第24話 助けたいから、手に掛けた。

 かわいそうだなと、思った。

 ホットミルクを飲んだ瞬間、『僕』は糸が切れたように、

 その場に倒れ込んだ。


 過剰に睡眠薬をいれた、あのホットミルク。

 それを一気に飲み干した。


 倒れたまま、ぐったりと横たわる『僕』を、

 ≪僕≫はかわいそうだなと、思ってしまった。


 家族や友達に心配かけないために。

 無理をした結果、『僕』は普段ならしないミスを、やらかしてしまった。


 変な味がする。


 そう思えば、『僕』だったらすぐに吐き出してしまう。

 なのに、『僕』は飲み干した。


 限界だったから、

 無自覚に飲みたかったのかもしれない。

 

 『僕』はこの後、首を吊って死んでしまう。

 誰に殺されるのか、

 これまで何度も、『僕』の死を目の当たりにしてきたけど。

 犯人は知らない。

 犯人を見ようと思っても、

 『僕』の死体ばかりで、犯人の姿は拝めなかった。


 ただ、次第に≪僕≫は『僕』を、


 楽にしてあげたい。

 そう思うようになっていった。


 このままだと、名も顔も知らない誰かに殺されてしまう。

 数か月間、耐えて来たのに、

 それではあんまりだった。


 だったら、≪僕(じぶん)≫に殺された方が、

 まだ、救いがあるのではないか。


 そんな風に考えた。


 買った覚えはないけど、

 分厚くて太い縄が、見つかった。


 これなら、殺せる。

 楽に出来る。


 そう思って、≪僕≫は『僕』の首に、

 手を掛けた。

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