第57話 ドライアド

旅の支度をしているとミルクが声をかけてきた。


「ご主人様、どちらかへお出かけですか?」


「ちょっと東の密林にドライアドをスカウトしに行ってくるよ。」


「では、側仕えのわたくしもお供いたします。」


「いやいや。遊びに行くわけじゃないんだから。それに危険だしね。」


ミルクがシュンとした。

ミルクは牛獣人さんだからレベルも上がらないのでこれ以上強くなることはないし危険だ。


『マスター。ミルクさんにメリーナ様から加護が。』


『はぁ? 対応が早すぎないか? まあ、俺のそばに居るからには巻き込まれる可能性もあるし、多少は強くなっていたほうが良いかな。』


「わかったわかった。ミルクも連れてくから泣くなよ。」


「ありがとうございます。だから大好きなのです。お礼に今日はお背中流して差し上げますね。」


確かに汗かいちゃったからもう一度風呂に入ろうとは思っていたが、俺の理性が耐えられるだろうか心配だ。

他の子たちからミルクのスタイルはすごいと聞いていたが、確かにすごかった。

反応してしまったが、フフフと言ったあとは気にしてない感じで身体を洗ってくれた。

明日からは毎日お背中お流しますわと笑顔で風呂場を後にした。


翌朝、馬車には静香、メイ、ミルクと俺の4人で乗り込み、東へ向かった。

道中、魔物の気配があるとメイが馬車から飛び降り、瞬殺して帰ってくるの繰り返しで全く足止めを食らうことなく順調に進んだ。

喉が渇くとミルクがお茶を入れてくれる。

半日くらいすると密林の入り口が見えてきた。

密林の中から魔物の気配をガンガン感じる。


『ティア、ドライアドの生息地までナビよろしくね。』


『了解です。とりあえず真っすぐ進んでください。』


「密林には強くは無いが結構な数の魔物がいるようだ。油断するなよ。」


リッカにミルクを乗せ、リッカに護衛をお願いした。

メイが先頭、静香が後衛、その後ろにリッカ、殿が俺という態勢で進む。

ティアのナビは随時念話で伝えて、進行方向を指示した。

出てくる魔物はゴブリン、ウルフのような雑魚がほとんどだった。

死体を拾っていくのも面倒なのだが、そのまま放置するとアンデット化する場合があるそうだ。

仕方なく、収納に放り込んでいく。

討伐後、自動的にアイテムや死体を収納してくれるスキルがほしいと切望する。


『ティア、なんとかならない?』


『そんな便利スキル無いですよ。でも、スキルの組み合わせで出来そうですね。』


3分後。


『マスター。できました。自動収納という新たなスキルを作りました。メリーナ様の許可も頂きましたので問題ないです。範囲はパーティ内メンバーが狩ったものが適用されます。一応、他のパーティと合同になった場合、全部自動で回収しちゃうと問題になるかもしれないので自動のON/OFFが設定できるようにしてあります。』


『さすがティアは優秀だな。ありがとう。』


早速、自動収納をONにした。

拾う手間が省けたので進行スピードが上がった。

ティアのナビで密林の中を進むと急に視界が開けた。

目の前に池が現れた。

その池の周りを蝶のようなものが楽しそうに飛び回っていた。

鑑定すると蝶ではなく、妖精さんだった。

しばらくすると池の対岸に人型の生物が現れた。


「ヒューマンがこんな森の奥に何の用だ? 私はドライアドの長だ。」


「私の名前は真治です。ドライアドに会いに来ました。うちの果樹園で雇いたいと思いまして、ここまで来ました。」


「ほう。木の番をしてほしいということか。しかし、我々には何のメリットも感じないのだが。」


「では、こちらの無限に水の出るジョーロを差し上げます。木の番をするのに便利だと思います。」


畑担当のハンナさんに頼まれて以前に作っていたのだ。


「これは有難い。雨の少ない時期はこの池から水を汲んで木々に水を与えなければならないのだ。」


「それで我が家に来てくれそうな方はいらっしゃいますでしょうか?」


「うーん。一人、心当たりがある。その子はずっと森の外に出たいと言っているものだ。紹介はしてやるが説得は自分でするのだぞ。」


そのまま森の奥に進み、若い苗木の前に来た。


「サリナ、出てこい。」


長の声で幼い少女が現れた。


「初めまして、サリナちゃん。俺は真治という。君にうちに来てもらえないか誘いに来たんだ。」


「え? お外に連れて行ってくれるの?」


「うん。うちの果樹園の管理を手伝ってくれるならね。」


「いいよー。じゃあ、この宿主の木をあなたの家に植え替えてね。」


「わかった。じゃあ、よろしくね。」


あっさり決まってしまった。

一応、魔物なのでテイムさせてもらった。

丁寧に若木を掘り起こし、収納へしまった。

長に挨拶をしてから転移で家に戻った。

早速、裏庭の果樹園の片隅の日当たりの良い場所にサリナの宿主の木を植え替えた。


「ドライアドのサリナだ。今日から果樹園の手伝いをしてもらうことになった。こっちの2人は小人族のテラサとタラだ。3人とも仲良くしてくれよ。」


森の番人である小人族はドライアドのスキルを知っており歓迎した。

その日から果樹の成長が早まった。

来年の春のは花が咲き、夏から秋には収穫できるようになるかもしれない。


真治 Lv.90 勇者 転移者

静香 Lv.90 賢者 転移者

メイ Lv.88 忍者 猫型獣人

ミルク Lv.20 治療師 牛獣人

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