第35話 マーレン王都へ
クリスがまた長く離れるのは嫌だと駄々をこねる。
可愛い奴め。
そこで、クリスの部屋と俺のルームをつなぐゲートの扉を作ることにした。
魔力も増えたので常に異空間を維持することも可能になった。
俺が居なくてもルームは異空間に存在する。
まあ、管理はティアに任せているのだが。
だから、クリスが俺が居なくても自由に入れるようにしたのだ。
もちろん、セキュリティはかけた。
王様と王妃様、クリスの3人だけがゲートを通過できる。
もし、敵襲があってもゲートを通じて避難することもできるだろう。
「それじゃ、行ってくるよ。」
「お気をつけて。」
「まあ、夜には戻るけどね。」
「鈴音、よろしくね。」
鈴音に跨り、空へ。
隣の国の王都に向けて出発だ。
数時間飛ぶと山脈が見えてきた。
この山を越えれば隣の国、マーレン王国だ。
王都まではまだまだ先だが。
但し、国境を超えるため一度陸路に替える。
前回の失敗を踏まえてだ。
馬車を出し、リッカを召喚した。
鈴音にはルームで待機してもらう。
「リッカ、悪いな。国境の検問を超えるときだけ頼む。また、どうやってここまで来たんだって言われるのが面倒でな。国境を越えた印をもらいたいんだ。」
そのまま馬車で検問を越えた。
ギルドカードを渡し、国境を越えた記録を登録してもらった。
国境を越え、森に入って見えなくなったところで馬車を収納し、リッカと鈴音を交換した。
このまま王都に向けて出発だ。
予定では日が沈む前には王都にたどり着くはずだ。
すると湿地帯が見えてきた。
『マスター、その湿地帯にウナギが生息していますよ。ウナギも魔物ですが味は向こうのウナギとかわりませんよ。蒲焼が最高です。』
『何! それは採取せねばならん!』
「鈴音、あそこの湿地帯に降りてくれ。」
湿地帯にある一番大きな沼の岸に降り、マップを起動した。
残念なことに水中、地中の探索はできないらしい。
マップにウナギの反応は無かった。
そこで新たに魔法を作ることにした。
『ティア、魚群探知機のような機能を持ったマップを作ってくれ。』
『了解です。スキル『ソナー』を作りました。手を水中に入れてスキルを発動してください。』
ソナーを起動すると魚群探知機のような凹凸が分かるだけではなかった。
水中カメラで撮影したような映像で見えてきたのだ。
ティアさん、優秀すぎます。
これでは広範囲を探索するには不向きなので現状のマップのようなマッピングもできるようにしてもらった。
うわ! いっぱいいる!
ウナギだけではなく、マスやカメ、ワニ、エビ、カニも大量にいた。
全部魔物なのだが。
手を水中に突っ込んだまま最大出力で雷魔法を放った。
感電したウナギなどが皆浮いてきた。
風魔法で浮いた食材の魔物たちを集め、再度雷魔法を浴びせトドメを刺し収納へ放り込んだ。
大量の食材が手に入ったので今日はここまでにし、料理をすることにした。
蒲焼きとひつまぶしを作ることにした。
肝吸いも作った。
ウナギ三昧だ。
早速、パーティメンバーと王族の皆さんも呼んで振る舞った。
涙が出るほど旨かった。
この国ではウナギはヘビに似ているから毒があるのでは?とか泥臭そうという誤解で食べることはなかったそうだ。
「まさかこんなにうまいとは思わなかった。」と王様も驚いていた。
スッポンも一緒に獲れたので、王妃様に明日美容に良いスッポン鍋を作ると約束した。
「うふふ、楽しみにしてますわ。」
「湿地帯まで行ったのであればあともう少しで王都じゃ。実はそこには第2王女を嫁に出しているのだ。元気にしとるかのぉ。」
「では、王城に着きましたらゲートを繋ぎますね。」
「それはありがたい。なかなか会いに行けないから数年ぶりじゃな。」
「そうですね。孫ができていると良いのですが。」
「キングのアレを渡した王女様ですか。キングのものなので恐らく大丈夫でしょう。」
次の日の朝早くから旅に戻った。
もうすぐだということなので街道までは鈴音で、そこから王都までは馬車で行くことにした。
馬車に揺られること数時間、昼前に王都に到着した。
俺だけでは王城に入れないと思ったので、今日はクリスと一緒だ。
「私は、ハワード王国第4王女のクリスタル・ハワードです。近くまで来ましたのでお姉さまにお会いしたく参りました。」
門番は慌てて城へ向かった。
許可が下り、城内へ案内された。
「お久しぶりです、お姉さま。」
「久しいわね、クリス。それにお薬ありがとう。おかげで私のお腹には新しい命が授かったわ。」
「それは良かったわ。そのキングを倒してくれたのがここにいる真治様です。私の婚約者ですわ。」
「初めまして。Sランク冒険者の真治です。よろしくお願いします。」
「あら、あなたが。お薬ありがとうございました。このご恩をどう返したら良いのかわかりません。王と相談してみますわね。」
「いえ、すでに報酬は頂いておりますので結構です。それより、お父様とお母様に妊娠の報告をしてあげてください。」
ゲートを起動し、ハワード王と王妃様を招いた。
「お父様! お母様! 会いたかったですわ。無事、命を授かることもできました。」
「そうか、それはよかった。ありがとう、真治よ。」
「真治様、本当にありがとうございます。両親に会えるとは思いませんでした。我が夫にも会っていただけませんか?」
「了解しました。ご挨拶させてください。」
謁見の間ではなく、プライベートのリビングに案内された。
ハワード王族3人も一緒だ。
「初めまして、真治殿。あのような強力な薬をいただき、本当にありがとう。この感謝の気持ちをどう表したら良いのかわからないほど感謝している。望むものがあれば何でも言ってくれ。本当にありがとう。」
「私は依頼を受け、報酬も頂いておりますのでそれだけで十分です。そうですね、この国での冒険を許可いただければそれだけで十分です。」
「真治よ。この国の秘宝の装備を見せてもらってはどうじゃ? お主ならそれが一番良いのでは?」
「ナイスアイデアです。ハワード王。いかがでしょうか、マーレン王?」
「見るだけで良いのか? 欲しいと言えば差し上げても構わないと思っているのだが。」
「いえ、見るだけで大丈夫です。」
そして秘宝の数々を見せてもらい、解析を行った。
魔装と呼ばれる装備もあった。
ここには伝説の勇者パーティの賢者の装備もあった。
魔法主体の静香、カレン、シルク用の装備の参考にしよう。
今夜はお城で歓迎会が開かれるらしい。
冒険は明日以降になりそうだ。
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