第3話 お兄ちゃんの‥‥‥

俺と柚葉ゆずはは、アパートから歩いて五分程の所にあるサッカー場の広さがある公園に着くと、小学生やその親達数十人程集まっていた。

そんな中で柚葉と同学年の女の子二人が、柚葉に気付き俺達の方に駆け寄って来た。



「「ゆずちゃ〜ん、おはよう」」


「あっちゃん、まあちゃん、おはよう」



柚葉の友達が柚葉に笑顔で挨拶をすると、柚葉も笑顔で挨拶をする。

で、俺はこの柚葉の友達にいつも同じような事を言われる。



「あっ、ゆずちゃんの旦那・・さん、おはようございます」



と。で、いつも俺はそのセリフで黙ったまま頭を抱えて、その場に座り込む。そしていつも柚葉に



「ゆ〜ず〜は〜、お前俺の事友達の間でなんて言っているんだよ〜」


「えっ?えっ〜とねぇ〜、柚葉の旦那様♡」



俺はこの言葉で更にいつも頭を抱えてしまいますよ。

だからラジオ体操には余りいきたくなかったんですがね。


そんな頭を抱えて座る俺の視界にベンチに座る女性二人の姿が目に入った。

一人の女性は大人びた、涼しげなスカイブルーのワンピースを着ていて、歳は俺と同じ三十ぐらいかそれ以上に見える。髪は肩まであるが、表情が何か疲れているようにも見えるため、髪質もなんだか悪く見える。

もう一人は、夏用のセーラー服を着ている。高校生ぐらいだろうか?髪も綺麗な黒髪のストレートだ。パアッと見た目が美少女に見えるが、なんだか隣の女性と同じで表情が暗く見える。

そんな女性が座るベンチの両横には大きなショルダーバッグと旅行用なのか、大きな旅行カバンが置いてある。



『こんな朝早くに公園のベンチでなにしているんだ?カバンとバッグ?どこかに旅行でもいくのか?』



俺がそう思いながら、その女性達を見ていると柚葉が



「お兄ちゃん、ラジオ体操はじまるよ」


「あ、ああわかった」



俺が柚葉の方を見ると同時にラジオ体操がラジオから流れた。

周りがラジオ体操をしだすと、ベンチに腰掛けていた女性二人は、ベンチから立ち上がり、荷物を持ち何処かへ行ってしまった。

俺が再度、ベンチの方を振り向いた時にはもう二人の姿はなかった。



『いない‥な。‥‥しかし何処かで‥』



俺は何かわからないが、俺の脳裏にあの二人の女性に何処かであったような、そう思いながら考えていると、背後から俺に飛びついて来た柚葉に俺はコケそうになる。



「お兄ちゃん♡」


「おっととと。柚葉危ないって」


「えへへ、ゴメンね♡」


「ふう〜、まったく」


「ラジオ体操も終わったし、お家に戻ろうお兄ちゃん♡」


「ああ」



柚葉は俺の手を取ると、俺は少し恥ずかしくなるが、まあ、柚葉だしな、と思いながら柚鈴と手を繋いで俺と柚葉はアパートへと戻った。



◇◇◇



丁度その頃、柚葉の両親のかける先輩と明菜あきなさんは朝食を取りながら



「そう言えば今日だったけ?由奈さんがウチに来るのは」


「ええ、今日の朝の8時ぐらいには来る事になっているわ。しかし由奈先輩に会うの十五、六年ぶりだわ。確か由奈先輩に最後に会ったのは由奈先輩の子供が生まれた日以来だから」



そう懐かしそうに話す明菜さんに、まだ眠たいのか、あくびをしながら朝食を取る翔先輩。



「‥‥‥俺は由奈さんに会うのは高校の卒業式以来だよ」


「あなたは‥そうね。あっ、そうだわ。私、由奈先輩からあなたの高校の時の事聞いた事あるわよ〜(ちょっと嫉妬)」


「ギクッ!な、なにを‥‥‥(焦る)」


「あなたが高2の時に由奈先輩に告白してフラれているって事(またちょっと嫉妬)」


「えっ!あーあれは若気のいたりと言うかなんと言うかー(さらに焦る)」


「ふう〜ん、で、今は?」


「も、もちろんお前だけだ!明菜」


「本当に?」


「本当に!それに今は柚葉もいるしな。俺は今一番幸せなんだよ」



明菜さんは少し疑うような目で翔先輩を見ますが、翔先輩の慌て振りに、クスッと笑みを浮かべると、翔先輩の横に座り翔先輩にもたれると、



「///‥‥‥私も♡」



明菜さんはそう言うと、翔先輩は明菜さんの肩を持つと明菜さんを自分に引き寄せ、キスをしようと。明菜さんも自然と翔先輩に身を任せてキスをしようと‥‥‥



「ガチャ!、お母さんただいま!、あれ?」



柚葉のいきなりのご帰還に、翔先輩と明菜さんはパアッとお互いの体が離れたが、柚葉は



「もお〜、朝っぱらからイチャつかないでよ〜」


「なあ///」「えっ///」


「お父さんとお母さんがラブラブなら、私もお兄ちゃんとイチャついてこーよお」


「あっ!こら柚葉!」


「なんでお父さんとめるの?私、お兄ちゃんの将来の奥さんなんだけど」


「なあ、なあ、なあ!俺は認めんぞおー!」


「別にいいじゃあーん。お母さんは認めているし」


「はあ?本当か明菜!」


「えっ?ええ。柚葉の選んだ相手ならね。私はフミちゃん辺りまでは許容範囲よ♡」


「なあ、なあ、なあ!お、俺は認めんぞおー!」



なんて毎度の事を翔先輩は、柚葉と明菜さんに言ってますよ。その言葉はまるで、断末魔?のような叫びにも似た声で叫びます。

で、柚葉のお相手のフミちゃん事俺は、この翔先輩の叫び声を自分の部屋の玄関先から聞いてます。と言うか聞こえるんですよね。

まあ、俺にも娘がいたら、翔先輩と同じ立場なら俺も反対していましたけどね。






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