第21話 帰宅


「優莉、今から最悪を想定して部隊の再編成、そして優莉か美香も戦場に行けるように手配して。戦力負けしたら街が本当に潰れるかもしれない」


「かしこまりました。では私と杏奈が現地では陣頭指揮を執ります。ただレベル六、更には司令官と補佐官合わせて三名となると私と杏奈の二人でも分が悪そうですね」


 優莉が影から視線を外し、下を向きどうするべきかの判断に迷う。

 影がすぐに助け船を出そうとしたがここは止めておくことにする。今のオルメス国は影ではなくどちらかと言えば優莉を中心に動いている。それを強引に変えるのは間違っている気がした。何より影が育てた部下達の成長した姿を見て見たくなった。


「杏奈?」


 影の言葉に杏奈が返事をする。

「はい」


「こんな時、総隊長の補佐をするのが守護者の役目だよ。優莉一人に任せるんじゃなくて杏奈と美香の意見もしっかりと伝えて三人でこの状況を現状出来る最善の手で解決するんだ。大変だろうけど杏奈なら出来るよね?」


「勿論です! 私やります」

 杏奈の力強い返事を聞いて安心した影は後の事を優莉と杏奈、そして王宮にいる美香に任せる事にした。


「なら俺と優美はもう行くから頑張って」

 覚悟を決め、何処か平和ボケをしていた二人が力強い目をしたのを確認して影は笑顔で二人に手を振って隣にいる優美と一緒に歩き出す。


 優美は優莉、杏奈に一礼をして影と一緒に歩き出す。

「「ありがとうございました」」


 影と優美が歩き出すと後ろから声が聞こえた。

 影が振り返って笑顔で頷くと二人が一礼をして、空間魔法を使い何処かに移動した。


「影、やっぱり優しいね」

 優美が微笑みながら影の顔を見ながら言ってくる。

 その表情は何処か心の中にあった大きな不安が少し消えたかのように朝より柔らかい表情だった。


「どうしてそう思うの?」

「私のお願いを聞いてくれて、守護者の人達の成長を影が促していたからだよ」

「優美にはそう見えたの?」

「そうよ。それとも違うって否定するの?」


 優美が影を横目で見ると、影が僅かに微笑んでいた。

「ノーブルイヤン街を救うのは俺じゃない。だけどその補佐ならいくらでもするつもりだよ。まぁ、二人には言わなかったけど最悪の事態になれば俺も動くけどね」

「ふふっ。影の事なんとなくわかってきたかも」


 優美が嬉しそうな表情をして、影を横目で見てきた。

 ふと、二人の視線と視線が重なり合う。


「さっきから俺の事見てどうしたの?」


 影の質問に優美も顔を影に向け、笑顔で答える。

「ううん。何でもないよ。それより早く帰ろう」


 そう言って優美はスキップをしながら、一人先に影の家に帰ろうとする。

 影はそんな優美を走って追いかけた。


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