第25話 想像してたでしょう?

由奈の告白の答えを先に延ばしてもらった。

由奈はいつも通りの優しい笑顔で優しい言葉を俺にかけてくれる。

そんな由奈を俺は嫌いではない。寧ろ柚葉達が居なければ、直ぐにでも返事を返していただろう。

けど‥‥‥柚葉が‥二人の柚葉は俺のことを好きだと言った。気持ちは変わらないと言った。

俺はそんな二人の柚葉に、必ず答えを出さなければいけないと、そう責任を感じている。

いや、責任じゃない。あの二人の柚葉も、由奈と同じかそれ以上に大切な存在だから。


俺がそう考え込んでいると、由奈が



「ねえ、フミ君。返事を待つのはいいけど、どれだけ待つのかな?」


「えっ?う〜ん、そうですね〜、翔先輩の所の柚葉が高校を卒業するころ‥ですか」


「そうか〜、だったら私、その頃には41のおばさんになっているけど、フミ君はそんな私を選んでくれるの?」


「えっ?あー!忘れてたあー!年齢の事まで考えてなかったあ!‥‥‥だ、大丈夫です。柚葉と対等に由奈さんも考えますので(ここで俺は由奈さんの41の姿を想像)」


「こら!フミ君!何が、も、よ何が!それにフミ君、私の41歳の姿を想像していたでしょう!」


「えっ!し、してないです。してませんでしゅう、あっ!」


「ヤッパリ、フミ君は何か誤魔化そうとする時は、語尾に「しゅう」てのが入るから直ぐにわかるのよ」


「す、すみません。想像してました‥」


「うむ、よろしい」



由奈は少しご機嫌斜めな風に言うと、俺の反省した姿を見て、クスッと笑い、



「フミ君、買い物付き合ってくれるんでしょう?」


「あっ!そうでした!じゃあ今から行きますか。えっと‥‥‥由奈姫様」



俺が冗談交じりに言い由奈に右手を出すと、由奈もそれに乗り俺の手を取り「うむ、よれしい。クスッ」と笑顔を俺に向けた。

そして俺達は買い物に出かけた。




◇◇◇




その頃、大きい柚葉こと松塚 柚葉は、二週間後に迫った学園祭の準備をしていた。

柚葉は、このクラスの出し物の喫茶店のウエイトレスの衣装合わせをしている最中‥‥‥

のだが‥‥‥



「ね、ねえ‥‥‥千明さん‥」


「うん?なに、ゆずっち、と、動かないでね」


「これって、本当にウエイトレスの衣装?」


「ウエイトレスよ!ウエイトレスの衣装!」


「そ、そうなの‥かな‥」


「そうよ!だってメイド喫茶なんて学校から許可降りないからね『なあ〜んて、この衣装はメイド服だよお〜』」



そう!柚葉の着ている服は、紛れも無くメイド服。ピンクと白を強調させた、スカートや襟、腕の所にフリフリが付いた少しゴスロリかかった、ちょっと大人し目のメイド服。



「千明〜///これ、胸が強調させすぎじゃないの〜///」


「う〜ん?そんな事ないわよ。て、言うか、沙也加の胸が大きすぎるんじゃないの(ちょっと皮肉)」


「も〜う!胸の事言わないでよ〜」



そう言い合っているのは、この衣装のデザイン担当の、欠 千明。で、その衣装を着ているのが、大平 沙也加。



「けどなんで私までウエイトレスするの?」


「えっ?だって柚葉、綺麗だしスタイルも文句なしだし」



千明と一緒に、柚葉の衣装を合わせている、木野きのりん。この木野 りんは、柚葉と高一の時から同じクラスで、柚葉の数少ない友達の一人。身長は150と小柄だが、少しぽっちゃりとしていてみた感じが幼く見える。中学生でも通るのではと思える程。しかも可愛いく、髪が肩まであるストレートに、先端だ癖毛だろうか少しカールしている。



「柚葉にこの衣装は似合っていると思うんだけどなあ〜、て、柚葉、なんでも似合いそうだけどね」


「も〜う///りんごったら〜」



因みにこの「りんご」とは、木野 りんのあだ名である。顔のほっぺがまるでりんごのようだからと柚葉が付けた。



「そう言えば、柚葉て最近よく笑うようになったよね」


「えっ?そうかなぁ」


「そうだよ。以前は笑っても、なんか不自然な笑い方だったから」


「そう?そうかな〜。やっぱりお兄さんのおかげ‥」


「えっ?誰のおかげだって?」


「えっ!う、うん!なんでもないわよ」


「うん?‥‥‥ねえ〜、柚葉〜」


「な、なによりんご(焦)」


「な〜にか、隠してな〜い?」


「えっ!な、何もないわよ(焦っ)」


「りんごちゃ〜ん!ちょいいいかなあ〜!」


「あっ、はあ〜い!」



木野は千明に呼ばれて、千明と一緒に場所をはなれる。



『そんなに最近、私、笑うようになったのかなぁ〜』



柚葉が心の中で呟くと、隣で同じ衣装合わせをしていた、大平 沙也加が、



「りんごちゃんの言う通りよ。松塚さん、最近よく笑うようになったもの。だからかな?綺麗に見えるのは」


「ちょ///ちょっと大平さん、私綺麗じゃないですよ〜」


「え〜、だって男子の皆、あなたのそのウエイトレスの衣装姿に惚れ惚れしているみたいよ」


「///そ、そんな事ないですよ(照れ)///そ、それよりも、大平さんのがスタイルが良くて、美人だし、なにより男子から人気があるし」



柚葉と沙也加の美少女二人が褒めあっていると、そんな二人を見ていた男子は



「俺、このクラスでよかった!」

「同感!」

「俺、大平派!」

「俺は松塚派だな!」



と、そのような事を言ってます。

その頃、千明と木野はなにか話し合ってます。



「これとこれの材料が切れそうなのよ。先生に車出してもらって買い出しにいってもらえる?りんご」


「いいですよ。じゃあ先生のとこに行ってきますね」


「お願いねー」



木野 りんは他の生徒三人とで先生に車をだしてもらい買い出しに行った。






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