第52話 『古き英雄』物語は新たな歴史を刻む
その場の全員が凍りつく。
それは人間と魔人の大規模な戦争であり。
即ち、魔人王が封印される前と同じく毎日誰かが死んで苦しむ日々の再来を意味する言葉でもあった。
「忘れるな、お前は一度俺に負けている」
その一言にその場の全員が反応する。
――忘れてはいけない。何度も言うが魔人王は影に一度負けている。
――そう、魔人は一度人間に負けている。
――人間の上位個体と呼ばれた魔人が負けたのだ
だが、魔人王は軽く笑い返す。
「そうだ。俺は強敵と戦う事で強くなれる。だから、お前達が必要なのだ」
「なら最後に一つだけ俺からの忠告だ」
不敵に笑みを細める魔人王。
「オルメス国に手を出せば次こそお前に未来はない。覚えておけ。俺の逆鱗に触れると言うならその身をもって後悔する事になると!」
「ふっ。面白い。だがその威勢がいつまで続くかな? 用は済んだ。俺はこれで失礼させてもらう」
そういって立ち去ろうとする魔人王の背中を影が見送る。
「Old hero. battlefield see you again」
三歩ほど歩くと、空気に溶け込むようにして空間魔法を使い魔人王が消える。
ようやく、命の危険性がなくなり落ち着いて呼吸ができる、とでも言うように息を吐きだす一同。
「まさか、直接挨拶に来るとはな……」
改めて魔人王の最終的な目的が昔から何一つ変わっていない事実を確認した影は大きくため息を吐いた。
ここ一週間の出来事は物語で言う序章程度しかない事に気付かされた。
だからこそ、今後の事についてもっと真剣に考える必要があった。
「ま、まさか、魔人王が直接来るとは……」
「影様!? これは一体どうゆう事ですか!」
「いや、それより魔人が本格的に動き出すのはマズイわ、今の私達には――」
「それより、まずは状況の確認が最優先じゃ――」
――急に慌ただしくなる王城。
――そんな周りの雰囲気に流されず落ち着いている者はこう呟く。
「あの様子からして、向こうにもまだ戦争をする準備が必要そうだな。幸いこちらにも時間はまだある」
「影? どうしたの?」
「影様? 大丈夫ですか?」
「影様? お怪我はありませんか?」
「影? ボッーとして大丈夫?」
女王陛下、優莉、杏奈、優美の言葉を聞いた影は微笑んで言った。
「『古き英雄』の名に懸けていざという時は俺が必ず皆を護る。だから皆は皆に出来る事をそれぞれがすればいい」
頷く一同。
――この瞬間、皆の中にある事実が追加された。
――人類の滅亡危機に対して『魔人王』だけでなく『古き英雄』も復活したと。
――そして、『古き英雄』物語は新たな歴史を刻む。
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