第47話 魔の森へ入場

今朝も確認してみたが、世界樹の化身はまだ現れない。

昨日、料理人たちにいろいろな料理と調味料を教えた。

唐揚げ、ハンバーグが人気だった。

そして気になっていたことを聞いてみることにした。


「ハルカに聞きたいことがあるのだが、米ってこの世界にあるのか?」


「米とは、昨日食べたあの白い粒々のものですよね? ありますよ。」


「やっぱりあるのか! 向こうで読んだ本には家畜の餌で売られてたとかあったが、食用なのか?」


「はい、東の外れの国に似たようなものがございました。昨日のものと比べると、粒が細長くパサパサした感じでしたが。」


「ああ、タイ米っぽい米なんだな。今度行ってみるかな。他の種類の米も栽培している可能性もあるしな。」


新しい目標ができた。

とりあえず、食糧庫という名前のアイテムBOXにオークなどの食料を移した。

見た目は冷蔵庫なのだが、冷蔵しているわけではないので食糧庫と呼ぶことにしたのだ。

大量の食材と調味料を保管した。

もちろん、時間停止付きだ。


「ミートさん。食糧庫の管理をお任せします。足りなくなった場合は教えてください。」


「かしこまりました、旦那様。従業員たちの食事もこちらの食材を使ってもよろしいのでしょうか?」


「もちろんだ。従業員というか、俺はみんなを家族と思っている。遠慮しないでくれ。あと、当面の食費だが50金貨を渡しておくので無駄遣いしない程度に仕入れてくれ。それと今回はお給料ではなく、お小遣いとしてみんなに1金貨ずつ渡しておく。自由にできるお金は必要だろ? 必要なものを買ってかまわないぞ。マリ、買い食いばかりしちゃダメだぞ。」


従業員全員に1金貨ずつお小遣いを渡した。

先日まで奴隷だったので自由になる金など無いのだ。

女の子だからおしゃれにお小遣いを使っても良いと思っている。

メイド長のシーナさんにも何にお金がかかるかわからないので、50金貨を預けておいた。


「それとこのネックレスを渡しておく。これは君たちの命を守ってくれるアイテムだ。肌身離さず着けておいてくれ。」


昨夜作った真珠のネックレスを全員にくばった。

これにはクリスの指輪と同じスキルが付与されているのだ。


真珠のネックレス: 鑑定、状態異常無効、危険予知、念話、カウンターシールド


『聞こえるかな? これが念話というものだ。危険が迫った場合は俺に伝えたいと思いながら心で叫んでくれ。いつでも助けに行くぞ。あと急用ができた場合もこれで話しかけてくれ。』


『はい!!』


綺麗な真珠を見ながらうっとりしている。

こちらの世界には真珠は無いそうだ。

ただ、誰もこのネックレスが伝説級のアイテムだとは知らないのだった。


「蒼の絆の戦闘メンバーは明日から魔の森へのアタックを開始する。準備するように。新メンバーはお留守番だ。ミノタウロスが余裕で倒せるくらいまで訓練所で訓練を繰り返すように。」


『鈴音とリッカ、明日から遠征だからよろしくね。』


『了解です。マスター。』


今日の晩飯はオークのとんかつだった。

変な色をした付けダレがあった。

毒無効があっても付けて食べる勇気はない。

ミッシェルが混ぜ合わせたに違いない。

あとできつく言っておこう。

それにしても牛獣人のミルクは癒しだな。

おっとり系で癒される。そして、巨乳。

膝枕で耳かきをしてもらう妄想をしてしまった。

配膳はソラ、サラ、ミカン、マリのちびちゃんたちのお仕事になったようだ。

頭を撫でて褒めてやると喜んでいた。


次の日の朝、庭を見てみると世界樹が輝いていた。

ついに始まったようだ。

慌ててサーシャとサリンを呼び、世界樹の前に急いだ。

しばらくすると根元の光が強くなり、化身が現れた。

緑の髪をした幼女が立っている。


「そなたが真治で間違いないか? 私は世界樹の化身のメルモだ。」


「はい、確かに私が真治です。」


「そうか、わらわの所有者は真治だ。わらわのできることなら何でも叶えてやるぞ。」


「では、この家を守る結界をお願いできますか?」


「良かろう。それにわらわは己の所有物じゃ。敬語はいらんぞ。」


世界樹は輝きを増し、庭を含む我が家に結界が展開された。


「これで邪悪なものは一切寄り付くことができない聖域となった。それに癒しの効果も増したはずじゃ。骨が折れた程度のケガであれば一晩寝れば治ってしまうぞ。」


聖域って今言ったよね。

大変なことになってしまったようだ。

サーシャもサリンも固まって動かなくなってしまったよ。


「メルモさん。私はこれから魔の森へ修行に行ってきますので家をお願いします。」


「はい、わかった。あと、メルモさんではなく、メルモと呼んでくれ。」


王様に怒られるかな?

王都に聖域が急にできたんだから驚くよね。

クリスにそれとなく話してくれるようにお願いしておこう。

俺は魔の森に逃げることにした。

そして、俺だけマーレン王都に転移した。

そこで鈴音を召喚し、魔の森を目指した。

数時間の空の旅であった。

魔の森の入り口が見えてきた。

魔の森は危険なため、その手前にある町の冒険者ギルドが入場制限を行っている。

鈴音に街道に降ろしてもらい、今度はリッカを召喚して馬車を引いてもらうことにした。

入場許可をもらわないといけないのでゲートを我が家に繋ぎ、全員を馬車に乗せ町を目指した。


「こんにちわ。魔の森に入るためにギルドで入場許可をもらいに来ました。」


「魔の森の手前の町、デビルフォレストへようこそ。冒険者ギルドは正面の大きな建物そうです。お気をつけて」


迷うことなくギルドに到着した。


「デビルフォレスト冒険者ギルドへようこそ。本日はどのような御用件でしょうか?」


「魔の森への入場許可を頂きたい。」


「それでは全員分のギルドカードの提出をお願いします。魔の森へはBランク以上でないと入場できません。って、え? 全員Sランクですか?! 問題ありませんね。許可証を入場門にいる門番に見せてください。あと、素材の買取もこちらでできますのでお帰りの際には立ち寄ってくださいね。」


「出現する魔物の情報とか地図とかあれば教えてもらえないだろうか?」


「だいたいの分布を示した地図はありますが、魔物は動き回っているのであくまでも参考にしてください。それにあまり奥地まで探索を行ったパーティがないので情報が少ないのは確かです。戻ってこなかったパーティが星の数ほどおりますので無理をなさらないでくださいね。」


簡単な地図をもらい、ギルドを後にした。

入場門で許可証とギルドカードを見せると入場が許可された。

早速探索を開始する。

周囲を探知すると無数の狼の群れが待ち構えていた。

門を越えてきた冒険者を襲うために待ち伏せしているのであろう。

目視で確認できる距離まで近づくと緑の体毛のフォレストウルフが複数現れた。


「囲まれてるようだな。それほどレベルの高くないウルフだから油断しなければ大丈夫だが数が多い。久しぶりの戦闘だから肩慣らしにサクッとやっちまうぞ!」


次々と襲い掛かるフォレストウルフを武器や魔法でさばいていく。

数十分後にはウルフの死体の山が出来上がった。

全部収納し、さらに森の奥を目指す。


「この辺りが木の魔物のトレントの生息エリアだ。気配はあるのだが目視で確認できない。おそらく木に擬態しているから気を付けるんだぞ。」


魔力感知で場所を特定し小石を木に投げつけてみた。

すると幹に目や口ができ、根を土の中から出して走って襲ってきた。

怖すぎる!


「幹は素材に必要だからキズ付けるなよ。根と枝を切り落とせ。それか魔石を狙い撃ちにして倒すように。火魔法は絶対禁止だぞ。」


根を全て切り落とすと動かなくなり、目や口も消え、ただの材木となった。

すると周囲に隠れていたトレントが一気に襲い掛かってきた。


「根が弱点だ。根を全て切り落とせ!」


剣と風魔法で次々と襲い掛かってくるトレントの根を根絶やしにした。

高級素材がどんどん向こうから襲ってきてくれる。

自然と笑顔になってしまう。

邪魔にならないようにすぐに収納し、どんどん倒していく。

すぐに目標数が確保できた。

それでも止まらない。

しばらく冒険者が討伐していなかったのだろう。

魔物の数が多いようだ。

こちらとしては素材も経験値もおいしいのでありがたい。

周囲のトレントを狩りつくしたので一旦家に戻ることにした。

仕入れたトレントを使って家具を作製してみることにした。

テーブル、机、椅子、タンスなどいろいろと加工してみた。

木のにおいと木目がすばらしい。

しかも丈夫で腐ることもないそうだ。

通常、固すぎて加工が難しいそうだが俺は魔法で作るので問題無かった。

以前に使っていた通常の木材の家具と置き換えた。

前の家具を捨てるのももったいないので商人ギルドを通して売ろうかと思っている。

せっかくなので商人と知り合いにもなりたいと思っているので明日商人ギルドに行くことにした。

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