第14話 時計の中身を見てみれば、
「で、何話す?」
「何話すって、お前……」
「決めてなかったの?」
呆れた顔をした『俺』と、意外そうに目を丸くする『私』。
そんな二人の視線を受けながら、『僕』は肩をすくめた。
「二人の意見も聞かないといけないし」
『僕』だけが決めて、勝手に話を進めるのもどうかと思う。
そんな主張に、『俺』と『私』は頭を捻った。
「何からって言われてもな……」
「やっぱり順当に考えれば、部屋の謎についてじゃない?」
「まぁ、妥当だよな」
「じゃあ、それからでいい?」
意見は一致した。
「なら、メモ取るのは俺でいいか?」
「メモ?」
「整理するんだったら、書き出した方が早いだろ」
「……真面目ね」
「茶化すな」
言いながら、『俺』はメモ用紙とボールペンを手に取った。
「じゃあ、分かってる範囲で」
とはいえ、この部屋について知っていることなどそう多くない。
「まずは、部屋から出られない」
「窓も玄関も開かない」
「鍵はない」
「冷蔵庫の中は空っぽ」
「家主がいるかどうか」
「部屋の中なら行き来自由」
「水道は使える。蛇口捻れば水が出たし」
「カチカチうるさい」
そこまで言い切った後、そういえばと三人は顔を見合わせた。
「あの音、結局何だったんだ?」
「さぁ?」
「あれじゃない?」
『私』が指差す先に、他の二人も目を向けた。
ひび割れた時計が、床に転がって落ちていた。
「あの音、時計に似てるもの」
「そういえば、そうだな……」
「けど、あれはないよ」
「なんでだよ?」
「だって、あれ……」
言いながら、『僕』は時計に近付けた。
そうして、手に取って、
「電池、入っていないから」
ひび割れた時計の裏側に、電池を入れる場所がある。
そこは蓋を開けてみれば、空っぽだった。
「ホントだ……」
「空っぽね」
「さっき見たんだけど……」
家探しをしていた時、時計が気になった。
首吊り死体があったときから、『あれ』だけ変わらずそこにある。
だから、何かあるのかと思えば、
拍子抜けするような結果だった。
「だから、これはないと思うよ」
そもそも動くかどうかも怪しかった。
ひび割れているのもあって、壊れている可能性がずっと高い。
「あの音は保留でいいと思う」
「かもな」
「それならそれでもいいけど……」
「なら、次は――」
言いながら、ひび割れた時計を床に置いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます