北斗七星やカシオペア座は見つからない。

月並みに大きな惑星もある。

ゆっくり空を見るのは初めてかもしれない。

すると背後から声がした。


「何をしているのですか?」


「ああ、静香か。こっちに来て随分と経ったなと思ってね。それに家まで建ててしまった。もう向こうに帰らなくてもいいかなとも思えてきたよ。でも俺には忘れてはいけないことがある。あいつから一人娘を奪ってしまったのだから。それがずっと引っかかっているんだ。」


「ママのことだね。ママは私が幸せならば喜んでくれると思うよ。だから私を幸せにしてね。」


「もちろんだ。俺の命を懸けてもお前を幸せにするよ。」


「ふふふ。なんかプロポーズみたいよ。」


「あはは。そうだな。」


「私はみんなと一緒で、真治と一緒で幸せだよ。」


「そうだな。俺も幸せだ。そろそろ湯冷めするから部屋に入ろう。俺は家に結界を張ってから寝るよ。」


「うん。じゃあ、おやすみ。」


俺は庭を含め、我が家を囲む結界を張った。

念のため、鈴音とリッカには番犬代わりに庭で待機してもらった。

そして、俺は自室に戻りベットに潜り込んだ。

当然のようにパンが俺のベットで寝ていた。

仕方ないな、でもおねしょはするなよ。


次の日、朝飯を作りながら思った。

なぜご主人様の俺がメイドさんの分も含くめ朝飯を作っているのだ?

そうだ、料理人が居ないのだ。

これでは俺が毎日全員分を作ることになってしまう。

また奴隷店に料理人を雇いに行くか。


『マスター。料理人でしたらマーレンの奴隷店がお勧めです。創作料理の天才がいます。材料を無駄に使うため、前の主人に材料費を請求され奴隷落ちしたそうです。あと、元食堂のおばちゃんも居ますね。その2人を雇いましょう。それからメイさんを連れて行ってください。メイさんの知り合いが奴隷店に返却されました。ケガをしているので助けてあげましょう。』


朝飯を食いながらメイにマーレンに行くことを伝えた。

早速、転移しマーレン王都の奴隷店に向かった。


「先日はありがとうございました。何か不備がございましたでしょうか?」


「いや、今日は料理人を探しにきたんだ。」


「なるほど、数名おりますが男女の指定はありますか?」


『ティア、料理の天才は男かい?』


『女性ですよ』


「女性で頼む。うちは年頃の美人な娘が多いからな、男を家に入れるのは心配なんだよ。」


「承知いたしました。少々お待ちください。」


4人の料理経験者を連れてきた。

ヒューマンだけがウェートレス?って感じだが。


No.1 熊獣人 30歳 元食堂のおばさん

No.2 ヒューマン 20歳 元食堂店員

No.3 ハーフエルフ 25歳 元貴族に仕えた料理人 

No.4 牛獣人 15歳 宿屋の娘、食堂の手伝い経験あり


No.1とNo.3がティアのお勧めだろう。

No.4の乳牛さんも気になる。

男の子だから仕方ないよね。


「おいくらかね?」


「それぞれ15金貨になります。お気に召されたものはございましたか?」


「2番さん以外の3人をもらおうかな。」


「え!? 私はダメでしょうか。。。」


2番さんがすごく落ち込んでいる。


「君は料理の経験が無いようなので外したのだが、特技とかはあるのかい?」


「私には料理の知識があります。作る方は正直あまり自信がありません。ですが、私の趣味は食べ歩きです。いろいろな国を渡り食べてきました。知識でしたら誰にも負けない自信があります。」


「なるほど、その意気込みが気に入ったので君もうちに来てくれ。」


「ありがとうございます。旦那様のお役に立てるように頑張ります。」


「それでは60金貨になりますね。今回も契約の更新はよろしいですか?」


「大丈夫だ。それとここに猫獣人の子はいるか?」


「居ますが、今は1人だけですね。しかも、昨日返却された子でひどいケガをしています。お見せしましょうか?」


「ああ、頼む。」


傷だらけで虫の息の猫獣人の子が連れてこられた。

すぐにヒールで死なない程度に傷を癒した。

隣のメイの手を握り、今は黙っておけと合図した。


「すまん。あまりにもかわいそうだったのでヒールを思わず掛けてしまった。」


「いえ、問題ございません。逆にありがとうございました。私どもにはもうこの子にポーションを与え回復させることはございません。死を待つのみです。かわいそうに虐待されたのでしょうね。返却された時点ですでにこのような状態でした。」


「この子をうちで預かっても良いか? 俺には回復魔法があるので少しは楽にしてあげられると思う。いくら渡せば良い?」


「え? では1金貨でいかがですか? 名義変更の手続き代だけで結構です。」


「わかった。ではこの子も頼む。」


「今日から主人となる真治だ。5人ともよろしく頼む。それじゃ、我が家に向かうぞ。着いてこい。」


ケガをした猫獣人の子を抱っこして店を出た。

路地裏でゲートを起動し我が家の庭につないだ。


「ここがこれから君たちの家となる私の家だ。しっかり働いてくれよ。」


「「「はい!」」」


とりあえず、リビングへ向かった。


「まずはメイの知り合いの子のケガを治すとしよう。」


外傷もひどいが骨も折れているようだ。

可愛そうに。


「マリちゃんを助けてください!」


「大丈夫だ。任せろ。」


念のためパーフェクトヒールを唱えた。

全身のケガ、キズが消えていった。

骨も無事つながったようだ。

少女の意識が戻った。

きゃああああと悲鳴を上げて蹲った。


「もう大丈夫よ。マリちゃん、私よ。村長の娘のメイよ。わかる?」


「メイねえちゃん? メイねえちゃんなの? うわあああん。怖かったよー」


「ヨシヨシ。もう大丈夫よ。真治さんが守ってくれるからね。」


そこは私が守るからだろうよ。


「マリちゃん、初めまして。俺の名前は真治だ。メイのお友達だ。よろしくね。」


「うん。マリです。よろしくお願いします。」


他の4人にも自己紹介をしてもらった。

ミートさんには料理長をやってもらう。


ミート 熊獣人 30歳 元食堂のおばさん、料理長

ミッシェル ハーフエルフ 25歳 元貴族に仕えた料理人、創作料理の天才

ハルカ ヒューマン 20歳 元食堂店員、食通

ミルク 牛獣人 15歳 宿屋の娘、食堂の手伝い経験あり、巨乳

マリ 猫獣人 10歳 メイの知り合い


「君たちにはうちのキッチンを任せたい。それに俺の国の料理も教えるので覚えてほしい。あと、材料、調味料はだいたい俺が持っているので遠慮なく言ってくれ。そして、君たちを俺は奴隷としては扱わない。従業員として扱うのでそのつもりでいてくれ。給金は月金貨1枚ね。不服のものは居るか?」


お金がもらえると聞き驚いている。

奴隷から解放した。


「それとゲートを越えてきたからわかってないと思うが、ここは先ほどまでいたマーレンではない。ハワード王都だ。」


さらに驚いている。

声も出ないようだ。


「一応、自己紹介しておくね。俺はSランク冒険者だ。それと伯爵でもある。それに女神メリーナの使徒の勇者だ。あと、そのうち会うと思うので言ってしまうが第4王女のクリスタルの婚約者でもある。」


「伝説の勇者様。。。」


みんな同じ反応するな。

伝説の勇者では無いだが。


「それじゃ、君たちの職場となるキッチンに案内する。」


見たことのない調理器具と設備に唖然としている。

ただ一人、創作意欲と未知なる設備に興奮するミッシェルだった。

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