第27話 納得なんかできなくて、
最初は意味が分からなかった。
溺死した自分の死体を、目の前で見せつけられる。
「なんで……?」
死んだ『私』を眺めながら、≪私≫はポツリと呟いた。
意味が分からない。
なのに、不思議と分かる。
自分が死んだのだと。
見ている≪私≫は、『私(これ)』の未来そのものなのだと。
確証も何もない。
あるのは、ただの実感だった。
だからと言って、納得なんかできるわけがなかった。
それはそのまま『私』の疑問にもつながった。
――なんで?
ガムテープで口を塞がれて、
言葉もままならない中、確かに思ったのだ。
――なんで?
死んだことに対して『なんで』と言ったのか。
自分を殺した相手に投げかけた『なんで』だったのか。
分からない。
分からないけど、この『なんで』を解消するために。
≪私≫がいるのだ。
だから、≪私≫は、
カチッ。
聞き慣れた音なのに、
不快な音でもあった。
瞬間、≪私≫は風呂場にはいなくて、
代わりにリビングに立っていた。
そして、
「疲れた……」
数週間前に、戻った。
生きている『私』を眺めながら、
≪私≫は思った。
――なんで?
『なんで』の答えを知るために、
≪私≫は『私』の数週間を覗き見るのだと。
不思議と、そう思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます