第35話 「今って、一体いつだっけ?」
いつの間にか、自分の部屋が、別人の部屋にすり替わっていた。
その衝撃は自分の身に起こった者しか分からない。
その日常を半ば呆然と立ち尽くして、
見つめる中で、ふとカレンダーが目に入った。
それはありふれたものだった。
時に可愛らしいものだった。
あるいは味気ないものだった。
だが、
「……え?」
絶句した。
目の錯覚かと思ったが、錯覚ではなかった。
目が悪いのかと目を擦っても、変わらなかった。
至近距離でまじまじと見つめても、やはり何も変わらなかった。
「……っ」
引き攣った音が、喉から漏れ出た。
生活音が聞こえる。
振り返れば、家主がいる。
まさか、自分以外に誰かがいるなど思いもせずに、
生活をしている。
その姿を見て、何と言ったらいいのか分からない。
それほどの衝撃を受けながら、
何かを言いかけて、その後は、
カチッ。
何も覚えていなかった。
気付けば、家主の姿はなく、
目の前には、見慣れた顔があった。
僕がいた。私がいた。俺がいた。
三人共お互いに顔を見合わせながら、
半ば呆然としながらも、
誰かが言った。
「……カレンダーは?」
ハッと我に返って、カレンダーを見た。
見れなかった。
あった筈の場所に、カレンダーは残されていなかった。
それでも、三人共、同じ衝撃を持っていた。
だから、全く同じ質問を口にした。
「今って、一体いつだっけ?」
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