第13話 盗賊団

屋内射的練習場の奥の壁にゴブリンと同じサイズぐらいの藁の案山子を設置した。


「メイ、あの案山子を狙って打ってみてくれ。矢をここにセットして引き金を引けば矢が飛んでいく。」


「はい、やってみますね。」


あさっての方向に矢が飛んで行った。

しかし、数十分過ぎると矢がまっすぐ飛ぶようになり案山子に当たり始めた。


「次は頭付近を狙って打ってみて。」


少し過ぎると急に命中率が上がってきた。


「あっ、弓術を覚えました。」


弓術を覚え、ホーミングを併用することですべて命中するようになった。

実践でも使えるレベルに上達した。

しかし、矢の消費が激しい、矢をセットする時間がかかる。

それで改良を加えることにした。

まず矢を自動装填するように矢を収めたカセットを装備した。

次に矢が自動的に転移し戻ってくるようにしてみた。

これで連射できるし、矢の消費も減った。

根本的に矢ではなく、魔力の矢(風の矢)をセットするようにした。

しかし、メイの魔力は少ないので魔力は魔石から得るよう改良した。

魔力が空になったら乾電池のように魔石を取り換えれば良いのだ。

改良を重ね、メイのセカンド武器は風の矢を連射するボーガンとなった。


次の日、外は晴れていた。


「みなさんに報告があります。ショップで買い物をし過ぎたために所持金がやばいです。今日は依頼を受けにいくよ!」


朝一でギルドへ向かった。


「おはようございます。真治様。先日は大量のミノタウロスの納品をありがとうございました。それで、ギルマスから来店した際には話がしたいから連れてきてほしいと言われておりました。申し訳ございませんが面談をお願いします。」


仕方なく、受付嬢とギルマスの部屋に向かった。

ちなみにこの受付嬢さんのお名前はカレンさんだ。

俺たちの担当受付となったそうだ。

俺たちは、いろんな意味で目立ってしまっているそうだ。


「カレンです。真治様をお連れしました。」


「おう、入れ。」

「おはよう。朝から態々悪かったな。まずはミノタウロスの納品ご苦労だった。それでだが、Cランクのミノタウロスをあんなにたくさん納品されてはDランクにしておくわけにはいかんだろう。ランクアップしたばかりだがCランクに上げることにした。カレン、カードの更新を頼む。」


「俺たちにとっては稼ぎの良い上のランクの依頼が受けれるようになるので特に問題ないですよ。デメリットがあるのですか?」


「そうだな、何か大きな問題が発生したときには強制参加の義務が発生するくらいだ。例えば町が魔物の群れに襲われたとかな。」


「まあ、そのくらいならいいですよ。」


「あと、Cランクからは護衛依頼も受けれるようになるからな。それとダンジョンへの出入りも自由だ。メリットとしてはそのくらいかな。詳しいことはカレンに聞いてくれ。」


「了解です。では、俺たちは稼ぎに行ってくるので。」


「そうだ。まだ掲示してないがオークの集落殲滅ってのがあるが受けるか? 結構でかい村のようだから恐らく上位種が統率していると思う。危険ではあるがオークの上位種は高く売れるぞ。それに成功報酬は10金貨だ。なかなかの良い依頼だろ?」


「それを受けます。やっぱ上位種はうまいんですか?」


「そりゃもちろんうまいさ! んじゃ、この依頼書をカレンに渡せ。」


カレンさんから新しいカードを受け取りギルドを出た。


『ティア、目的地の登録とナビよろしく』


門を出て、目的の森へ向けて出発した。

前回のミノタウロスとは逆方向のため転移が使えない。

地道に自転車で移動する。


「あっ! 前方から人の気配がする。静香、自転車隠して!」


少しすると前方から馬車が猛スピードで向かってきた。

豪華な馬車だった。

貴族の馬車かもしれない。

すると後ろから剣を振り回しながら馬に乗った如何にも盗賊という集団が追いかけてきていた。

これは助けるべきよね?

馬車が通り過ぎたあと、アイスカーペット唱え、道をアイスリンクに変えてやった。

馬は氷でスリップし、乗っていた盗賊たちは次々と落馬した。

そして、倒れた盗賊をバインドで拘束した。

安全と分かり馬車は停止し、中から明らかに金持ちという風のドレスを着た女性が降りてきた。


「助けていただきありがとうございました。わたくしは第4王女のクリスタルと申します。この度のご恩は忘れません。きっとお力になると誓います。何か困ったことがございましたらご協力させてくださいませ。」


予想以上にやばい相手だった。


「はい。私は真治と申します。そこの町で冒険者をしています。それでこの盗賊たちはどういたしましょうか?」


「この盗賊は恐らく指名手配されている集団だと思われます。町の守衛さんに渡せば報奨金が貰えると思いますよ。」


「じゃあ、こいつらを連れて町に戻ることにします。」


「では、私の護衛も兼ねて町にご一緒していただけませんか? もちろん、依頼として報酬もお支払いしますので。まだ町まで多少距離がございますのでまた盗賊に襲われないか心配なのです。」


「わかりました。では、ご一緒します。」


道端の木を切り倒し、簡単な荷車を作成した。

そこに拘束した盗賊10名を押し込み、町まで戻ることにした。

俺は荷車を引きながら先導した。

しばらくして門が見えてきた。


「門番さん、盗賊を捕まえたんです。引き取ってください。」


「さっき出ていったばかりなのに戻ってきたと思ったら、盗賊を捕まえたのかよ。お前は本当に驚かせるな。手続きをするからギルドカードを出してくれ。」


初めて町に来たときにお世話になった門番さんだった。


「え? お前、数日前に登録したばかりの初心者冒険者だったよな? なんでCランクになってるんだよ!」


「いろいろあってこうなってしまいました。」


「まあいいや。こいつら指名手配されている盗賊団だったよ。この札をギルドに提出してくれ。報酬が貰えるはずだ。」


「わかりました。あと、後ろの馬車に王女様が乗ってますよ。早く行ったほうがいいですよ。」


「何!! なんでこんな町に来たんだよ。それじゃ、これからもがんばれよ。」


数時間前に出たギルドに戻ることにした。


「あら? 真治さん、忘れ物ですか?」


「いえいえ、目的地に向かう途中で盗賊に会いまして、捕まえたので戻ってきたんです。これが門番さんから渡すように言われた札です。」


「え?! 盗賊を捕まえたんですか? しかも指名手配犯じゃないですか! 手続きをするので待っててください。」


少し待っているとギルマスが現れた。


「お前たち、本当にいろいろやってくれるな。それで報酬だが金貨5枚だ。まだ説明していなかったが、盗賊は殺しても罪にはならないし、報酬も支払われる。生きていたほうが奴隷に売れるので報酬はあがるのだが、無理して捕らえる必要はないからな。」


5金貨あれば当分はショップでの買い出しに問題ないだろう。

オーク村の殲滅は急がなくても良くなった。

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