第8話 天才魔術師の正体
上空に見える巨大隕石予想落下地点であるB14地区に到着した影と優美は少しずつ地球に近づいてくる巨大隕石を見上げていた。自身で魔力生成が出来ない影は優美の魔力を貰い魔法で視力補正をして巨大隕石が地球に到着するまでの時間とプロテクトとして機能している魔法障壁の精度と強度、後は大きさと落下スピードや形……等、視覚情報を頼りに見極めていく。
「それにしても大きいなぁ~」
言葉が言い終わると同時に刺さるように痛い視線を感じた。
影が優美の顔を見ると少しばかり怒っているように見えた。
「何を呑気な事を言っているのですか?」
「だって大きいから……」
「大きいのは誰が見ても分かります。もう少し真剣にどう対処するかを考えて下さい!」
「……はい」
優美の正論に影は反論する事が出来なかった。別に影は常識がないわけではない。ただ影の常識と世間の常識が少しずれているだけである。だから隕石を見て全てを見極めた影にとってはこの程度の危機は条件さえあれば余裕で何とか出来るレベルである。
「なら今から対処した方がいいですか?」
「当たり前です! ってかいつからしようと思ったんですか!?」
「巨大隕石が地球の大気圏に突入するであろう20分後です」
影の言葉に優美がどんどん感情的になっていく。影は何をそんなに慌てているのだろうと思ったがここは優美の言う通り今すぐに対処を始める事にする。でないと、巨大隕石が来る前に優美の感情が爆発して影に降り注いできそうだった。
「バカも休み休みに言ってください!」
「すみません」
「では魔力をください」
優美がため息を吐く。
先程と同じように手を影に差し出す優美。影はその手を握り優美から直接魔力を貰う。更に周囲にある魔力も同時に使い魔法構築に入る。
影が頭の中で計算した魔法計算式を元に魔法陣が空中に出現する。それも一つではなく十個同時に。魔法陣の直径は五十センチ前後で色は白だった。ただ、普通の魔法陣とはどこか違った。影の魔法陣は優美が使う魔法陣とは違い、光り輝き独特な雰囲気を作っていた。優美はその光景に目を大きくして驚く。まるで信じられない物を見たかのように驚いていた。
「そんな……。ありえない……この魔法陣は……全て私達の使う魔法とは次元が違う……それに魔法展開から構築、発動までの時間が極端に短い」
優美の驚いた声に影は優美の顔を笑顔で見る。
「今ある十個の魔法陣は全て巨大隕石を破壊した後に起こるであろう二次被害対策です。それにこれらは全部上級魔法――光線銃です。そして、これが神話級の古代魔法です」
影の言葉が言い終わると同時に優美の中にある魔力が一気に三割近く影の体内に流れ込む。そして周囲にあった魔力も一気に消滅する。優美が倒れそうになる身体を必死の思いで支えていると上空に巨大な魔法陣が出現する。それは三年前、オルメス国の壊滅危機において突如上空に出現し魔人を一掃した古代魔法――拡散破壊光線銃。
上空に出現した魔法陣は直径十メートル前後の白い魔法陣。
光線銃――光を一点に集め狙った座標に光線として集めた光を打つ上級魔法で熟練者が使えば追尾性能を付加させることも可能。
拡散破壊光線銃――光線銃の進化版。破壊力が大幅に強化されただけでなく力を分散させることで数百の座標を同時に狙い打ちでき追尾性能も格段に上昇した神話級の魔法。
人々はこのような規格外の魔法を総称して神話級の魔法と呼んでいた。現に戦場でも神話級の魔法を使える者は限られておりその魔法を目の前で見た者は少なく幻の魔法として扱われていた。一般人の中では最早、都市伝説みたいな扱いでしかなかった。それだけ神話級の魔法は特別で扱える者が極端に少ないとされている。
「やはり、三年前、噂になった魔力を持たない天才魔術師の正体は『古き英雄』と世間から呼ばれた影様だったのですね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます