第63話 クリスの姪 シャーロット
「クリス、久しぶりだな。」
「すいません。最近公務の方が忙しくてなかなか帰ってこれませんでした。」
「いや、そっちがクリスの本当のお仕事なんだから気にしないで良いぞ。それより無理して身体を壊さないようにな。」
「ありがとうございます。それで、真治様にお会いしたいという者がおりまして、いかがでしょうか? 姉の娘なので怪しいものではございませんので。」
「わかった。良いぞ。」
「転移魔法を教えるとゲートをつなげとうるさくなることが予想されますので、馬車で参りますね。」
数時間後。
「ご主人様、クリスタル様とお連れの方が参りましたのでお通しいたします。」
「わかった。ありがとう、アイシャ。」
クリスが門を潜った。
目の前のサクラの木を見上げ唖然とした。
「クリスの叔母様、何ですの! この花は。綺麗ですわ!」
「叔母様は止めなさいと何度言ったらわかるのかしら。それにしても綺麗ね。」
「玄関までずっとお花の道が続いておりますわ。すごいですわ。」
「そうね。私も驚いていますわ。数日前までは無かったのに。」
2人は色取り取りの花に目を奪われ、なかなか玄関に辿り着かないのであった。
『クリス、どこにいるんだい?』
『はっ! ごめんなさい。お花に見とれておりましたわ。すぐにいきますね。』
やっとクリスがリビングにやってきた。
「遅くなりまして申し訳ございません。お庭のお花が素晴らしかったのでつい見とれてしまいましたわ。ご紹介いたしますね。こちらは私の姉の第1王女の娘のシャーロットです。」
「初めまして、シャーロット・ローマンです。今年で13歳になります。よろしくお願いします。」
「Sランク冒険者の真治です。よろしくお願いします。それで、私に何か御用でしょうか?」
「はい、わたくしとも婚約をお願いしたく参りました。」
「はい? えっと、もう一度お願いします。」
「わたくしも、クリス叔母様と同じく婚約者にしてください。」
「また! 叔母様は止めてと何度も言っているでしょ!」
「すでに俺には3人の婚約者がいるんだ。」
「私も説明したのですよ。しかし、どうしてもお会いしてお願いしたいと申しまして連れてきた次第です。」
「わたくしは4人目でも構いませんわ。どこの誰かもわからないおじさまと結婚するくらいなら自分で相手は選びたいですわ。真治様は想像していたよりも理想のお方でした。どうか、よろしくお願いします。」
「まず、クリス以外の2人の同意も必要だ。それに俺には魔王討伐という使命がある。それが終わるまでは結婚は無い。しかも、命がけの戦いになるはずだ。帰ってこれない可能性もある。そこは十分理解してくれ。」
「承知致しております。それでもなおよろしくお願いします。」
静香とメイの同意も得られたそうで、また婚約者が増えてしまった。
数日、我が家で過ごすそうだ。
驚かれると困るので、最初にポチ、サンシャイン、風香、リッカの魔獣4頭を紹介した。
その後はクリスの案内で屋敷内を回ったようだ。
しっかり風呂にも入ってきた。
「旦那様の専用のお風呂もあると聞きました。そちらにも入りたいのですが許可を頂けますか?」
「まだ旦那じゃないんだが。まあ、俺が使っていないときならいいぞ。」
また風呂に入るようだ。
今度は嫁会議もあるそうで、静香とメイも一緒に連れていかれた。
第1王女の夫妻にも挨拶に行かないといけなくなったな。
1時間くらいして、4人が帰ってきた。
「旦那様、わたくし、ここが気に入ってしまいました。こちらで暮らしてもよろしいでしょうか?」
「いやいや、まだ君のご両親に挨拶もしていないのだよ? まずはそこからでしょ?」
「では、お城に向かいましょう。今、こちらに来ておりますので。」
「それは話が早いな。急に緊張してきたぞ。クリスも着いてきてくれるか?」
「もちろんです。こうなったからにはゲートで帰りましょう。」
「ゲート? 叔母様、ゲートとは何ですか?」
「また! この子は何度言ったらわかるのかしら?! 年が変わらないのだから叔母様は止めてって言ってるでしょ!」
ゲートを王城のクリスの部屋に繋ぎ、3人で王様のプライベートリビングに向かった。
シャーロットは、転移魔法は初体験だったようだ。
キョロキョロしている。
「あら、お久しぶりね。真治さん。」
「お久しぶりです。エリザベス様。」
「紹介するわね。こちらがクリスの婚約者の真治様よ。こちらは私の最初の娘のヴィクトリアよ。シャーロットの母になるわ。よろしくね。」
「ヴィクトリア・ローマンです。初めまして。」
「初めまして、真治です。」
「お母様、真治様に了承いただきましたわ。婚約の手続きをお願いしますわ。」
「あらまあ、そうなのですね。クリスもいるし安心ですわ。」
「よろしいのでしょうか? 私にはすでに3人の婚約者がおります。」
「問題ございませんよ。この子の下には息子がおりますので、跡取りもおりますし。シャーロット自身で決めたことですから私は応援しますわ。」
「では、婚約の印に指輪を贈らせていただきます。」
ピンクのトルマリンの指輪をシャーロットに渡した。
もちろん、王族の皆さんにも渡した付与付きの指輪だ。
「この指輪はシャーロットさんを守ってくれるものです。肌身離さず着けていてください。」
「はい、ありがとうございます。大切にします。」
「それは例の付与付きですね。」とクリス。
「そうだね。ちなみにヴィクトリア様もほしいですか?」
「え? 私も頂けるのですか?」
「この指輪には、鑑定、念話、状態異常無効、危険予知、シールドカウンターのスキルが付与されています。大切にしてくださいね。」
「えええ! 国宝級のアーティファクトではないですか! 頂いてもよろしいのですか?」
「はい、どうぞ。」
エメラルドの付与付き指輪を渡した。
「それでは、一応ローマン国王に話をしてから正式に婚約とさせていただきます。指輪、大切にします。」
「はい、時期を見てそちらにご挨拶に行きます。」
次の目的地が決まった。
ローマン王国に向かうことになった。
あれ? クリスにはもう一人姉が居たな。
変なフラグを立ててしまったかも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます