第3話 優美の過去
そんな影を見た優美はどうしていいか分からなくなったのか困惑顔になる。恐らく優美の中でイメージしていた影はもっと過去の実績を盾に威張っていると思っていたが、実際に今日会ってみると過去の実績は一切気にせずに威張る所かとても穏やかな人だと思われているのだなと影は直感でそう感じた。影は過去の実績を一切盾にしない割には相手の持っている力に対しては素直に受け入れると言う変わった人と言うのが優美だけでなく初対面の人から持たれやすいイメージ像だった。
「影様は三年前の事を覚えてはおられますか?」
「いえ……少々事情がありまして」
「そうですか……。私にとっては生涯忘れる事が出来ない大切な思い出であり、私と影様を結ぶ唯一の物です」
「すみません。あの時はやる事が多く、流石に全部を覚えておくと言う事ができず……」
「いえ……。では、私の事を知ってもらう所からですね」
優美が立ち上がり影のすぐ隣でモゾモゾと動き出す。
「影様、私の話しを聞いては下さいませんか?」
「はい……って何をしているのですか!?」
影が下に向けていた顔を上げて優美を見ると、あろうことか優美が着ていた服を脱いでいる途中だった。影は慌てて優美から目を逸らす。更には、追い打ちをかけるように影の視界の隅に黒色の下着が上から落ちて来た。
「もう、これじゃどちらが上か下か分からないので影様は少し黙って私の話しを聞いてください!」
あまりのグダグダ感に優美が少し感情的になってしまった。
「……はい」
「後、私から目を逸らさないで私の身体を見てください!」
その言葉はとても破壊力があった。
影は男で優美は女である。スカートをまだ履いているとは言え、このままでは男と女の関係になってしまうのではないかと影が考える。流石に、会って間もない女性とそう言った関係になるには幾らなんでも早すぎる。それに相手は令嬢の一人。下手(へた)に手を出せば静かに引退生活を送っていた影の家や素顔、かつての立場を私的に使い意図的に自身の手で削除していた個人情報と言った物が世間に漏れる事になるかもしれない。それだけは絶対に嫌だった。もし、理性ではなく本能が勝っていたら影は間違いなく優美の美貌と言う名の欲望に負けていた気しかしなかった。それくらい影の中での優美は美人だった。
「でも……」
「お願いします」
「……はい」
影が覚悟を決める。
これで優美が更に影を誘って来たら本能に理性が負けるかもしれない……。
影が息を飲み込み、優美の身体を見るとハリがあり弾力がありそうな胸には小さな魔晶石の欠片がいくつか見えた。優美の言いたい事を何となく察した影の視線が少しばかり真剣な物になる。
赤色、青色、緑色と一見綺麗な欠片だがよく見ると優美の胸の皮膚と一体化していた。影が優美の顔を見ると優美が微笑む。影の手を握り優美は自分の胸に影の手を当てる。撫でるように触ると柔らかい女の子の胸の感触が手先に伝わるが小さな魔晶石の欠片の感触が一切なかった。
「私の身体は魔人の魔法によって身体の一部が魔力石化しています。この呪いは上級魔法でも解く事が出来ません。この魔法を解く事が出来るのは魔人の一部の者と……今は存在しないとまで言われている魔力石の制御をしっかりと行(おこな)えて古代魔法を扱える者だけですから」
黙る影。
「…………」
優美は黙る影の目を見て、話しを続ける。
「三年前、私は魔人に連れ去られ街を滅ぼす為の魔法発動補助の人間魔晶石にされる寸前でした。そんな時、他の戦場で戦っているはずの影様が私を魔人達から助けてくれました」
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